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【雑感】2024/8/24 J1-第28節 浦和vs川崎(前半終了後に中止)

7月頭の駒場での湘南戦からホームゲーム4試合連続で雨や雷によって時間変更、中止となっただけでなく、今回は「夏休み最後のホームゲーム」ということで試合前のイベントも含めて1年間の中で何度かの集客に特に力を入れた日だったと思うので、運営側からするとやるせないというか、普通であれば使わなくて良いところに力を注がないといけない状況が続いてしまうのはしんどいだろうな思います。

試合開始数分後の雷鳴を合図に一気に雨が降り始めて、30分を過ぎたあたりからところどころ水たまりが出来始め、38分あたりからはそれがプレーに大きく影響を与えていました。

中止の判断をさせていただいた時点において雷の発生は確認されておりませんでしたが、激しい雨が断続的に降り続いていたことによりピッチに水が溜まるなどしていたため、選手の負傷リスクが極めて高く、両クラブの選手のコンディションを守るためにこうした判断をいたしました。

浦和レッズ公式SNSの投稿より抜粋

もしかすると、そのまま試合を最後までやり通しても誰も怪我人が出なかったかもしれませんが、それはやってみないと分からない話ですし、浦和レッズとしては一貫して何か事故、事件があった時に未然に防ぐことができなかったことを謝罪し続けているのですから、あのピッチ状況で選手の怪我を未然に防ぐという判断をしたことは尊重したいです。そもそも天災への対応は空振りを恐れずリスク回避すべきだと思いますし。

ただ、試合中止がとても残念になるくらいに雨の影響が出てくる30分くらいまでの試合展開は攻守ともにポジティブなものでした。この内容のまま試合をしっかり進めて成功体験を積んで巻き返せるチャンスだったのに、、という気持ちは大きいです。再試合は前半終了1-0の状態からですよね。。?


浦和のスタメンは前節出場停止だった西川のところだけ入れ替えがありましたが前節からフィールドプレーヤーは全員継続でした。ヘグモさんは元々選手同士の関係性を大切にしていて、キャンプから選手の序列を明確にしていたので、怪我などが無ければ基本的にはメンバーを簡単にはいじりたくないということだと思います。

川崎の方はキーパーがチョンソンリョンに戻ったことと、高井が警告の累積で出場停止になったことでCBに車屋が入ったことが変更点でした。前回対戦のGWから川崎の試合をほとんど見ていないので変化のグラデーションは分かりませんが、予習した直近の3試合についてはファンウェルメスケルケン、高井、佐々木、三浦の4バックがいずれも自分がオープンなら手前に空いたスペースへ運んだり、相手の間に割り込んだり出来るので、プレッシング回避のところではJ1の中でもかなり能力が高い印象があります。

ただ、中盤の選手たち、特に家長、大島あたりは、早めにボールをピックアップしに来ることが多いので、4バックから運び出したことのメリットがあまり行かせていないような印象もあります。そして、この試合では高井がいなくなることと、佐々木が右CBになることでどれくらい影響があるかなというのは気になるポイントでした。

1'10~の川崎のゴールキックは選手がポジションを取り終わる前にチョンソンリョンが繋いでスタートしていましたが、ヘソの位置に橘田、その左脇に大島というバランスになっています。それに対して浦和は渡邉、リンセンが中央を締めて、関根が前を覗こうとする体勢を取っています。そして、大島から佐々木まで流そうとしたボールを関根が奪ってこの試合の1stシュートまで行っています。

さらに、2'50~の川崎のビルドアップでは関根も大久保も前を覗けるような体勢になっていて、4-4-2で構えるというよりは2トップが中を締めて外誘導するからその脇をSHが出て行くというスタンスだったのかなと思います。この場面ではリンセンが佐々木まで出て行って、関根も前を覗いていたのでこの2人のゲートを通して橘田へボールが入りますが、中央を締めていた渡邊が横向きに寄せて遅らせることで関根のプレスバックが間に合い、そこで安居も含めて囲い込んでボールを奪い切りました。

大久保が関根と同様に前を覗くポジションを取っていたことでカウンターになったところでは川崎の中盤の選手たちよりも前にいることが出来ており、車屋がリンセンに正対している脇へ抜け出しながらボールを受けて決定機を作りました。鳥栖戦、鹿島戦とは違って、自分たちから奪いに行く前向きな矢印が出せた上で、自分たちの網の中でボールを取り上げて前向きな矢印をそのまま攻撃に繋げることが出来た良い場面だったと思います。

自分たちから矢印を出していくスタンスを取った時には7'13のグスタフソンが大島に入れ替わられてしまうといった水漏れが発生するリスクはもちろんありますが、そのリスクを避けるよりも関根や大久保のシュートシーンのようなリターンをたくさん得られるように突き詰めていくという方向性に振れて行って欲しいなと思います。

先に時間を進めて話をしてしまいますが、26'25~の川崎のビルドアップに対しても左からのリサイクルの流れだったということがあるにしても、右CBの佐々木まで関根が、右SBのファンウェルメスケルケンまで大畑が前向きな長い矢印を出して一気に寄せています。さらに34'50~も流れの中で関根と入れ替わって左SHの位置にいた渡邊が佐々木まで、大畑が引き続きファンウェルメスケルケンまで前向きな矢印を出しています。

4-4-2の配置からSHが前向きに出て行くだけでなく、それに続いてSBまで(さらにその脇のCHや後ろのCBも)続いて前向きな矢印を出していくのは昨季までとの大きな違いです。川崎が前節の鹿島のロングボールを早々に入れようとするようなスタンスとは違うからこそこういうアクションが出来たという面も大いにあると思いますが、それでも簡単に受け身にならずに前に出て行く好戦的な姿勢を出せたことは良かったと思います。


浦和のビルドアップは4'55~の形がこの日のベースだったと思います。2CHはグスタフソンがヘソの位置、安居が左IHの位置という棲み分けで、右IHの位置に大久保か渡邊が入って来るという形でした。グスタフソンが後ろに落ちたりすることがありますが、その時には安居がヘソの位置に入って、関根が内に絞る、大畑が前に出て行くという流れでポジション移動がスムーズでした。

9'00にグスタフソンがCB間に下りた時に前に出て行った大畑へボールを飛ばしたところから高い位置でのスローインになり、そこから敵陣へ押し込んでの展開を作れていますが、ビルドアップにかける人数が4~5人で済ませられているので、ロングボールを飛ばした後にそのまま相手陣内で人数をかけて攻撃を続けやすかったのではないかと思います。

11'50~のビルドアップでも石原から抜け出そうとした大久保へ出したボールが引っかかりますが、渡邊が右IHの位置にいたのでネガトラの先鋒隊としてすぐにパスカットした三浦へ寄せてボールを奪い返し、川崎のゴール付近までボールを進めることが出来ています。自分たちの保持のバランスが良いからこそ誰かが前に出て行った時にそれに続いて前に出て行く形が出来ていて、それがネガトラへのスムーズな移行へとつながるというのは4-1-2-3という保持の形の中で最もバランスの良い配置の1つを取ろうとしている今季のスタンスが発揮された場面だったのかなと思います。

そして、先制点に至るまでの流れはIHが前に出て行く選手たちの第2陣として前に出て行くという形から川崎陣内へ押し込んだ展開を作ったところからでした。脇坂がグスタフソンとの接触で足を痛めたことで浦和の選手がボールを切ったので、川崎が浦和へボールを返した20'40~が流れのきっかけになります。

裏へ抜け出そうとした関根を目掛けて西川からロングボールを送って、そのボールを拾った橘田に対してIHの安居が突撃してボールを奪い、安居からの縦パスが引っかかってもそれまでの間にグスタフソンがポジションを前に上げていたことでその跳ね返りをひっかけることが出来ています。手前に人数をかけすぎないことで前に圧力をかけやすい状態を作ることが出来、それがネガトラの連続成功に至っています。

ネガトラの連続成功から川崎陣内へ押し込んだ状態を作り、石原も大畑も高い位置を取ることが出来ていて、石原のクロスをリンセンがヘディングし損ねたものの、流れたボールを大畑が拾い、大畑が腰をグイッと捻って鋭くボールを入れて渡邊が見事に押し込めました。

保持で適切なバランスの配置を取る、バランスが良いことで前に出て行く選手とその次に出て行く選手がいることで段階的に前向きなアクションが出来るのでネガトラが成功しやすくなる、ネガトラを成功し続けることでどんどん相手を押し込んでゴールに近づいていく、その流れでシュートまでいく、それがゴールへ繋がる、この流れは今季目指していた「試合を支配すること(dominate)」であり、フットボール本部創設以来目指してきた「前向き、積極的、情熱的なプレーをすること」「攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること」に当たるのだろうと思います。


飲水タイムの後からは川崎がビルドアップで大島と橘田の位置が変わっていました。ボールを散らすということについては橘田よりも大島の方が長けているのかなと思いますし、周りの選手からの信頼感も大島についてはかなり大きい(橘田が低いということではなく、大島が大きすぎる)ように見えました。

ボールの捌き役が大島になり、さらにその周辺に脇坂や家長が関わることが増え始めると浦和の2トップ周辺に川崎の選手が沢山いる状態になります。28'00~の川崎のビルドアップがそのような形から始まると、浦和はマンツーマンでついていくわけではないので下手に前に出ていけなくなってジリジリと川崎が浦和陣内へ押し込む時間が続きます。これが4分ほど続いた後に右サイドのファンウェルメスケルケン、家長に加えて脇坂が流れてきて、浦和の守備にスクランブルが発生し山田のポスト直撃のシュートまで至っています。

このシーンで言えば、関根の脇を取ったファンウェルメスケルケンにボールが入った時に入れ替わるように家長が下りていて、それを踏まえて大畑が関根に対して下がらずに家長を見るように促しているものの関根が下がってファンウェルメスケルケンに対応しようとしたことでズレが出来てしまったのかなと思います。瞬間的に2人でファンウェルメスケルケンを見たことによって家長に時間が生まれ、大畑が家長に出ざるを得なくなったことで脇坂の入って行くスペースが生まれたという流れでした。ただ、単純に家長が関根の死角から下りたことでフリーになったアクションが上手かったとも思います。


飲水タイム以降の川崎の保持に対して明確な対応が出来ていた訳では無かったので、ピッチ状態が悪くならなければ1-0のまま終わったのかどうかは分かりません。水溜まりのおかげでゴール前でのボールスピードが落ちて西川がキャッチできた場面もありましたし。

ただ、今季は前半がイマイチ、後半に何とか挽回という展開が多かった中で、試合の頭から自分たちの前向きなアクションが連続して先制することが出来たということについては素直に良かったと思いたいです。次も同じように自分たちから試合を支配しに行って、勝利を掴むところまで行きつくことを期待して終わろうと思います。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。


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