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【雑感】2024/11/22 J1-第28節 浦和vs川崎(後半のみ)
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ハーフタイムの間に片方の監督は契約解除されて後任が指揮を執ることになり、もう片方の監督も今季限りの退任が決まるという珍しい試合になりました。8/24に行われた前半は、浦和が保持でついに自分たちのやりやすい形を掴めのではという期待感を持てた上に、その流れが来ている時間帯に先制点を取ることが出来た、途中からは川崎が変化を加えて押し返したものの、雨で水が溜まったことでシュートが止まったりして浦和がリードした状態で折り返したというものでした。
6月半ばからヘグモ体制でもそれまでの4-1-2-3から4-2-3-1へシフトチェンジを試みていて、この試合では非保持でもようやく狙った流れでボールを奪ってカウンターの場面を作ったり、先述した通り保持で動きやすい形から良い場面を作ったりといった具合に、「あれ?これをやるならスコルジャさんのままで良かったんじゃね?」と思うこともあったという経緯がありました。
なので、怪我人以外はメンバー変更が出来ない状態でスコルジャさんへ引き継がれたものの、スコルジャ体制でもベーシックになっているメンバーのままなので、あまり違和感なく試合に向かえたのではないかと思います。
浦和は前半に出場していた大久保については試合前の段階で半月板損傷で手術をしたとのリリースがあり、代わりに松尾が入るという変更がありました。川崎の方も脇坂がハムストリングの肉離れで負傷離脱しており、こちらは代わりに小林が入りました。ちなみに、第1副審も三原さんから聳城さんへ変更になっていました。
1-0の状態から残り45分のみを行うというのは誰もが経験のない状況だったと思いますが、この試合に向けてのスタンスの取り方としては、川崎の方は追いつくしかないので前に出るという方向性しかない、浦和の方は最初から行くのか相手のスタンスを見てからなのかを決めないといけない、という違いがあって、結果的にはそのスタンスの決めやすさがそのまま試合の流れにも出てしまったなという印象です。
試合前のアップでも両チームに違いがあって、浦和はいつも通りの試合前のアップをしていたのに対して、川崎は、計っていないので実際の時間は分からないですが、体感では10分以上の時間を使ってサブ組も含めて縦がハーフコート、横はペナ幅くらいのグリッドでのゲーム形式をやっていました。ゾーン3での狙いどころの確認だけでなく、そこへボールが入らなかった後のトランジションへの移行の強度など、残り45分に向けて試合に近いテンションを作っておく狙いがあったのかなと思いました。
SNSで聞いたところ普段はこのようなアップはしていないとのことだったので、川崎の方はアップから普段とは違う形で試合に向けたアプローチを取っていたのかなと思いますし、結果的にはこのアプローチのおかげもあってスタートから川崎の方が出足が良く試合に入れていたのかなと思います。
川崎の保持が多い展開になりましたが、川崎のビルドアップはCHのうち1枚(最初は橘田、大島→河原の交代の後は河原)がヘソの位置に入ってもう1人は状況に応じて左右に動くという形でした。浦和はそこに対して安居を早めに前に出す、2トップもそこを消しつつCBへ寄せて行くという動きをしていたものの、CBからパスが出る先のSBのところに出て行く松尾、関根の出足が遅く、そこで前を向かれてしまうことが多かったかなと思います。
47'00~は佐々木からファンウェルメスケルケンにパスが出て、そこで前を向いて浦和のプレッシングをひっくり返すボールが出ます。リンセンが佐々木に対して横向きに寄せて、安居も前に出て橘田を捕まえられるところまで出ているものの、松尾はファンウェルメスケルケンまで少し距離が合っただけでなく、佐々木がボールを離してから寄せて行ったのでそこで少し時間が生まれてしまいました。
松尾の素振りからして内レーンに家長が絞って来ることを気にしながらポジションを取っていたのかなと思いますが、大畑がそこについて行けているのであれば後ろから声をかけて松尾を早めに動かせると良かったかもしれません。ゾーンディフェンスをベースにしているとは言えども、ハイプレスに出て行く時にはある程度人を捕まえに行くというか、誰がどこへ行くのかの判断を早くしないとハマらないだろうと思います。
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また、52'00~の川崎のビルドアップではゴール前からスタートしているのでチョンソンリョンも加わっていたこともあって佐々木がかなり開いた位置、浦和の2トップから距離を取った位置でボールを受けており、前向きにボールを受けて前線へボールを入れています。
ただ、開いている佐々木に対して寄せたのが距離のある渡邊で、松尾は自分の背中を気にしていたので前に出ずにステイしています。この場面もハイプレスに行くのであれば2トップ脇のスペースにはSHが前向きに出て行く方が相手を簡単に前向きにさせにくくなると思いますし、ここ数試合でやっていたこともそういうアクションだったので残念でした。
それでも、渡邊がかなりのスピードで寄せたことで佐々木が蹴ったボールは川崎の選手には届かずに井上が余裕をもって対応できる状況でした。こういうところできちんとマイボールに出来るのかそうではないかで流れが変わるのですが、この場面では井上がヘディングで弾き返して、その先の競り合いで関根が大島を倒してファウルになってしまい、川崎ボールになってしまいました。そして、そこからの流れで浦和陣内に押し込まれてFKを与え、そのこぼれ球からのクロスで失点しています。
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プレッシングに出て行って相手にボールを捨てさせてもそこでボールを拾えずに相手に拾われてしまえば、それは相手にボールを前進させられているのと変わらないです。そういう部分を丁寧にやれないとハイプレスのし甲斐が無いというか、何のためにやっているの?となってしまいます。目的は相手からボールを取り上げることなので、それが出来る場面ではきちんと取り上げられるように、そして、そこから自分たちの保持で押し込んでいけるようにしていかないと試合を支配することは難しいなと思います。広島戦の雑感で書いたように押し込まれた時のクロスの弾き方は良くなっていると思うので、こうしたハイプレスの後の弾き方、拾い方も整理されていくと良いなと思います。
川崎は相手ゴール前でのアクションも準備していたのだろうと思います。浦和は撤退時の守備対応が基本的にCBは中央から動かさない、SBが外に出た時にはCHが斜めに下りるかSHが戻って来るというものなので、CBの手前か奥に山田、小林を走らせてそこにクロスを入れるという動きが多かったです。49'08~の山田のニアへのアクション、63'10~の小林のファーからのアクションはその典型だったかなと思いますし、こうして浦和のCBの両脇を狙いに行くという観点からすると、脇坂に変えて入れたのが小林だったのは合点がいきます。
川崎は非保持でも浦和のテンションを上回っていて、2トップが寄せるのがとても早かったです。浦和はここ数試合ビルドアップでレイオフを多用しながら前進することが多かったですが、そのためのポジションを取る時間を与えないくらいに小林と山田が素早く浦和のCBまで寄せて行っていたように見えます。
素早く寄せるというのは、パスが出たら速く行くというということではなく、ボール保持者の雰囲気からして次に出て行きそうな場所が見えたらパスが出る前に動き始めて、受け手にボールが到達する時にはかなり近いところまで行けているというイメージです。
57'20~の浦和のビルドアップでは、小林が井上、西川と二度追いしていますが、山田は西川からホイブラーテンにパスが出そうなところで動いていますし、家長も西川からホイブラーテンへパスが出た時には恐らくその次にボールを受けるであろう大畑の方向へ動いています。
63'56~も大畑に対して家長が寄せた時には、大畑がボールを持っているうちに次にボールが出るであろうホイブラーテンの方向へ動き始めていて、ホイブラーテンがボールを受けた時には山田が井上の方向へ動き始めています。ただ、この場面は井上からボールを受けた西川が関根まで正確にボールを飛ばして裏返し、中盤の開いたスペースをグスタフソンが運んで渡邊のシュートまで行ってはいるのですが。
(チームは残留が決まって何が何でも勝ち点を取らなければいけないというプレッシャーからは解放されて、また違ったメンタリティーで今季の残りの試合に臨めると思うが、ここからの試合で来シーズンを見据えて付け加えること、新しいものを出していきたいという考えはあるのか?)
「新しい要素は毎週加えていこうと思っています。そのように加えたものが実際に選手にとっていいものかどうかということも評価しながら行っています。今後の試合でも、たとえばビルドアップにも新しい要素を加えていきたいと思います」
(川崎戦と来シーズンに向けての準備で今週はどういった点にフォーカスしてトレーニングしているのか?)
「今週はビルドアップを中心にトレーニングしてきました。ビルドアップで改善したり加えたりしたいことがありました。特にサイドバックとボランチのところです。今までリーグでやってこなかったことを少し試したいと思っています。そういった要素を川崎戦でトライするのはいいタイミングかもしれません」
川崎戦の前の定例会見ではビルドアップに変化を付けたいという内容の発言がありました。上手く前進できたように見える場面が無かったので何を狙っていたのかを想像するのはちょっと難しいですが、「特にサイドバックとボランチのところ」で注目してみると、自陣の深い位置でのビルドアップではSB(特に大畑)は51'47~のようにホイブラーテンの脇まで下りてくることがあって、CHは2枚とも中央からあまり離れずにプレーすることが多かったように見えます。
CHが2枚とも中央から離れなかったことで、59'05~のようにホイブラーテンが縦パスを強要された後の跳ね返りを安居が拾って二次攻撃に繋げ、さらにその後に押し込んだ後のこぼれ球も再び安居が拾って浦和の保持の時間を続けられています。2枚とも中央にいることでグスタフソンがボールと一緒に前進することが出来、59'48~のように関根をワンツーで前に行かせる、そこでボールを奪われても中央にいるのでネガトラでそのままフィルター役になって石原と一緒に相手を挟み込んでボールを奪い返す、という展開を作れています。
決定的な場面を作ることは出来ていないので良い印象はあまり残らないですが、それでもチームのバランスとして狙っていたことは59'05~60'50くらいの約2分間に出ていたのかなと思いました。安居があまり動かないようにしているというのは試合前日に出たLineNewsでの記事とリンクしていたので「あの記事で言ってたのはこれね」と思った人もいたのではないでしょうか。
「最近は動き過ぎず、その場所に自分がいることで相手のマークを自分に引きつけ、スペースを空けるという考え方が少しずつ出てきました。だから試合中は、動かないときはあえて動かずにいることもありますし、一方で動くときは動くようにしています。
ポジショニングについては周りとも話し合いながらですけど、無闇に動かないことの効果を感じはじめています」
浦和は保持のバランスで言うと左は松尾を外に張らせるので大畑は手前からスタート(ホイブラーテンの脇まで下りる)でもOKでそこから松尾の内側を上がっていく、右は関根が内に入るので石原が早めに外から前に出て行けるようにする、というイメージだったのかなと思います。石原が早めに前に出るとしてもグスタフソンが右CHかつ、左CHの安居と一緒に中央にいるのでグスタフソンが右に流れてもバランスが崩れないので、どこかに偏りがあるということにはなっていなかったと思います。
ただ、これまで動いていた選手の動きを少なくしたのでバランスが良くなった半面、選手のバランスを変えたことでここ数試合で増えていたレイオフをするためのポジションに人がいないので連携が出来ないというのはあったと思います。前提が組み替わっているのでその上で行われていたことも組み替え直すというか、その前提に合わせ直す作業は必要になるので、それはこの試合には間に合わなかったのだろうと思います。そこがスムーズにいくと川崎陣内でのプレースピードがもう少し上がってゴール前に迫れる場面も作れたのではないかと思います。松尾を外に張らせてそこにボールを届けても対面のファンウェルメスケルケンをぶっちぎれる場面が無かったのも物足りなさの一因だったかもしれません。
リンセンに変えてチアゴを入れたタイミングで2列目の並びを変えて左から関根、松尾、渡邊としました。これによってそれまでの試合のように前線4枚が中央に集結する形に戻しましたが、今度はそこまでボールを届けられる場面がなく機能しませんでした。先述した通り川崎のプレッシングが早く、浦和のビルドアップ隊が所定の位置につく前にボールを離さないといけない状態にされてしまったことが大きかったと思います。結局、78'40~にグスタフソンからの変態的なスルーパスで前線4枚が一気に川崎ゴールに迫ったのがハイライトだったでしょうか。
広島戦で残留を決めて、いろんな人からの発言があったようにこの45分を「来季に向けて」というメタ的な視点で捉えていたのかもしれません。勿論それは目の前の45分をおざなりにするということでは無いと思いますし、自ら勝利を手放そうとしていたとも思いません。
ただ、僕が期待していたことや、試合後のスタンドの雰囲気から感じたのは、残留が決まったからこそ負けない試合よりも勝つための試合をして欲しい、上手くいかなかったとしても前向きにどんどん出て行くトライをして欲しい、ということだったのではないかと思います。45分だけ、しかも交代も5人出来るという舞台装置でどれだけ高強度なやり合いが見られるのだろうという期待を僕はしていたので、そこはちょっと拍子抜けというか、がっかりしたのが正直な気持ちです。
保持は「来季に向けて」の組み換えをしていたこともあって前向きな勢いが上手く出せなかった、非保持では負けない試合をするために前向きなアクションを自重してしまった、そうした両面があって後手に回ってしまったのかなと思います。その点、川崎はビハインドで再開したということもありますし、鬼木さんが今季限りで退任が決まっているので「来季に向けて」という視点を持つ必要性が浦和よりは少ないということで、この45分との向き合い方が分かりやすく、彼らにとっては良い方向に作用したのかもしれません。
恐らく残り2試合も「来季に向けて」の色は強いと思います。その中で色々な選手を試したいということもあると思いますし、実戦の場で試してみたいことをやってみるということもあるだろうと思います。引退する選手、契約満了になる選手とのお別れの場として試合が使われることもあると思います。それでも「前向き、積極的、情熱的なプレーをすること」を疎かにすることはあってはいけないと思います。そういった姿勢を誰が出ても、どんな時間帯でも見られることを期待したいですね。
今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました