九里宇ユミオ

いまはむかし。 あるところに、私がいました。 名を、九里宇ユミオといいました。 ここに書かれたことは真実に似せたフィクションや論考で、実際の人物や会話、類似する業種、取引と一切関係がありません。 ゆえに私自身も、誰かの作った妄想です。 純文学系の公募を中心に作品投稿をしています

九里宇ユミオ

いまはむかし。 あるところに、私がいました。 名を、九里宇ユミオといいました。 ここに書かれたことは真実に似せたフィクションや論考で、実際の人物や会話、類似する業種、取引と一切関係がありません。 ゆえに私自身も、誰かの作った妄想です。 純文学系の公募を中心に作品投稿をしています

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ドーピング犬

ドーピング犬九里宇ユミオ     私は別れた恋人の朝日マイのことを、幼馴染で腐れ縁の水坂リエに、環状八号線添いにある静かなファミレスの片隅で話していました。 店内は穏やかな雰囲気で、まわりの人々は私たちの存在に気づくことなく過ごしていました。私は別れた後の複雑な気持ちをリエに打ち明け、その中で自分の心情を整理しようとしていました。 しかし、話が進む最中、驚くべき出来事が待っていました。別れたばかりの朝日マイが、私たちの存在に気づくと怒りに満ちた目を私たちにひと目だけ

¥100〜
割引あり
    • じゃ、このへんで

      じゃ、このへんで九里宇ユミオ  白亜のチャペルのホールは、男女の談笑が反響して複雑なざわめきに包まれている。 「りんごを2人で分ける時ってどうする?」  その日も私は吟味されていた。  騒がしい中でも目の前の彼女の声だけは聞こえるのは、きっとカクテルパーティー効果というやつだ。 「えっ、ナイフで…」 「いや、ここにりんごがあるとして」  私は彼女の口元の微笑みと、どこか計算高い視線を感じた。私のスーツや身なりなどが一瞬でスキャンされたようだった。  しばらく考えてから答える

      • ポケゴから君の街まで(感想文、ネタバレなし)

        市街地ギャオさん(以降、ギャオさん)の「ポケゴから君の街まで」を読みました。 あまりこのようなエッセイ? のようなものは読んだことがないのですが、ギャオさんのメメントラブドールの影響で、同じ主人公が経験した別の体験のような感覚で読みました。 この背景にはやはり文体があるのではないかと思います。 ギャオさん本人(ではないかもしれないけど)の、喋っていそうな自由な言葉使いや、括弧書きは、愛嬌のある女性とお話している時のような感覚になります。 それはどこだか人懐っこさがあり、同時に

        • 一見さん

           グラスの氷が溶け始めている。  京都、四条烏丸の裏通りにある地下の「BAR FLAT」で、私はサツキを待っていた。  バーはカウンター席が10席程度。席の背中にはすぐ壁があり、こじんまりとしている。しかし、4人の外国人観光客が大騒ぎしているため、満員に感じる。きっといつもなら程よい広さで居心地も良いのだろう。  こだわりのありそうなスピーカーからはAC/DCの激しいギターロックが流れているが、今ではもはやクラシックなので目新しさは感じない。その曲調とタバコの煙が充満する店内

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        ドーピング犬

        ¥100〜

        マガジン

        • 君見るゆえに物語あり
          1本

        記事

          だいふく

          だいふく 東京に出てきてから6年の年月が流れた。夕暮れの古びた駄菓子屋で、私はレジ台の上に置かれたスルメイカのパッケージとビール缶を手に取った。仕事中にも関わらず、軽くビールを飲み始める。 この店は古くからこの地にあり、昔ながらの佇まいを残した木造二階建ての建物だ。入り口のガラス引き戸の脇には、いつの間にか古びたガチャガチャが狛犬のように佇んでいた。スライドレールを渡ると、引き戸は日が沈むまで開け放たれている。 駄菓子を買いに来る子供たちにとって、この店は大人なショッピング

          赤ちゃんだってできる

          一、ニ、三、四、五、六、六、六、、、六、 いま、何回目だったか。 私は両手にグッと握った鉄の棒を胸に引き付けていた。視界には白い蚊のようなものが飛んでいる。酸欠だ。呼吸は酷く荒かった。 頭の中で数字を数える。ただそれだけのことが私には出来なかった。 私は、胸にこの棒を引き付けた回数だけ数を数えるのだ。 棒の先は中央をロープで結ばれており、滑車を介して約八十キロ分の錘がぶらさがっている。 鉄の棒は私の掌に食いついて離さなかった。 実際には私が食らいついていたのだが、鉄の棒のほ

          赤ちゃんだってできる

          スクラップアンドビルド【感想】(ネタバレ有)

          スクラップアンドビルドを読了しましたので、読書中の感想との埋め合わせ兼、感想をまとめたいと思います。 この本を読書中、生きがいをなくしたケンタが友人の「使わない機能は衰える」という言葉にとらわれ、何につけてもこの哲学をもとに行動しているケンタの徹底ぶりに少しおもしろ感じていました。 そのケンタが主人公なのがスクラップアンドビルドです。 あらすじは割愛しますが彼は生きがいをなくし精神を衰えさせております。 (そしてこの原因は、一度信じた哲学を曲げない真面目さにあるのだろうと思い

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          同士少女よ、敵を撃て[感想](ネタバレなし)

          同士少女よ、敵を撃てを読みました。 4/13に読んだので1カ月ほど経ってからの感想になります。 読み終わった直後は読後感がしっかりしていて、美味しいごはんでお腹いっぱいになったような感覚でした。 以下、引用に読後直後の感想を再掲します 実はほかにもいろいろ感じるものがあったのですが、結構迎合して書いてしまっていますね。でも迎合したとはいえ以下3つにやはりまとまりますね。 アニメ化しそうなキャラクター設定に引き込まれた 日本人好みの少女たちの友情描写に荒い鼻息 ウクライ

          同士少女よ、敵を撃て[感想](ネタバレなし)