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夏の思い出

本当にただ文章を書きたいだけの自己満思い出語りです。笑
似た経験をした人はたくさんいるであろう、学生時代のありふれた話。

私は小中高の10年間、バレーボールをやっていた。
長くやっていた割にたいして上手くはなかったけど、思い出だけはたくさんある。

中学1年生のころの話。
近所の市立中学に入学し、女子バレー部に入部した。

中1の夏休み、合同練習で市内の中学校に行った。
練習終わり、ステージ横の体育倉庫で着替えながらおしゃべりしていた。
(とっくに帰る用意終わってるけど、はよ行かんでいいんかな?)

小学校のクラブチームでは下級生の帰り支度を急かす側だった。
私は練習前も帰りも、準備は早かった方だと思う。

なんとなく、いやな予感があった。
が、
(皆もおるしまぁいいか。)

汗もすっかり引いたころ、やっとこさ体育倉庫からぞろぞろと出ていく。
案の定、顧問は激怒。
なにか怒鳴ったかと思えば、いきなり走り出した。

ボールかごを抱えていた私は集団の後ろの方にいた。
私「え、なになに?なんて言ってた?」
同級生「わからん。なんか怒ってるっぽい」

まぁ、そりゃそうだろうな。
着替えるのに何分かかってるんだ。

部活動というのは往々にして
試合に勝った負けた、ミスをしたよりも
声が小さいとか手を抜いたとか、準備が遅いとか。
そういうことが顧問の逆鱗にふれるものだ。

(あーーー、走って帰るやつかーーー。)

先輩たちが顧問につづき、荷物を持ったまま走る。
1年生も慌ててボールや救急箱を持ち、それにつづく。

私はといえば。

さして背丈の変わらないボールかごを見つめる。
(ちょっと待て、救急箱とボールかごはわけが違うぞ。)
「しょうがないなぁ」
と、だれに言うでもなくつぶやき
ゆっくりボールかごを両手で担いでようやく走り出す。

先頭集団とみるみる距離ができ、ついに追いつくことを諦めた。
怒らせたことも、最後尾であることももう変えられない。

ここ車通ることあるんか?ってくらい小さな道の信号をしっかりと守りながら、「はー、いい天気やな~」なんて空を見上げる。

信号が青にかわってしまい、汗くさい自分の荷物とドデカいボールかごを持ち直しひとり呑気にジョギングに切り替えた。

私がべべで学校にたどり着いたとき、顧問はすでに職員室にこもっていた。
どうやらまだ怒っているらしい。

(涼んでていいなぁ)
ジョギングとはいえ、炎天下で荷物を持ちながら走ると滝のように汗をかく。

ボールかごも自分のかばんも雑に放り投げ、体育館下にある渡り廊下の階段にへたりこんだ。
コンクリートがほてった体をひやしていく。
(あっ、ひんやり。コンクリっていいかも。)

極限の空腹状態で食べるごはんがこの上なく美味いのと同じように、コンクリは私に幸福感をもたらしてくれた。

その後、顧問にこっぴどく叱られる最中も、かすかに漏れ出る職員室の冷気を積極的に浴びにいきながら、ささやかな幸せに満たされていた。

中学1年生、真夏の昼下がりのことである。