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【創作】たけし先輩との100日間#17
17日目「無関心なたけし」
ぼくは衛兵に断りを入れ、口を開いた。
「王様、すみません。ぼくもよく分かっていないのですが、“観測者”とは何なのでしょうか?」
そのとき、また間欠泉が噴射した。王は一瞥してから、静かに語り出した。
「観測者とは、我々クリエイターが生み出した物語を読む者たちじゃ。彼らは間欠泉の向かう先——『ウエノクニ』におる」
「ウエノクニ……?」
「本来、この国ではウエノクニに住む観測者とクリエイターは共存していた。ワシらは物語を生み、間欠泉を通じてウエノクニへと送り届ける。その代わりに、ウエノクニからの見返りとして、我々は食糧や資源を得ていたのじゃ」
王の言葉を聞きながら、ぼくは国の西側に広がる巨大な湖を思い浮かべた。時折噴き上がる間欠泉——あれはただの自然現象ではなく、物語をウエノクニに届けるためのものだったのだ。
まだ信じられないが感じる。ウエノクニのさらに上——いや、**この世界の外側にいる“何か”**を。
一方、たけし先輩は完全に気を抜いて鼻くそをほじっていた。それを見た衛兵が苦々しげに槍でつつくが、まったく刺さらない。
「じゃあ、たけし先輩も元々はクリエイターで、物語を作っていたということですか?」
あのだらしなく尻を出してこたつで寝そべっていたたけし先輩が、クリエイター……?
「たけしだけではない。この国の者たちは皆、元々クリエイターだったのじゃ」
王は静かにうなずいた。
「そして、我々は物語がこの世界に影響を及ぼさないように調整していた。だが、ウエノクニの者たちの機嫌を損ねれば、物語だけでなく、我々クリエイターそのものが淘汰されることもある。観測者は、それほどの力を持っておるのじゃ。ウエノクニがこの世界を不要だと判断すれば、我々の存在そのものが消えてしまう可能性もある……」
そう語る王の顔は痛々しい。
「あんまり覚えてねーけどよ」
そこで、たけし先輩が口を挟んだ。