来年の春、私はここにいない
後輩の誕生日会の帰り、私はふと、あるアパートの一室に目をやった。その部屋には薄く白い明かりが灯っていた。
「もう、違う人が住んでるんだ。」
その部屋には2月までバイト先でお世話になっていた先輩が住んでいた。飲み会の帰り、大学に行く道中、何度か私はそのアパートの付近で先輩を見たことがあった。確かに先輩はそこに住んでいたのだ。
4年間彼女の大学生活と共にあったその部屋は、ものの数ヶ月で他の人の部屋になっていた。別に対して重大なことではない、当たり前なことなのだ。でも、私からするとすごく不思議に思えた。
何年間も同じ空間だったのに、数ヶ月で全く違う空間に切り替わる。家具も、匂いも、色も、明かりの温かみさえも変わる。人、1人で、人が変わることで、そこの空間はガラリと変わる。
違う人が住むのだから、全くわからない話ではない。頭では理解できているのだが、私は何故がそわっとしてしまう。
来年の春私は地元に帰って就職する。私が4年間いた部屋は例外なくまっさらに戻る。私の後輩がうちに来た時「私、さのゆさんの部屋に住みたいなぁ〜」と言っていた。本当にそうなれば、きっと私の部屋だったところはその子の部屋になるのだろう。新しい家具や小物で、私の知らない空間になるのだろう。私ではなくその後輩が住むのだから変わることは当たり前だ。
何事にも移り変わることはよくある。季節が移り変わるように、人の気持ちも移り変わるという。だから人が変わりなんかすれば、そこにあった空間はまったく違う世界になる。バイト先の店長が変わっただけでも、もちろん店の雰囲気は変わる。変わること自体理解はできる。だけど私は慣れるまでそわっとするのだ。
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