『つきとつりをする少年』 第2話
こんばんは。みなさん、おげんきでしょうか?
ぼくはなんとかげんきでやっています。
おふねさんとわかれた今日は、
というか、こよいは、高いところからつりをしています。
それが、ほんとうに高いところからなんです。
まちのようすがキラキラと、ぜんぶみえるところからつりをしているんです。まるでおひるまより明るい!
そんな高いところから、おさかなさんがつれるなんてできないから、
「やめておきなさい」、
「あぶないからやめておきなさい」、
「そんな高いところからつれるおさかななんていないよ。」
「そもそも高いところから、水があるところまでたらせるつり糸ってあるの?」
とみんなからいわれていました。
でもおひるまみたいに明るいから、おさかなもつれるかもなあという、なんていうのでしょうかね。
『きぼう』だけをもって、いよいよやってきました。
おはなのさきっぽを、ようやくかしてくれたタワーさんはいいました。
『高いところからおさかなをつるのは、やっぱりむずかしいだろう。』
ちょっとおこったような、ちょっとふるえたこえでタワーさんは言ってくれました。
『じぶんが高いところにのぼれたからって、
のぼれていないおともだちを、そうやってばかにしちゃいけないんだ。』
『ぼくはだれもばかにしていないし、じぶんのきぼうだけをもってここにきたんです。
でもほんとうはすこしみみをとじました。』
ぼくはがんばっていいました。
『きみのつりざおの糸はたしかに川にはいってるけれど、
おさかなをつることは、できないとおもう。』
ぼくが『なぜ?』ともっとがんばっていおうとしたしゅんかんに、タワーさんはつづけて、
『川に糸が入っているだけですばらしいことだよ。
さかなをつろうなんてバカバカしいし、なんせおこがましいだろう。きみの、そのバカバカしいゆうきと、きぼうがこのまちを、よるなのにてらしているんじゃないのかね?
高いところよりももっとじめんにいたほうがよいのではないかね?』
『すこしかんがえたほうがいいよ、きみは。』
ぼくはちょっとわかりませんでしたが、タワーさんのいっていることがもしほんとうなら、
またもっともっとおはなの先をかりたいし、ギラギラしたまちをみおろしながらつってみたいとおもうんです!!
しかたがないのでおどうぐをしまって、
(けっこうつかれました。なにせ660メートルの糸をまきあげましたから)、
『ありがとうございました。もうぼくかえります。またきていいですか?』といいました。
タワーさんは、
『いいよ、君。いつでもきたまえ。とくに君とはあさやけをいっしょにみたいなあと、うまれてはじめておもったんだ。』
『ここからみるあさやけはずっと世界一なんだよ。君、またね。』