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【雑感】2024/10/19 J1-第34節 東京Vvs浦和

スコルジャさんの来日から1週間に1試合のペースで4試合をこなし、そこから今節は2週間空いての試合でしたが、果たしてスコルジャさんが来る前とこの5試合で何が良くなったのかを探すのが難しいなと言うのが正直なところです。結果が出ていないことでプレーがネガティブなものか勢い任せのものかのどちらかに振れてしまっているような見え方は正に残留争いの渦中にいるチームのそれであって、2011年や2019年もこんな感じでしたかね。


この試合の前に怪我を抱えていた選手のうち、9/28の神戸戦で負傷して全治4週間と言われたホイブラーテンはスタメン復帰、リンセンとグスタフソンは恐らく怪我の回復具合からして出場時間に制限があったのだろうと思いますがベンチに入りました。

ただ、この試合のスタメンのポイントは右SHに渡邊、トップ下に小泉が入ったことだと思います。今のチームの中で攻守ともにバランス良くプレーできる可能性が高い大久保がスタメンから外れたのは意外でしたし、渡邊のゴールで一度取りやめしたものの結局前半のうちに小泉に代えて大久保を入れるくらいに、特に非保持で右サイドは破綻寸前の状態だったのでどのようなスカウティングをしてこのスタメンにしたのかは気になるところです。

木曜の定例会見では「この2週間でたくさんの修正をしてきましたが、メインはビルドアップでした」とスコルジャさんは話していましたが、結局この試合ではチームとして何かを改善出来たようには見えませんでした。この試合でも原口、安居の2CHが積極的にCBからボールをピックアップするように列落ちしていたので、1つ言えそうなことはスコルジャさんたちが修正したポイントはCHのポジショニングやアクションではなさそうだということです。

浦和の保持vsヴェルディの非保持の大枠を先に整理しておくと、浦和は石原大畑の両SBが低めの位置からスタートするのに対してヴェルディはWBをそこまで押し出してくるというC大阪と同じようなスタンスで、ヴェルディの3トップは基本的には中央を締めたところからスタートするものの、原口か安居が下りて3枚になると噛み合わせが良くなるのでそこを一気に捕まえに行く、そして下りなかった方のCHも森田が出て行って捕まえに行くといった具合だったように見えました。また、浦和の前線4枚は外に張る選手は置かずに中央3レーンに集結した状態がベースだったと思います。

CHの列落ちが続いたということは、恐らくこの試合で狙っていたことはヴェルディの前向きなプレッシングを誘発してその背後にボールを入れるというような展開だったのではないかと思います。4’10~のビルドアップでは原口、安居がどちらもヴェルディの3トップより手前に下りて最後尾に4枚いる状態から、石原に向かって翁長が矢印を出そうとしたタイミングで翁長の背後に渡邊が走り、そこへ向けて井上からボールを出しています。直前に安居がボールを持ったタイミングで関根が宮原の背後を狙うようなアクションを見せていたので、前線4枚の誰かがヴェルディのWBが縦スライドした背後を狙うようになっていたのかなと想像します。形は違いましたが12'20、14'25には松尾が宮原の背後を狙ったり、14'50には流れの中で渡邊とポジションが入れ替わっていた石原が翁長の背後を狙ったりしていたので、チームとして狙っていた場所はそこだったような気がします。

そして、原口や安居が下りるということは中央でボールを受けられる選手がいなくなるので、そこには器用な小泉が下りてボールを受けてターンすることで前向きな選手が作れるかもしれない、渡邊は恐らく今のチームで一番外したくない選手であり大久保より背後に抜けるアクションを見込めるのでSHに起用した、と考えればスタメンの人選も理解できます。さらに言えば、CFもチアゴやリンセンではなく松尾だったという点でも裏へのアクションを前提においていたのかなと思います。

ただ、ヴェルディのプレッシングを誘発しても最後尾にいる4人はWB裏まで一発でボールを届けられるようなプレーがほとんど出来ていませんでした。また、ホイブラーテンはどちらかというと細かくパスをしたりドリブルをしたりするよりは長いボールを入れることを好んでいそうではありますが、井上、原口、安居はショートパスやドリブルを選びがちな選手なのでチームとしてやりたい(ように見えた)ことと選手のキャラクターが合っていないのではないかと思います。WBの背後までボールを届けるなら井上より佐藤の方が良くない?というのが率直な印象です。


また、定例会見では「守備の面ではハイプレスとセットプレーをメインに行ってきました」という言葉もありました。セットプレーは主にコーナーキックでこれまでのゾーン主体からマンツーマンをミックスするように変化していました。西川の前に3枚(ニア、中央、ファーの3点)、ニアサイドのストーンが2枚、ニアポストに1枚、ファーに1枚(すぐにファーポストを埋める担当)、残り3枚はマンツーマンという守り方だったと思います。マンツーマンは相手の動きによってGKが動けるスペースが変わってしまうのでGKコーチのジョアンはそれを望まないようなことが彼の本に書いてあったのでこの軌道修正は意外でした。

ただ、単純に選手のサイズがないスカッドになっているのでゾーンで守っていても弾き返しきれない場面が見受けられていたので、現実的に考えてサイズがある選手はゾーンで置いておいて、そうでない選手は相手にそのままつけてフリーにさせないという調整は妥当な気もします。それでも、2失点目は西川の前の3枚を越えて、一番外側でファーポスト担当が下がることによって空くスペースにいた綱島にシュートされていて、用意した構造を利用されてしまう形ではあったのですが。


そして、セットプレーよりもまずかった(おそらく前半のうちに大久保を投入して手当てを図った最大の要因になった)のはハイプレスが上手くいかなかったことだと思います。7分、10分と早い時間帯で立て続けにヴェルディに決定機がありましたが、特に後者は浦和の守備対応のまずさが顕著に見えた場面だったと思います。

8'40から見てみると左のハーフレーン付近に流れてきた森田に対して原口がかなり食いついていて、ヴェルディ側がバックパスをしてもその状態が続いています。そして谷口から渡邊ー原口のゲートにいる森田へボールが差し込まれた時に原口はスライディングで森田からの縦パスを防ごうとしていますが阻み切れずに石原ー井上のゲートに流れた木村へ通っています。

この後も原口は森田へつき続けていて、再び石原ー井上のゲートを通って木村がボールを折り返したときには井上は木村への対応のために中央を空けているので、中はホイブラーテンと大畑の2枚になっており、原口が森田に食いついたことで空いたスペースに安居がスライドしていたので大畑がファーとマイナスの両方をケアしないといけないという難しい状態になっていました。大畑が山田の前に入り続けていたことでシュートコースをいくらか制限できたことがホイブラーテンのシュートストップに繋がったとは思いますが。

また、19'10~はスローインからの流れで渡邊の背後に見木が流れてきていたのでそこへ石原が寄せて行きますが、そうなると原口の周りに森田と齋藤の2枚がいる状態で、翁長→森田→齋藤のワンタッチパスで原口があっさりかわされて齋藤からクロスを入れられています。

ただ、これらの場面は原口だけがどうこうではなく、渡邊、石原も含めた右サイド3人のユニットとしてボールを通させたくない場所、ボールが通っても良い場所の共有がされていないように見えたことが気になりました。基本的に3人とも相手に寄せては行くものの、自分がボールを取り切れるかどうかの観点だけで矢印を出しているように見えます。

10分の決定機の場面を掘り下げると、8'53で谷口がボールを持っているところに対して渡邊は正面を向いていて外、中のどちらかに誘導している素振りは無さそうです。原口も森田の位置を気にしてはいるものの、完全にマンマークという訳ではない上に松尾ー渡邊のゲートを閉じることも自分と渡邊のゲートに入ってきた後に外へ追い出すこともしにくい半端なポジショニングになったことが森田を潰しきれなかった要因だったかなと思います。

左サイドも安居が相手に食いつく傾向があって、16'35~のように関根とのゲートを大きく空けてしまったところから前進をされた場面がありましたが、右サイドの方がゲートや相手の矢印の管理が出来ていない場面が多かったのでヴェルディ側もそちらからの攻撃が増えたのかなと思います。大久保は翁長を消すように外切りの身体の向け方を作ったところから対応をすることが多く、それによってCHがボールに食いつきやすいとしてもそちらへ誘導している前提が出来ているので問題ないという構造になったように見えました。


後半は渡邊がトップ下だったこともあって47'00~、48'40~のように前半よりも前の4枚が奥を取りに行くというスタンスが強くなったように感じました。ただ、前に行こうとしても結局その手前が詰まってしまうという状況は変わらず、終盤にグスタフソンが出てきてグスタにお任せモードにならない限りは大きな改善は見られませんでした。浦和がビルドアップをする回数自体は多かったと思いますが、すぐに詰まってボールを捨てるような形になることが頻発してしまうことでヴェルディがボールを持つ回数を増やしてしまい、その結果押し込まれて失点してしまうという循環だったのかなと思います。


ただ、ここ数試合の雑感の繰り返しではありますが、CHの列落ちによって手前が詰まるだけでなく前線の人数も不足するという構造に対する手当が試合中も、次の試合になっても繰り返されているので、この状況は今のチームとしては許容されている可能性が高いです。

グスタフソンが入ると80'40~や89'25~のように安居も手前に落ちるより前に出て行くアクションが出ていて、最初からそれをやってくれや。。という気持ちになりますが、こういう状況を見ると、かつての柏木陽介や直近で言えば岩尾憲といった、その人なりの正解を持っていて周りがそれを信じられるような選手(いわゆる司令塔)がいないと機能しないのが現実なのだろうと思います。

正直僕はここ数試合のビルドアップのスタンスは嫌いなので早く変えて欲しいのですし、司令塔がいないとすぐに機能不全になってしまうような属人的なフットボールからの脱却、クラブとしてプレーコンセプトを定めた上でプレーを実行させる環境づくりというのがフットボール本部設立の目的だったはずでは?というやるせなさがあります。

昨年のこの時期もそうでしたし、フットボール本部設立から5年目の終わりにさしかかるこの時期でもフットボール本部設立直前の2018~2019年のような属人性の高いフットボールに結局回帰してしまっているという状況には大きな危機感もあります。これについては1試合の雑感で書けるようなテーマでは無いのでシーズンが終わってから落ち着いて整理したいところですが、結果が出ていないだけでなく、ここからどうやって上昇していくのかというビジョンが見えなくなっているというのはフットボール本部という組織の存在意義を問われても仕方のない状況になってしまうと思います。それでも僕はこの組織は解体せず、少しずつ出来ることからで良いから立て直していこうよというスタンスではありますが。


4連敗です。消化した試合が1試合浦和の方が少ないとはいえ降格圏の18にいる磐田との勝ち点差は4しかありません。そして、次は勝ち点で並んでいる柏との対戦です。やばいっすね。それでも、こんなはずじゃなかったんだ!と言ってシーズンを途中でリタイアすることはできないので、やるしかないです。

チームが勝とうとしていないとは全く思いません。ただ、勝つために何を信じて闘っているのかは見えなくなっているような気がします。何を信じるのか、信じたものを信じ続けられるのかは設定された戦術(論理)だけではなく気持ち(感情)も必要です。プレー強度は論理と感情の掛け算だと思っていて、感情が高まらないとどんな戦術でも机上の空論で終わってしまいます。幸い、柏戦は平日ではあるもののホームゲームです。少しでも選手たちの感情という項を大きくできる環境を作ってあげたいですね。



今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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