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『はーばーらいと』とコミューンと虐待

吉本ばななさんのも、一晩で一気読みしてしまいました。

年を重ねると、思春期のように「貪るように一気読みする」ことが減ってくるのですが、数カ月ぶりの「寝不足案件」。夜中の2時までキンドルが手放せませんでしたが、不思議と次の朝気持ちよく起床できました。

「信仰と自由、初恋と友情、訣別と回復。
淡々と歌うように生きるさまが誰かを救う、完全書き下ろし小説。」

ネタバレになるといけないのですが、とあるヒッピーコミューンに親が入信してしまった、女の子の受難について描いています。

異様な環境で魅力的ではつらつとした少女の心が削られていく描写が、日常的な営みと混在しているだけに、本当に恐ろしく胸に迫ります。

平凡な暮らしと地続きなのに逃れられない方が、物理的に閉じ込めらる以上に恐怖を掻き立てられました。

この本の主人公は女性なので性別が違いますが、ヒッピーコミューン出身者の元同僚がいます。

小説の内容は胸が苦しくなるような生々しい虐待描写もあるのですが、読後感のよい救いのある物語でした。

リアルな友人の幸せな近況と、主人公の明るい未来を重ねてしまい、読了した後はじんわり温かい気分になりました。

仮にEさんとする彼は、特殊な経歴なので、個人情報をぼかしますが、似て非なる職業……研究者だと学歴的に違うのかな……例えば仮に車のデザイナーみたいな職業ということで。

私はその大手企業の派遣の事務員だとして、ある日、たまに同僚として仲良くランチなどを複数人で食べたりしている彼から、「とある女の子の失恋相談にのってあげて」と友人を紹介されました。

彼女は彼と同じ職業、仮に工業デザイナーだとします。

なぜ私に白羽の矢がたったのかは謎ですが、上品で知的な彼のことは、友人として大好きなので快諾しました。(その時の同僚はほぼみんな大好きです)

その女の子もものすごくいい子でクールでかっこよく、工学系の国立大学大学院卒の才女でした。

で、雑談していた時に、同じ大学院の公開講座を受けている2人が難しい話をしているので、

「おーい、短大卒(私)を置いて行かないでくれー」

と不平をこぼしたら、彼が、

「いいこと教えてあげようかポっさん(私)。俺、中卒。なんなら中学もあんまりいっていない、小卒。ヒッピーコミューンみたいなとこにいたんでね」

と可愛い顔でとんでもないことを行ってのけました。

中卒がとんでもないわけではなく、その経歴で、大手企業の理系職の契約社員で、後に引き抜かれ別の大手の正社員になることが。

ビジネス雑誌に取材され、ネット記事でロクロを回している仕上がりになっていることが。

さらに、理知的で知識が豊富で、その上「学歴は低いけど頭が良い叩き上げ」にありがちなハングリーさも皆無の上品なお坊っちゃま風だってことがです。

後で聞いたら、お祖父様の家は旧家でもしそこで育てば本当にお坊っちゃまだったようですが、そこを離れた親がコミューンに入ってしまった、と。

その時は、彼の友人の女の子の失恋がメインテーマだったので、

「え? いしだ壱成さんパターン? その経歴でドヤらないのすごいね。わたしだったら『地獄のミサワ』くらい匂わせて異色の天才ムーブかますんだけど」

とか軽く流して、深掘りをしなかったので、どういった経緯でそこまでのスキルを積まれたのかはまだ未確認です(そのうち聞きたい)

外国語も堪能だったので、もしかしたら海外のコミューン?

映画みたいに、博士とかが内部で教育した?

てすみません。妄想です。

自頭がよく、親御さんも知的で、コミューンを出てから自分で勉強した。がいちばんありそう。

そんな彼は、僧や牧師のように上品で知的で静かな印象と、それでいて私がセミの抜け殻を一個拾ってきたら、翌朝人のデスクに大量のセミの抜け殻詰んだタワーをつくりやがるような無邪気さを内包しつつ、どこか合理的でないことを嫌う冷笑的な印象がありました。あと、「私がいいかげんなズルいことをしたら友人としてサクッと切られるんだろうな」というようなクールさも。

冷笑的とか勝手に言っていますが私より確実にいい人間ですし、もちろん、好きか嫌いかと言えば、好きですいい子です(万が一なにかの流れでご本人が読んだらバレバレなので書いときます!)

そして、今、お幸せなようです! 

そんな前提がありつつ、最近、ニュースを見てふと感じたことがありました。

こちらは、もう長らくお会いしていないまた別の、昔友人だった方の話ですが。今の彼については何も存じ上げない立場ではありますが。

ジャニーズの性加害を告発している昔の友達を見て、「あれ? この子、こんなにEさんに似てたっけ?」と思ったこと。

親しくさせていただいた時期は10年ほど違うのですが、よく見るとまったく顔立ちは似ていないのですが。

年齢以上に落ち着いているのに少年っぽい雰囲気、淡々としたいるのにシニカルな口調、表情や身振り手振りが似ていたのです。

もしかしたら、私個人の思い入れや思い込み、記憶違いを含んでいるかもしれませんが。

今のことは何も知らない古い知人にすぎない私の個人的な考えですが、大人たちの作った特殊な団体の異様なルールや求心力に飲まれずに、「普通の感覚」の軸を死守して逃れてきたサバイバーには、共通の怜悧さがあるのかもしてない、と思いました。

指導者や内部の人にも理想や才能やカリスマ性があり、熱狂的に支持する人もいる、ていう構造も同小説と似ている気がします。 

まあ、すべての人にとって悪でしかない組織、てそうそうなさそうなので、もし子供を虐待していたり教育の機会を損なっているならそれは許されないという認定でよいと思えますが。

コミューンの友人は虐待被害者ではないかもしれませんが、頭の良い彼に義務教育を受けさせないのはもったいなあ、と思いました。

ジャニーズについては、当時お話を伺い、

「合宿所、プレイボーイハウスかよ。ヒュー・ヘフナーも未成年は入居させてないぞ(多分)」

と、腹がたった記憶があります。

ptsdとかも取りざたにされたいるので、そのうちジャニーズサバイバーという言葉もできそうな気がします。

いまふと思い出したのですが、旧友と同僚、どちらもジャニーズやコミューンについて話した場所が神楽坂の『CANAL CAFE』だった、ていう共通点で、より記憶が寄ってきた可能性もあります。

10年の隔たりがあるはずなんですけどね……引きこもり体質の私の、友だちとお喋りする店の選択肢の少なさよ……。

上記の方たちは、独特の純粋さと凄みがある本当に魅力的な方々だったので、きっとパートナーやご家族も素敵な方で、お幸せなんだろうな、と勝手に思っています。

私が存じ上げているお二人に関しては多才なだけでなく、品の良さとシニカルさもバランスが絶妙で、国内外どこへいっても愛されるオーラがありました。

若い頃に内臓を損傷して、物理的にそれを補う機能が発達した私としては、大人によって損なわれたなにかを補うために伸びた才能だったら少し切ないな、と思ったりもしました。もちろんそれは勝手な感傷で、そもそも生まれ持った遺伝的才能の方が強そうです。

『はーばーらいと』は、新興宗教やヒッピーコミューンに近い集団にまだ心が柔らかいうちに関わってしまった天才たちの「凄み」の成分について、かわいらしくも切ない文章で分析してくれて、友人として彼らの「トリセツ」を手に入れた気分にもなりました。

お一方はそうそうお会いする機会はなさそうですが、同僚とは住んでいる地域も近く、今後も家族ぐるみで遊ぶこともありそうなので。

吉本ばなな作品らしい、自分自身の少し歪んだ部分を「愛嬌?」と許せるようになるかわいらしい描写満載の、素敵な青春小説でした。

※アカウントお引越しで移動してきた過去日記です

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