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【雑感】2024/9/14 J1-第30節 G大阪vs浦和

(最初の4試合で、何が目標になるのか?)
「このチームは勝ち点を今すぐにでも必要としていますので、メインターゲットの一つとして、勝ち点をしっかりと取っていくことがあります。最初は、あまり美しいゲームは見せられないかもしれませんが、チームが勝つための方向性は、しっかりと見せながらやっていきたいと思います」

(就任会見で攻守のバランスということを言っていたが、この3日間のポジティブなトレーニングの中で取り組んできたのはどういったことなのか?重心を後ろに置いてカウンターを狙うのか?それとも攻撃的に前からプレスを掛けていくのか?)
「簡単にお答えするならば、その瞬間、正しい位置にいるということが重要だと思います。G大阪はいい攻撃の選手がそろっていますし、ビルドアップも得意なチームですので、我々がゾーン1、低い位置で守らなければならない時間帯も確実にあると思います。G大阪はいいチームですが、完璧なチームはありません。そのチームに勝とうと思えば、低い位置での守備はまずしっかりとできなければいけないと思います。」

2024/9/12 定例会見より抜粋

ビルドアップや敵陣でのプレッシングのような各選手の距離や動く範囲が広く不確定要素が多いためコントロールが難しい局面と、自陣でのブロック守備のような各選手の距離が近く矢印の向け方とそこへの連動の仕方のパターンが限られていて比較的コントロールしやすい局面を天秤にかけた時に、まずは後者を整理した方が試合が壊れにくくなるので勝ち点を積みやすくなるというのはよくある話です。

現実的に状況を捉えて対処する傾向の強いスコルジャさんがそのようなアプローチでこの試合に向かってくことは就任会見、定例会見の内容からも想像が出来ましたし、試合を支配するような美しい展開は作れなかったものの、きちんと結果を手繰り寄せることが出来たのは流石だなと思います。

こういうシフトチェンジというかバランスの調整は、ヘグモ体制の間も特に夏になってからやろうとしていましたが、そうなると選手たちから「やりたいことがブレていないか?」という捉え方をされがちです。仮に指導者側が保持やプレッシングの強度を打ち出すことと低い位置での守備対応の両方にアイディアを持っていても、提示する順番によって印象は変わるので「チームとして」の俯瞰した目線では同じような変化をさせても、それを同じ監督の下でやるのか、人を代えて違う監督の下でやるのかでは選手たちがどれだけコミット出来るかが変わって来るだろうと思います。


さて、試合の大勢はG大阪の保持vs浦和の非保持という構図で、それが行われるエリアの大半は浦和陣内でした。浦和が4-4-2で構えたところから前向きにプレッシングを行うことは少なかったことと、ポジトラの成功率が低かったということでこのような展開になったのだろうと思います。

G大阪はウェルトンが右SHで起用されましたが、基本的に保持では左はSBの黒川、右はSHのウェルトンが幅担当で浦和の4-4-2のブロックが届かない場所に人を置いて左右に揺さぶりたいという思惑があったのだろうと思います。

ビルドアップは2CB、2CHに加えて松田がボールのある場所に応じて最後尾にいたりそこから1列前に出たりという形でした。松田の右CB⇔右CHという一人二役ぶりのおかげで、ダワンもスタート位置が右CHだったとしても松田に後ろから押し出してもらう流れで右シャドーのような位置に進出して右CH⇔右IHという一人二役になれていたように見えました。前線の中央には食野、宇佐美、坂本という狭い局面でも上手くボールをコントロール出来るような選手がいるので、そこにダワンも加われると良いよねというイメージだったと思います。

ただ、浦和は2トップが中を締めて自分たちの脇のスペースへ誘導し、そこへ入ってきたら横方向に追って出来るだけ外へ外へ追い出そうとする動きをしていました。ある程度ボールは前に進んでいくものの、進む場所が外レーンに限定されるのでそこから内側にボールを差し込むことは難しそうだなという状況が続きました。

また、G大阪の幅担当に対して、浦和は大久保と関根が早めに下がって対応することでなるべくSBが外に出て隣のCBとの距離が開くような状況にはしないようにしていたと思います。また、SBが外に出た時はCHが斜めに下りる、CHが下りたところには2トップのどちらかが下りるという流れがスムーズだったので、ゴール周辺でぽっかりスペースが空いてしまうという場面は無かったと思います。


前後半通じてG大阪に最もゴールの可能性のは34’05~のビルドアップで坂本が枠内にシュートを打った場面だったかなと思います。右の幅担当であるウェルトンにボールが入ったところからCHの位置でサポートする松田、松田に押し出されて1つ前にポジションを取れたダワンへとボールが入って行きました。浦和からすると関根がウェルトンへ出て行った時に、渡邊が松田に寄せる時には縦を塞ぎに行くよりも内側から寄せる、安居も縦パスが入ったダワンに対して内側から寄せて中には行かせないという対応が出来ると良かったのかなと思います。

ただ、ダワンが安居を外して中へ入って行こうとするときに、その隣のグスタフソンが一旦止まって逆サイドへのコースを塞いだことでダワンは同サイドへのプレーに戻り、坂本にボールが渡ってもホイブラーテンが内側から対応することでシュートコースを中央からニアサイドに限定できています。西川の冷静なセーブも良かったですが、相手に入って来られたとしても出来るだけマシな状態で食い止めるというアクションを周りが出来ていたので決定的な場面までにはならずに済んだのかなと思います。


浦和はビルドアップではグスタフソンと安居が並ぶくらいの位置で、両SBも最初から高い位置を取るわけでは無いので4-2のような形からスタートすることが多かったと思います。ただ、G大阪が4-4-2で構えるので前の6人が自分の捕まえに行く相手を見極めやすいのでハイプレスをかけていきたいという思惑を表現しやすい構図になっていたように見えました。

ただ、G大阪の保持が高い位置で行われた流れで浦和のビルドアップが自陣の深い位置で始まることが多く、そうなるとCBの間に西川が入りやすくなって少しプレッシングの基準にズレが出来やすくなります。19'00~のビルドアップでは西川が間に入ることで宇佐美が西川、ウェルトンがホイブラーテンへ出てことで大畑が浮いてプレス回避に成功しました。ここで大畑がオープンにボールを持ったところで生まれたズレを活かしきれなかったのは勿体なかったなと思いますし、上手く前に出て行くことが出来ればG大阪陣内で6v5の局面が作れたかもしれません。


また、この場面でのポジショニングもそうですが1トップと2列目の3人の4枚があまり離れずにポジションを取って、そこに後ろからもう1枚加勢させるというスコルジャさんが昨季の浦和、その前のレフポズナンでやっていたような形が見られました。前半はこの加勢する1枚が大畑になることが何度かあり、選手としてのキャラクターは違うものの昨季酒井がやっていたようなアクションではあったので、今後この役回りを誰がやっていくのは気にしていきたいところです。

2CHは8番を2枚のイメージということを昨季のキャンプ段階で話していましたが、例えばレフポズナンでは前線4人に対する+1はSBでもCHでもその時の状況次第でネガトラに備えたバランスがとれていればOKというように見えたので、「どのポジションの人が」という点でのこだわりはあまりないのではないかと思います。

昨季酒井がそういう役回りになることが多かったのは彼の大駒的な特徴があったからであって、今の大畑や石原のようにビルドアップにも上手に関われる選手が両SBにいるのであれば役割を固定する必要はないと思います。ただ、役割を固定しないということはお互いの状況判断が揃う必要が出てくるので、それがスムーズに出来るようになるのに時間がかかる可能性もありますが。


前半から大久保と関根の非保持での貢献度が高かったので試合終盤に点を取りに行くときにそこのバランスをどう変えていくのか、要はベンチにいるアタッカーが松尾、前田、原口なのでそこのバランスが変わることのリスクをどうとるのかということをハーフタイムの間は気にしていました。ただ、後半早々にスコアが動きましたね。

ウェルトンの裏抜けを目掛けたボールを西川がキャッチしたところから始まったビルドアップでは前半と同様にG大阪の前からのプレッシングがありました。この場面では自陣深くなので西川も使いながらでしたが、坂本が西川→井上の二度追いを敢行して数的不利を解消しています。それでも、石原があらかじめ食野と距離を取ってからボールを受けたことで、食野に寄せられても相手を見る余裕を持てており、ドリブルで食野を外して一旦時間を作ることが出来ました。これはこれまでの雑感でも繰り返し書いてきましたが、石原が今季大きく成長できている良い部分ですね。

石原がドリブルで中に入って行った流れで代わりに大久保がSBの位置に下りてきてからは、石原がサイドに戻ってきて食野を大久保と挟み込めたこと、石原が戻ってきたことに対して黒川が出て行った背中に渡邊が抜けて行ったこと、渡邊が抜けて行ったところへ鈴木がついて行ったことで空いた中央のスペースへ大久保が運んで行ったこと、その先にもいくつもの良かったポイントがあった素晴らしい展開でした。文字にするとだらだら長くなるので図にしておきましょう。

というよりも映像を見ましょう。大久保のドリブルのコース取りとボールを離すタイミングがパーフェクトです。


後半に入ってからスコアが動くまでの時間が短かったのでハーフタイムでの指示だったのか浦和のゴール後の指示だったのか分かりませんが、G大阪のビルドアップではダワンのスタート位置が前半よりも高く、坂本が1トップで宇佐美、食野、ダワンの3シャドーという形になったように見えました。ダワンが前に出ているので鈴木がアンカー的に振舞うか、松田が早めにCHの位置に来て2CHの状態にするのかは状況次第という感じだったでしょうか。浦和が前半からSBの内側にCHが下りるのが速くてそこをうまく使えませんでしたが、そのエリアに入らせたい選手をよりその近くに置いておきたかったということかもしれません。

ただ、この変更では決定機を作るところまで至れなかったのと、おそらくハーフタイムのうちにこの変更はしていたが思ったよりも早く浦和に点を取られてしまい、そこから浦和の守備はもっと引くだろうという想定から、57分の段階で鈴木に代えて美藤を投入しアンカーとしてのプレーヤーを固定して、ダワンをより前目の役割に専念させたように見えます。食野から山田への交代は単純に食野のボールフィーリングがあまり良くなかったということだったのかもしれないですし、非保持やネガトラでは山田の方が強度を出せるので高い位置で失っても出来るだけ早く奪い返すための交代だったのかなとも思います。

58'10~のビルドアップでは美藤が渡邊とリンセンの間に立つことで2トップのゲートを締めさせて、その脇を取った福岡のところから前進を試みており、出来るだけ少ない人数でビルドアップ局面を済ませようとしていたと思います。浦和の4バックの前に坂本、宇佐美、山田、ダワンがいる状態で、それに加えて大外に黒川とウェルトンがいるので浦和の方は大久保と関根が後ろに引っ張られやすくなり、そうなると渡邊とリンセンの位置も下がることになり、という流れでボールを奪ってもなかなか前に出て行けないという展開が増えていきました。

それでも中央がなかなか空かないので、G大阪の方はさらに選手交代で松田と坂本を下げて山下と岸本というサイドプレーヤー2枚を投入し、これに合わせてウェルトンが左に移動しました。中央がなかなか空かないので、左はウェルトンと黒川、右は山下と岸本で2枚ずつ外レーンにスタンバイさせることで外の人数を増やして、そこから突破すれば中央から浦和の選手を引き出せて、最終的に空けたい中央にスペースが出来やすくなるだろうということを目論んだのではないかと思います。


G大阪が前のめりに出てこようとしているのに対して浦和の方は松尾とチアゴを入れて前線の脚力をリフレッシュします。松尾を入れることでカウンターの場面などドリブルで相手陣内までボールを運んで行って点が取れなくても時間を使いつつ陣地回復すること、チアゴを入れて前線で一旦キープできる状況を作ることを目論んだのではないかと思います。

さらに75分に差し掛かるところで大久保が足を攣ってしまい、ここで前田と原口を投入します。前田はそのまま大久保に代わってというところでしたが、原口はグスタフソンに代わってCHに入りました。

原口のCHとしてのアクションはきっちりしたゾーンディフェンスとしてのそれというよりは近くにいる相手をきっちり捕まえておくことの方に重心が置かれていたように見えます。79'25~のG大阪の保持では原口と大久保の間を取りに来た宇佐美を20秒近くマークし続けていて、美藤から黒川にボールが出た時も自分の方が黒川に少し近かったものの、誰のマークも受け持っていない前田に「お前が出ろ!」と指示して行かせている場面が象徴的だったかなと思います。

今回は試合に向けての状況としても、試合展開としても守ったところから上手く前に出て行きましょうという流れにはならなかったので、2トップも中盤に吸収されるくらいのポジションを取っていて原口が人を捕まえることに注力しても穴は出来にくかった面がありますが、これがもう少しチーム全体の整理が進んできた時や、凌いだ上で前に出て行きたいという欲が必要な状況になった時にどうなるかは気になるところです。

原口本人は加入会見でも「アタッカーとして!」と話していましたが、この試合では近くいる相手についていって良い状態でボールを入れさせないことは愚直に繰り返していたので、シーズン途中で岩尾、敦樹が移籍したこともあって2CHにした時のやりくりが難しい陣容になっていることもあって、相手次第ではあると思いますがしばらくはCHとして起用されるのかもしれませんね。

でも、どんな起用をされていようと僕がこれまで浦和レッズに所属していた選手の中で最も心を躍らせた、まさしく僕にとってのアイドルだった選手が、こうして浦和のユニフォームを着てピッチに帰って来てくれたことだけで胸がいっぱいです。


終盤はG大阪がペナルティエリア近くでボールを持つことがほとんどでしたが、クロスの狙いどころとしてボールを入れる場所も人が入って行く場所やアクションの方向も上手く共有出来ておらず、事故が起きることを願っていても事故が起きそうな仕組みにはなっていなかったかなと思いますし、そういう部分は現時点でG大阪よりも上位にいるチームの方が上手だなとも思いました。

また、ポヤトスさんは選手のキャラクターも含めて左右どちらもバランスが良い状態を作っていた印象ですが、単純に宇佐美は左側に流れた方が早めにクロスを上げることもカットインすることも上手なので、ウェルトンと黒川も含めて左を突破、ゴール前へのボール供給という役割、右を相手が動いた背中へ入る、クロスを仕留めに行くという役割に分担してしまった方が、何をするのかが相手にも分かりやすくするリスクはありますが、選手個々の長所をそのまま発揮させてあげるというリターンも見込めたのかなと思います。

ましてや、先述した通り途中から入った原口が人を捕まえる傾向が強いのであれば、左を「作り」のサイドにすることでそこを利用するということも出来たかもしれませんし、アンカーの美藤が左利きなので突っ込んでいった後の美藤へのバックパスをそのままダイレクトにゴール前へ、さらにアウトスイングで西川にキャッチされにくい軌道で入れられる可能性はあったのかなと思いました。


保持の質はまだまだでしたし、決定機の数=ゴールの数というのが頼もしいのか心許ないのか分かりません。町田戦で見られたようなちょっと急ぎすぎてしまうきらいというのは、この試合でも特に前半に何度も見られていて、そこは昨季と同様に保持は選手を成長させることよりも、今時点で選手が出来ることをベースに組み合わせていくのかなと考えた時にはしばらく続くのかなと思います。

それでも、ゴールシーンは石原と大久保が今季個人レベルで上手くなったことがきちんと身についているということを見せたものだったと思います。保持と非保持のバランス感覚が変わるので、各局面のスタート位置や周りとの距離感の変化によって今季ヘグモさんたちとやってきたことをそのまま表現することは出来ませんが、「このパターンはあの時にやったやつ!」のような感じでそのパターンがハマった時には上手くいくよねというものが選手たちの中で作れて行くと良いなと思いました。

何はともあれやっと勝てて本当にほっとしましたし、パスのボールスピードを見てもまだトップコンディションでは無さそうでしたが原口元気が戻ってきたことの喜びを勝利と共に感じられて良かったです。来週は僕らの想いを彼がもっと感じてくれる日になると良いなと思います。

(原口元気選手の加入が決まってチケットの売れ行きも伸び、ユニフォームも数分で完売したとのことで、それはファン・サポーターの期待の表れだと思うが?)
「やはり、満員の埼玉スタジアムでやりたい、という思いがあります。ここで期待値が上がってくれるのは非常に良いことです。次の試合で久しぶりに来てくれるファン・サポーターのみなさんをしっかりとつかまえるために、僕自身は価値のあるプレーをして、また見に来たいと思ってもらえる思いをつなげていきたいと思います。僕自身も満員の埼玉スタジアムを期待しているので、ぜひ来てほしいと思います」


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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