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【雑感】2024/11/30 J1-第37節 福岡vs浦和

10位前後の位置にいるチーム同士の対戦だったので同時者以外にはあまり興味を持たれないような試合だったのかなと思います。福岡の方は長谷部さんの退任が既に決まっている中でのホーム最終戦なので、これまで頑張ってきた選手にもプレータイムをあげたいというテンションを56分の3トップ総入れ替えから感じました。

そして、浦和の方も定例会見でスコルジャさんが「今までベンチスタートが多かった選手にプレーする機会を与えるチャンスでもあります。そして来シーズンに向けて新たな戦い方やセットアップを試すこともできると思います。」と発言していた通り、GKも含め多くのポジションでメンバーの入れ替えがありました。

「来季のことを考えて新たなセットアップなども試しますが、これはリーグの戦いであり、我々は浦和レッズです。正しい姿勢でしっかりと勝ちにいく姿を見たいと思っています。」と表向きは言いつつも、勝負に対してシビアになる必要がない試合であることは事実なので、そのあたりの建前というか、思っていても言ってはいけないことは心の中に留めていることは察した方が良いのかなというテンションで僕は観ていました。

だからと言って、勿論負けようと思ってプレーしていたとは思いませんが、来季に向けてのオーディションを兼ねた試合だったので、それぞれが自身の生き残りをかけたプレーになるとどうしてもチームとしての部分は見えにくくなってしまうと思います。特に試合の終盤に行くにしたがって、スコア的にリードされているだけでなく自身の置かれている立場からの焦りもプレーに出てしまっていたかもしれません。

既に今季限りでの退団が発表されているリンセンとブックはオーディションの対象では無いのでメンバー外になるのは仕方ないと思いますが、この試合でメンバー外になった他の選手も同じように来季いないことが前提かというとそうでは無いのかなと思います。もう来季いるのは確定していて、このくらいは出来ると計算が立っている選手はこちらもオーディション対象にはならないと思いますし、その選手がいることで出られなかった選手を試すための試合でもあるので、外から見ればこの試合でメンバー外の選手がどちらの理由でオーディション対象から外れているのかは分かりません。


試合の大勢は浦和の保持vs福岡の非保持でした。福岡はまず浦和のビルドアップ隊がボールを持つのは許容して5-2-3のブロックを作って構えるのが基本スタンスで、そこからバックパスや横向きのパスが出た時にはボールサイドのシャドーとCFの2枚でCBを押さえに行く、WBが長い矢印を出してSBまで出て行く、という運用だったように見えました。ただ、シャドーの2枚は金森がまずは埋めたところから、紺野は自分が動きながら、というスタントすというか特徴の違いがあったかなと思います。

浦和は4-2の形でビルドアップを開始することが多いものの、2の位置には小泉が下りてきて、その代わりに渡邊が前に出るという動きが特に15分を過ぎたあたりからかなり多かったです。選手のキャラクターとして小泉は元々ボールをたくさん触りながらプレーするのを好んでいるように見えますし、渡邊はたくさん走れるので空いているところへ出ていけるという選手なので、そこのキャラクターの違いとスタートポジションの設定によって自然と流動性が出ていたのかなと思います。

福岡の非保持のスタンスもあって浦和は最後尾で前向きにボールを持てた状態からビルドアップをスタート出来ていて、それによってレイオフを多用しながら前進を試みていた印象です。後半のみだった前週の川崎戦とは違ってボール保持者に時間があると周りの選手もポジションを取る時間が確保されるので、それによって縦パスを受ける選手の手前に前向きな選手を作れる関係性は取れていたと思います。

それでも、手前のエリアでレイオフが出来たのはCB→SBの斜め前向きなパスをCHに落とす、あるいはCB→CHをSBへ落とすくらいで、それ自体はそこまで効果は無かったかなと思いますが、11'20~のようにレイオフで前向きにボールを受けた安居から前へ飛ばした先で小泉がこぼれ球を拾って前進した場面など、縦パスの出た先で手前にポジションを取る選手がいるとボールが繋がらず相手に取られてもすぐに前向きにアクションが起こせるので、それはそれで悪くはないなという感じでした。

ただ、前進しても基本的にレイオフが成立するのは外側で、そこに出し手、落とし手、受け手の3枚を使っているので、いざゴールに迫ろうとしても中にはチアゴと逆サイドのSHがいる程度で決定機はほとんど生まれませんでした。先述の11'20~もそうですし、その前の6’00~もペナルティエリア付近までボールは前進していますが、どちらもペナルティエリアの中にいるのはチアゴと原口の2枚だけでした。


ゾーン1、ゾーン2の前進はレイオフを使っていることもあってワンタッチパスも含みながら速いテンポでボールが動くものの、ボールを前進させてラスト1/3まで来ると人数が追いついていないのでスピードダウンしてしまって、その間に福岡の選手たちがゴール前に集結する時間が生まれるというのがこの試合で多く見られたパターンだったかなと思います。人はボールより速く動くとはよく言いますが、ボールを動かすのは人であってボールが動いた先に人がいなければどうしようもないので、ボールを動かすための人が追いつくのを待つしかありません。待っている間に相手も追いついてしまうのですが。

相手陣内に押し込むことを主眼に置くのであれば、自分たちが設定した前進のパターンを先鋭化していくのも手段としてはあると思います。まずはとにかく相手陣内にボールを運んで押し込んで、そこから先はまた別のお話し的な。ただ、その方向性でやっていくのであれば、相手を押し込んだ状態から点を取るために、チームとしてラスト1/3での動きのパターンを仕込むか、相手に待ち構えられるような少々不利な状況からでもピンポイントでクロスを上げられるか相手との1v1あるいは1v2を突破できるサイドプレーヤーや、大きさ、強さ、動き出しの良さなどで理不尽にゴールを取れるCFといった個人の質を持った選手を用意する必要があります。

そこはこれからどちらの方向へ進むのかは、まあどうなるか見てみよう、としか言えないかなと思います。(勿論、パターンを仕込んだ上で理不尽な能力がある選手を獲ってきて欲しいですが)


それでも前半に押し込んだ後に簡単にカウンターを食らわなかったのはこうしたレイオフを前提としたポジショニングと、牲川が早めにCBの背後のスペースを消せていたことが大きかったかなと思います。勿論、福岡が非保持の時に5-4で撤退するので前残りするのがウェリントンだけになりがちだったのはありますが、蹴り出されたボールをGKが前向きに余裕をもって対処できていたのは良かったかなと思います。

牲川についてはプレッシング受けて右足を切られた時に上手く逃げ出せなかった場面が前半に2回ほどありましたが、16'15~の浮き球を渡邊に通して前進した場面など、ビルドアップの場面での不安要素はあまり無かったように思います。


失点シーンはそもそもペナルティエリアの正面でオープンに打たれてしまったこと自体がどうなんだろうという感じですし、かなり良いコースに打たれてしまったので対処は難しかっただろうなと思います。その前のビルドアップのところで佐藤から関根にボールが入る時に関根は前向きにボールを受けられる位置には移動できておらず、下がりながらワンタッチで前に飛ばしており、周りの選手も関根からの前向きなボールに対処するポジションを取れていませんでした。

ビルドアップの基本形は4-2ではあったものの、長い矢印を出す福岡のWBに対して浦和のSBがどこにポジションを取るのか、要はCBの脇まで引いてきてしっかり距離を取るのか、前に出てWBを押し下げるか(その分CHなど代わりに誰かがCBに出て行くシャドーの脇で前向きになるか)といったプランはあまり無かったように感じました。

なので、この場面の関根も一旦前に出て行こうとしたものの、ホイブラーテンから縦パスが出てそのレイオフを想定していたのか一瞬前に出かかっていて、佐藤にパスが出たのを見て後ろに下がり直していたことで岩崎のプレッシングを背中から受けることになってしまいました。

また、この時にチーム全体としてレイオフだけでなくパスを主体にしてボールを動かそうという前提なのか、渡邊が詰まりそうな関根に寄って行ったことで関根は前に蹴り出す以外の選択肢を持て無くなってしまったのかなと思います。

ただ、福岡の方はこれを目論んでプレッシングを仕掛けているので、そういう点では現実的にやれることは何かということを福岡の方が遂行出来た訳ですし、左サイドからのプレッシングで奪えれば自然と右サイドのチームで一番期待の持てる紺野にシュートチャンスを作れるので、理想としていた展開だったのかもしれません。


後半に入っても小泉がCHの位置に下りてくる、それに合わせて渡邊が前に出て行くという動きは継続でした。前半との違いで言うと、その入れ替わりに関根も加わることがあって渡邊が右SBの位置に来ることもあったということもあったのと、左の長沼のスタート位置が少し前になったのかなと思います。渡邊は右SBの位置に落ちてもそこから前に出て行こうとしますし、関根も長沼も前のめりな意識になることで少しでも前に人数を置いた状態でビルドアップをしたいということだったのかもしれません。

それによって少しゴチャゴチャしながらもペナルティエリア付近で人数をかけてボールを動かす回数は増えましたが、チームとしての配置やアクションの設定がされているような感じは無かったので、その場のアイディアが上手くハマればシュートまで行けるのかもしれないけどそんな気配は無さそう、という印象でした。


浦和は興梠、二田、さらに武田、本間と前線の選手を交代していきましたが、これによってカオスな状況に拍車がかかってしまったのかなと思います。二田は右SHに入ったものの独力で相手を剥がすタイプでは無いので、サイドでボールを渡されても相手に誘導されるがままに縦に仕掛けさせられていたように見えましたし、興梠も動き出しやちょっとした体の入れ方は流石だなと思うようなプレーがあったものの、そのままボールをキープしきれるというほどではなかったかなと思います。

本間はミドルゾーンでボールを受けた時に前が詰まっていたとしても横方向に運んで相手の基準をずらすようなアクションをしていたり、前向きに仕掛けられるときには勝負をかけていたりしました。これは原口に前半に見たかったプレー、姿勢だったなとは思いましたが、本間は本間でドリブルをした次に出すパスが引っかかったり、周りのアクションが伴っていなかったりとなんとももどかしい感じでした。

また、武田も小泉に代わってトップ下に入ったので同じようにCHの位置に下りながらビルドアップに関わろうとする場面もありましたが、ボールがサイドからしか前進しないのでいつの間にか右サイドに張ってボールの中継点になることがほとんどになっていました。それならいっそ二田と最初からポジションが逆でも良いのではと思わなくはないですが、武田がそこからクロスを上げたとしても中にいる選手が福岡の3トップよりも上からボールを叩ける対角ではないですし、クロスを入れるよりは繋いで崩す方が可能性はありそうだったので、そこは何とも難しいなと思います。


結局後半はどんどんチームとしての配置バランスが悪くなったのでカウンターを受ける回数も増えましたし、どこに誰が入るのかということの共有も上手く出来ていなかったのでチャンスがなかなかないし、相手のミスから得た決定機も本間の手前でバウンドが変わってしまって上手くミート出来なかったし、なかなか厳しいなという印象のまま試合が終わってしまいました。

川崎戦では試合の前に「ビルドアップで改善したり加えたりしたいことがありました。特にサイドバックとボランチのところです。」というコメントからSBがCBの脇まで引いて前向きにボールを受けようとしているのかなと思える動きがあったのですが、この試合では、相手の配置は違いますが、そうした動きはあまり見られませんでした。

今のところ保持においてチームとして積み上がっているように見えるのは、レイオフのためのポジショニングと上手く行った時にはワンタッチを混ぜながらテンポよくボールが繋がるということと、CHの位置に2枚いる状態かつそこから動きすぎないことが増えたのでネガトラのフィルターは確保できてカウンターを受けにくくなっていることの2点なのかなと思います。

これ以上の改善を次節いきなり見られると期待するのは難しいので、どうなるかは先述した通り来季のキャンプやその先を見るしかないのだろうと思います。そもそも次節は興梠、宇賀神の最後の晴れ舞台という趣が強いと思いますし、それ以外のポジションも今節と同様に来季に向けたオーディション的な起用になるのではないかと思います。

正直、こんな現状はやっぱり寂しいなと僕は思います。
もっとヒリヒリした試合が見たいな。
こんなはずじゃなかったんだけどな。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。


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