あなたにならば、ミイラにされてもいい、なんて。
目覚ましが鳴る15分前に自然と目が覚める。
両腕をあげて、カラダと伸ばすと怠惰な気持ちと眠気が払われる気がする。
「起きて、朝だよ。おはようだよ。」
と隣で眠っている彼に声をかけるが、
「まだ、あとちょっと……」とかわされてしまう。
毎朝、よくもまぁ学ばないものだ。
目覚ましの時間帯だと準備がカツカツになるからと、
起きたら一度声をかけてくれと言ってきたのはそっちなのに。実際に起きた試しはほとんどない。
そうして毎朝、
「なんで一緒に起こしてくれなかったの!?」
なんて焦りながらわたしに言ってくるくせに。
ただ、それもわたしにとっての日常。
「よし。」と気持ちに気合を入れて
ベットから身体を起こそうとすると、
腕を引っ張られ起き上がることを許されなかった。
普段とは違う彼の行いに、
日頃のルーティンを崩された気がして、
戸惑いと、
寝ぼけてでも甘えられている現状に、
まぁ、悪くないかも。なんて。
「どうしたのよ」と尋ねると、
「お布団冷たくなるじゃん…やだ。」……わがままな人。
「もう……」なんて口では言いつつ口角が上がってしまっている自分に呆れる。
ここまでくるともうなんでも良くなった。
意識がほんのりある彼のほおを撫でる。
ふふふ、とくすぐったそうに笑う顔はまるで5歳の男の子。無垢であどけない彼の頬に唇を寄せようとした瞬間。
「おい!起きろ!」とけたたましい目覚まし時計に邪魔された。
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こんな朝を過ごす世界線に生まれてきたかった。
『人肌が恋しくなる季節ってこういう意味でしょ』を過去に書いた。妄想の妄想による、妄想爆発ストーリー。今回もこういうタッチでものを表現したかった。
日常にふわっと舞い込む、非日常の動き。それはわたしたちを戸惑わせ、狂わせるときがある。ただ、「あなたなら、嫌じゃない。」そんなことを言える相手がほしいものです。