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【雑感】2024/8/31 J1-第29節 町田vs浦和

台風の影響で他会場では中止になった試合もありましたが、この試合は無事に開催されました。ただ、無事だったのは開催されたことだけであって、川崎戦の後にヘグモさんの契約解除、スコルジャさんの再就任、池田さんが暫定監督になる、という大嵐がピッチの中にも大きな影響を及ぼしていて、チーム全体での試合内容は全く無事なものでは無くなっていました。

浦和のスタメンはグスタフソンに代わって小泉が入り、渡邊が1列落ちてCHになるという形でした。保持に関して言えば、川崎戦の前半でも4-2-3-1の配置からグスタフソンがアンカー、安居が左IH、渡邊と大久保が右IHをシェアするという形だったので、安居がアンカー、渡邊、小泉、大久保がIHの位置をシェアするという流れにしたいということだったのだろうと思います。

また、明確に後任がいる状態での繋ぎの監督というのは、チームの構造を維持する、高めるというよりも、前任者が指揮をしている間にチャンスが回ってこなかったけどトレーニングは一生懸命やっている選手を起用して、精神面での発奮を促して腐った状態の選手を出来るだけ減らしてから次の監督へバトンタッチする役割だと思います。

なので、ヘグモさんが指揮している間はなかなか出番は無かったけど、クラブ公式のSNSでトレーニングの時に良いシュートを見せていたことが発信されていた小泉を起用するのも、そういう点では納得のいくものでした。ただ、小泉については渡邊、関根、大久保とプレーエリアというか、求められるタスクが似やすいものの、自分でスペースで運んだり相手の間に割り込んだりして相手を動かすプレーがその3人に比べて少ないことがヘグモさんからすると物足りなかったのかなと思います。


一方、町田のスタメンは夏のウィンドウの間に獲得した中山、杉岡、白崎がスタメンに入りました。なんだかんだで町田はCHにはたくさん動けるだけでなくボール扱いが上手な選手を取り揃えていて、仙頭が警告累積で出場停止になったところに白崎を使えるように補強出来たのはチームとして求める選手の特徴が明確だからなのだろうと思います。

各ポジションに求めるものが明確な分、どのポジションも似たタイプの選手が多いですが、その分チームとしては誰が入っても同じようなプレーをし続けられるという強みはあります。勿論、誰が入っても同じような弱みが出るリスクもありますが。


町田の「各ポジションに求めるものが明確」のは保持の時に特に現れていて、ビルドアップは2CB+2CHが担い、SBは出来るだけ外レーンの高い位置を取ってクロスを入れる、2トップ+2SHがそのクロスを待ち構えるというのがベースにあると思います。ビルドアップは基本的にダイレクト志向なので、外レーンの高い位置を目掛けてロングボールを入れて、そこでこぼれ球を拾えればそのままクロスを上げに行く、拾えなくても高い位置でスローインを取れればそこからロングスローでゴール前にボールを入れる、といったシンプルなもの。ロングスローについては、浦和のテックコーチと町田の担当者の間でやり合いがあってそちらはかなり盛り上がっていたようですね。


試合序盤から町田は浦和の4-4-2に対して2CB+2CHが3-1の形になって脇に出た選手がオープンにボールを持つと、そこからロングボールを入れて高い位置でのセットプレーの場面を作ることが多かったです。特に中山のところからのロングボールが多かったですね。

浦和は川崎戦では両SHがプレッシングの時に前を覗く体勢を作ることが多く、この試合でも町田が自陣のスローインからビルドアップへ移行した6'54~の場面では関根と大久保が前向きな矢印を出しています。右から左へボールが移っていくときに大久保が中山に対して左足のコースを切るように寄せたことで中山に右足でボールを出すことを強要し、上手く蹴れなかったボールを渡邊がカットして浦和のカウンターになりました。

ただ、町田が早々にロングボールを入れることで前に出ても背走させられるので関根も大久保もプレッシングに加勢する場面は少なかったように見えます。なので、町田の3-1の配置に対して小泉とリンセンがアンカー役の選手は消しつつも2人で4人を相手にすることになるので高い位置からボールを奪いに行くという局面は作りにくかったのかなと思います。

19'20~はボールが谷まで戻って一旦落ち着いたことや杉岡が中山の脇まで引いていたこともあって浦和のプレッシングが止まっていて、オープンな状態の中山から大畑の外側まで上がっていた望月まで対角のボールが飛び、そこからのクロスに藤尾が合わせた決定機まで行きました。

この時にSHの関根はボール対応のために外へ出た大畑の内側へカバーリングに入っていますが、渡邊が大畑の対応に加勢しようとポジションを離れて外側まで出て行ってしまっていて、それによってDFの前のスペースが空いてしまいました。この辺りは普段CHをやらない選手がそこに入ったことによる不具合というか、渡邊が頑張って走れる選手だからこそ、どう頑張ってもらうかを整理できていないことが見えてしまった場面だったかなと思います。


浦和のビルドアップを見て行くと、試合序盤は安居がアンカー、渡邊が左IH、小泉と大久保が右IHをシェアするという形で川崎戦でやっていたような形を踏襲しているようにも見えますが、右の小泉と大久保のところが川崎戦よりも詰まっていたような印象というか、右WG不在で右IHが2枚だぶついているような感じがありました。川崎戦では大久保と右IHをシェアする渡邊が前に出て行こうとする(大久保と入れ替わりで右WGのようになれる)ことで詰まることが少なかったと思いますが、小泉は大久保が絞ってきた時に自分のポジションをより手前にする傾向が強かったかなと思います。

一方で左サイドは関根、大畑、渡邊のローテーションはスムーズというかSB、IH、WGの構造を残したまま動けていたと思いますし、WGの位置に入る選手(主に関根と大畑)が奥を狙うアクションがあったこともあって右サイドと比べると詰まっている感じは無かったと思います。

12'05~の右サイドでのスローインから始まったビルドアップでは小泉が一旦はたいてボールが最後尾まで行ったという経緯もあったとは言え、小泉が安居の脇あたりまで下りてきていて、大久保も内に絞ってきている状態でした。これによって右サイドのローテーションが発動する形になり、石原が少し前に出て井上からの距離が遠くなってバランスが崩れています。この時の左サイドは渡邉がSBの位置に下りてきていますが、それに合わせて大畑が前に出て、関根がIHの位置へ絞ってきていて上手くローテーション出来ています。

20'20~のゴールキックからのビルドアップでは左サイドが狭くなったので右へリサイクルしたいところで石原のポジションが内側になっていたため、ホイブラーテンから井上に渡してもその先が詰まる未来が想像できてしまうのでもう一度左から進もうとして、そこでやはり詰まって後ろへボールを下げて、という流れでボールを失っています。

こうして自分たちでバランスを崩していることでなかなかチームとしてボールが前進できなくなってくると、20分あたりから安居がCBの間に下りてくることが増えていきました。安居が下りて3枚になるなら3-4-3のような形になってそれぞれのバランスを保つことが出来れば良かったのですが、32'05~のビルドアップでは石原がオープンな状態の井上の脇にいる上で安居も下りてきており、手前が人数過多になった結果、相手が待ち構えるブロックの内側に強引にボールを差し込んでワンタッチのコンビネーションに賭けるようなプレーになっています。

バランス良くポジションが取れている左側は、26'30~のように大畑がSBの位置で相手に寄せられても中方向へドリブルで運ぶことで相手のプレッシングを諦めさせることが出来ていますが、右側は石原が相手の脇や内側でポジションを取ることがほとんどなので今季見せていたような中方向へドリブルが出来る状況でボールを受けられていませんでした。ポジショニングは周りの選手と影響を与え合った結果のものなので原因を特定の誰かに押し付けることは出来ませんが、それぞれが少しずつバランスを崩す振る舞いをした結果、今季積み上げてきたものを発揮できない状態を作ってしまったのかなと思います。


「安居が下りて3枚になるなら」というところで上手くいったのは34'10~のビルドアップで、この場面は渡邊と小泉がCHの位置に並んで関根と大久保がシャドーの位置に入る3-4-3の形になっていました。リンセンが裏へ走ったところへのロングボールの跳ね返りを第2陣でCH役の小泉が追いかけて拾ったところから町田陣内でのプレーに移行しています。

一旦ボールが下がった後も大畑が中方向へドリブルして安居がフリーになれたことでボール保持が継続できており、その後再び左サイドへボールが回った時には大畑が今度は荒木と白崎の間に割り込むように運ぼうとしたところでFKを獲得しました。

勿論、きちんとした構造、配置からビルドアップをしていたらロングボールを入れずに綺麗な前進を試みることが出来たと思いますが、ロングボールを相手の背後に入れて十分に跳ね返せない状態にしてから前にも後ろにも関われる状態の選手がボールを取りに行くことが出来たという点では良かったと思います。

また、この一連の場面で貢献した大畑は鳥栖にいたころからビルドアップでのポジショニングや体の強さに定評がありましたが、この数か月でポジションを取ったところからドリブルをすることやその時のコースの選択の部分で成長しているので、再びスコルジャさんが指揮することになっても自信をもって左SBの第1選択肢になれるのではないかと思います。

そして、このFKで準備したものが見事にはまってゴールを奪うことが出来ました。周りが空いて全員を引き連れて関根を空けるというのはリカルド体制の時にコーナーキックで全員ニアに動いてファーの関根を空けてゴールを決めた小粒隊長作戦を思い出させるものでした。


町田は39'30あたりで荒木と藤尾の位置を入れ替えています。非保持で大畑にドリブルをされる場面が多かったのでそこのケアをすることか、あるいは保持で思いのほか望月のところで優位な状況を作れなかったので藤尾を最初からサイドに置いて大畑、関根というサイズのない浦和の左サイドに対して優位な状況を作りやすくしたかったのかなと想像します。さらにハーフタイムで望月に代えて鈴木を投入していたので、町田のチャンスが左偏重になっていたことが気になっていたのかもしれません。

右SBがクロスの精度の高い鈴木になったこともあってか後半は中央にオセフン、荒木、藤尾が集結し、開始早々からそこへめがけてロングボールを入れています。そこでボールを失ってもその3人が浦和の2CB+安居を押さえることで浦和のビルドアップを詰まらせることに成功しています。セットされた守備の時にも荒木が安居を捕まえて、藤尾とオセフンが2枚で並ぶ、右サイドは鈴木が前向きに矢印を出すというタスクになっていて、安居が手前に下りるならどんどんこっちは前に出ちゃうよ?という姿勢を突き付けてきたように見えました。

そして、この流れのまま町田が早い時間で同点に追いつくと試合の形勢はそのまま町田に傾いていきました。町田が加勢してきたというだけでなく、前半から続いていた浦和の保持のバランスの悪さから自分たちの保持の時間を減らしてしまい、町田がより前がかりになれる状況を作ってしまったともいえると思います。

町田のロングボールを起点に行ったり来たりになりそうになった53'45~は一旦浦和の最後尾でボールを落ち着かせてビルドアップに移行しますが、ここでも大久保が中央へ移動し、小泉が手前に下がり、安居がCBの間に落ちて、石原がかなり前に出る、といった具合にバランスが崩れてしまったことで自分たちのプレーエリアがどんどん狭くなっていってボールを失っています。そして、この流れから左サイドを荒木が抜け出してオセフンのヘディングさえ合えばという決定機になっています。


さらに、57'40~のゴールキックは井上が西川にボールを渡してスタートするものの、井上とホイブラーテンに意識を向ける藤尾とオセフンの後ろ髪を引くようなポジションに誰も入っておらず、西川のキックが相手に渡り、オセフンが抜け出して後は藤尾が触るだけという決定機を作っています。自分たちでセットした状態から始められるプレーなのに配置のバランスが悪いことでボールを失って決定機を作られるというのはなかなか厳しいものがあります。

63分に小泉と大久保を下げて長沼と二田を投入し、2列目が左から長沼、関根、二田という並びになりました。そして、町田の方もほぼ同じタイミングでオセフンに変えてミッチェルデュークを投入しています。浦和の方はバランスの悪い右側のセットを代えて状況を好転させたい、町田の方は改めてフレッシュな選手を入れてパワーを上げていきたい、といった思惑だったのかなと思います。

この後も町田が高い位置でのプレーを継続して浦和がなかなかボールを持てない中で、67'38にようやくクロスを西川がキャッチしたものの、すぐにボールを前線に送って自ら試合を慌ただしくする方向へ促してしまったり、68'15に昌子からのサイドチェンジのボールが二田に渡ってボールを取れたものの、その場に停滞することで陣地回復出来ないままボールを失ってしまったりと、苦しい時間を自分たちの判断で好転させることが出来なかったのもこの試合の残念だったポイントです。


76分に関根とリンセンを下げて松尾とチアゴを入れて、2列目の並びは左から松尾、二田、長沼に変わりました。そして、78分にロングボールがバウンドしたところを二田がキープして久しぶりに町田陣内で浦和がボールを持てたところで流れが落ち着きました。相手に向かってプレーできる松尾が入ったことで82'30~の大畑からのクロス、さらに84'10~には町田のロングスローで流れたボールを松尾が拾ってロングカウンターと前に出て行ける流れが作れたところでチアゴの勝ち越しゴールが生まれました。

そして、92'40~は町田のコーナーキックのこぼれ球から再び松尾のロングカウンターによって前に出てそのままゴールネットを揺らすことに成功して、こんな展開なのに勝てちゃうなんてめっちゃラッキーじゃん!という流れでした。しかし、このゴールは二田がボールとは関係のない場所で下が下田を倒したということでファウルになりゴールが認められず、それによって止まった時間がAT7分にさらに追加され、98分のラストプレーで町田の同点ゴールが生まれるという浦和からすると地獄のような事態になってしまいました。


自分たちからバランスを崩して試合を難しくしたのに相手が決定機を何度も外して、一方で自分たちは少ないチャンスをゴールに繋げたという今季全くと言っていいほどなかった試合の内容に対する上振れを引きかけたのに、結局は自分たちで試合を締め損ねたというのは返す返すも残念です。

チアゴの勝ち越しゴールの段階で大畑が足を攣った時に交代で入れるのであればグスタフソンではなく佐藤になることは理解できますし、佐藤を入れるならラスト数分を5バックでこもって耐えようという判断も、試合の冒頭から自分たちの配置バランスを保ってプレーできていない流れからすると仕方ないと思います。

ただ、試合の中で関根、大畑は顕著でしたが個人レベルでは今季積み上げてきたものが表現できている一方で、チームとしてのバランスが試合の冒頭から整っていなかったのは何故なのか、鹿島戦、川崎戦と少しずつ4-2-3-1の初期配置から保持も非保持も配置バランスが整ってきた中でそれを失ってしまったのは何故なのか、そこの原因にはきちんと目を向けないといけないことだと思います。


冒頭でも書いたように暫定監督はチームとしてのチームの構造を維持する、高めるという役割を担うことは自分の色を出すことが求められないという立場なので難しいと思いますし、そういう状態になればチームとして目指すものへの継続性が一旦途切れてしまうリスクは高いです。

ヘグモさんを切るにあたって、後任と契約できる目途が立ったとはいえ、契約出来たからその時点でヘグモさんたちとさようならをしてしまって良かったのか、それをしないといけないくらいチームがひどい状態だったのか、町田戦の後は代表ウィークで一旦時間が空くので仕切り直しをするタイミングがここだったのか、そういった判断やマネジメントの部分についてはこの1週間でフットボール本部に対して強い不信感を覚えました。

スコルジャさんたちが来日しチームに合流できるタイミングがいつになるのか分かりませんが、出来るだけ早く合流してくれることを願います。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。


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