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【雑感】2024/10/23 J1-第25節 浦和vs柏
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普段はまず自分がどう見たかをそのまま書いた上で色々な人の意見とすり合わせるのですが、この試合はらいかーるとさんの企画シートに参加したことで現地にいながら骨太な解説を聴きながら試合を観たので、ピッチ内の事象についてはどこまでが自分の意見でどこからが解説に影響を受けたのかの境があまり分からない状態です。ただ、こうして自分が気付かないことをリアルタイムで指摘してもらいながら試合を観られるというのはとても有意義な体験でした。これについてはまたどこかで触れることがあるだろうと思うので、その話題は一旦脇に置いておきます。
浦和のここ数試合続いていた課題としてビルドアップでの手詰まり感、もう少し具体的に言うならばお互いが近接しすぎていることでプレーの難易度を自分たちから上げてしまっていることに加えて、その動き方が相手のプレッシングと噛み合いに行ってしまっているというものがありました。そして、グスタフソンがそこに入ると周りの選手のポジショニングが変わり手詰まり感がいくらか解消されたというのをヴェルディ戦で感じましたし、そうした属人性はどうしても変わらないのかというやるせなさを雑感で書きました。
この試合ではグスタフソンがスタメンに入り、試合序盤からビルドアップでのベースは4-2の形だったとは思いますが、柏の2トップの寄せ方と井上、ホイブラーテンの状況を見て早い段階でグスタフソンがCBの間に下りて噛み合わせを解消しているように見えました。2CHの役割としてはグスタフソンが6番でヘソの位置、安居が8番で左IHとも取れるような位置でスタートして、グスタフソンが下りれば安居がヘソの位置に来るというイメージだったと思います。
CHが1枚下りるというのはこれまでと共通していますが、グスタフソンが下りると決めた時(それ以外のリポジショニングでもそうですが)には結構なスピードで狙った位置まで移動していることと、スタート位置が2トップに近い場所なので柏のCHはそこまで人を付けて出て行かないスタンスだったことで、グスタフソンが下りて3vs2を作った時には高確率で柏はプレッシングに出るのではなく中央を締めて構える状態になっていました。
柏の方も浦和の最後尾が3枚になった時にはSHを片方縦スライドさせて噛み合せようとする場面がありましたが、グスタフソンがボールを持っている時にはこれを無効化させています。9'30~のグスタフソンはめっちゃうまいですね。エロいです。
この場面はグスタフソンがCBの間に下りてボールを受けたところから細谷に向かって突っ掛けていきます。この動きによって細谷をロックしてホイブラーテンをフリーにさせるというものですが、小屋松がそれを察してホイブラーテンに矢印を出そうとしています。グスタフソンはその小屋松の動きを察してホイブラーテンへのパスをキャンセルして小屋松の矢印を折ると、その隙に小屋松の奥で顔を出した大畑へパスを出しています。
グスタフソンが細谷に向かうのはホイブラーテンを含めた2vs1を作るもので、小屋松がそれを解消しようと矢印を出して2vs2にしたものの、グスタフソンが一拍ずらしたことで小屋松を足止めした上に大畑が参加して最終的には3vs2になりました。
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1人の能力でここまで出来てしまうのは凄いですし、これを他の選手にどこまで求められるのかは難しいですね。そして、こういうことをサラッとできてしまうので周りの選手もグスタフソンがボールを持てるなら、その場は彼に任せてしまって自分は別の場所へ意識を向けようという流れになっているのかもしれません。
ビルドアップの形が基本は4-2でSBが外レーンを担当していたこともあって、浦和の前線4人は中央3レーンに集結することが多かったです。これは昨季も見られましたし、レフポズナンでも見られたのでスコルジャさんが求めている形だと思います。そして、時間が経つにつれて大久保が右IHのような位置、松尾、渡邊、リンセンが前に3人で並ぶという形に落ち着いていったように見えました。誤解を恐れずに言うのであれば曺貴裁さんの京都がやっている4-3-3と近い配置のような気もします。配置の噛み合わせを図にするとしたらこのような感じでしょうか。
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ざっくり区切るとホイブラーテン、井上、グスタフソンvs細谷、木下というエリアと安居、大久保vs白井、手塚というエリアがあって、後者の方には渡邊が下りて加わることで中央の2つのエリアで3vs2が連続するというイメージになります。
そして、この試合で最もきれいに前進出来た21'10~のビルドアップはこの構図を活かしたものだったと思います。大久保が手塚の脇でボールを受けようとしたことで広がった手塚ー白井のゲートに渡邊が下りてきて井上からボールを引き出し、渡邊が落としたボールをグスタフソンが大畑まで展開しています。付け加えれば松尾が関根ー立田のゲートを通ってグスタフソンからボールを受けようとして走ったことで関根がそれに対応するためについて行き、それによって大外の大畑が空いています。グスタフソンとすれば関根がケアしていない方を選べば良いという状況で適切に大畑を選択できたとも言えそうです。
ただ、柏の方も自分をボールが越えて行った後にプレスバックする動きがどの選手も早くコンパクトな陣形を保ち続けていました。また、時間が経つにつれてグスタフソンが下りるのは前提というくらいの意識になってきたのか、先ほど例に出した場面のようにサヴィオか小屋松を前に出すことでグスタフソンが下りて3枚になっても嚙み合わせが良くなるようにするアクションが早くなったこともあって、効果的な前進はあまりなく決定機もほとんど生まれませんでした。
柏のビルドアップは春に対戦した時と大枠は変わっていないと思います。2CB+2CHが2-2あるいは3-1の形を作る、低い位置であればGKの松本がCBの間に入って3-2の形になるというものでした。外レーンはSB、内レーンはSHが担当というのも同様ですね。
ビルドアップで2-2から3-1に変形する時の動きは特に決まっておらず、白井が下りても良いし手塚が下りても良い、下りるのもCBの間でも良いし左右どちらか斜めに下りても良いというものだったので恐らく「どのような形でも良いから3-1にする」という抽象的なルールでやっているのだろうと思います。これは以前岩瀬健さんが柏で指導していた時にもそういうオーダーをしたことがあると話していましたし、古賀、白井、手塚はいずれもレイソルユース出身なので、クラブとして育成年代から通底しているものなのかもしれません。
浦和の方は高い位置では大久保が2トップと並ぶようなポジションを取って牽制する場面がありましたが、柏とすれば手前が詰まったとしても細谷、木下、ジエゴ、関根のどこかに放り込めば跳ね返されずに近い場所へボールをこぼしてくれるという手段があるのでプレッシングに来ないのであれば手前から、出てくればロングボールという使い分けはされていたと思います。ただ、手前から運んでいくときにもう少しそれぞれが相手を引き付けられると前線の選手に余裕が出来そうだったのでそこは勿体なかったなと思いますし、ボールの移動がパスばかりだったので、浦和の方はそこまである程度陣形を保ちながら対応しやすかったのかなと思いました。ただ、手塚と白井というパスが上手な選手がCHにいるので、そういう傾向になるのは仕方ない気もしますが。
後半は柏のチャンスから始まりました。46'30~はまず立田が渡邊の脇から運んで浦和陣内へ侵入し、一旦ボールが後ろに戻ってくると今度は古賀がリンセンの脇まで入って来て、上がって行ったジエゴへパスを出してチャンスになっています。後半の開始から柏はビルドアップで立田と古賀が前半よりも深めにドリブルで侵入していったのでそのような指示があったのかなと思いましたが、それ以降の場面ではそこまで頑張ってグイッと出て行くといった印象は受けなかったので状況的にそうなっただけかもしれません。
試合は浦和が選手を交代するごとに動きがついて行ったのかなと思います。67分に大久保、リンセンに変えて関根、チアゴを投入すると、関根は大久保のように右IHになるというよりは純粋に内側に絞ったSHという感じで前線4人が1セットでゴールに向かっていくというイメージだったかなと思います。リンセンからチアゴに変わったからというのもあったのかもしれませんが、ロングボールが少し増えてより早めに奥を狙っていくようになった印象です。
そうなると保持と非保持の入れ替えが増えてくるので徐々に試合がオープンな状態に変わっていきます。そして、75分にグスタフソンと松尾に代えて原口、中島が入ったところでスイッチは完全に切り替りました。(このタイミングで中島がトップ下、渡邊が右SH、関根が左SHになっています)原口、中島がどちらも多少アバウトでも自分のボールにして、そこからドリブルでボールを動かしてくれることによって、引き続きオープンな展開ではあるものの、ロングボールの応酬ではないため彼らの動きに合わせて周りがポジションを取りなおす時間があったのは大きかったと思います。
柏の方は80分に木下、手塚に代えてフロート、熊坂を入れましたが、こちらは選手を入れ替えることで脚をリフレッシュしつつも同じスタンスを継続するという感じだったでしょうか。というよりは、柏はチーム全体として各ポジションに同じようなタイプの選手が多いので、誰が出ても同じようにプレーできるという強みはあるものの、試合の雰囲気をガラッと変えるということはしにくい編成だなと思います。
ビルドアップのところで軽く触れましたが、上手にボールを捌けるCHがいることでパスで繋ぐことの前提がかなり強いのかなと思いますし、それは相手からするとボールの移動をパスに絞って考えて良いので判断の負荷が減ってしまうということにもなるのかなと思います。ドリブルしたかったらパスしろ、パスしたかったらドリブルしろ、という言葉をどこかで聞いたことがあります。この言葉の本旨としては自分たちのやりたいことがあるとしても、相手にそれを警戒されたら難易度は上がる訳で、その難易度を下げるためには相手に別のことを警戒してもらう、そのためにやりたいこととは違うことも混ぜる必要がある、ということですね。
グスタフソンを入れたことによって、たとえチャンスが多くなかったとしてもチームが整った状態でプレーして試合を壊さずに進めたところから、終盤の疲れてくる時間帯で原口や中島といったカオスな状況で力を発揮しやすい選手に切り替えたスコルジャさんのゲームプラン、采配は納得感の高いものでしたし、これこそがスコルジャさんの得意なことでもあると思います。最後の最後にPK獲得するまでゴールにならない、決定機がなかなか作れないというのはまだまだ残念だし厳しい現実ですが。
それでも、8月に中止になった時には想像していなかった状態で迎えた「決戦」を勝利することが出来たのは本当に良かったですね。試合前に回ってきてくれたゴール裏グループの青年曰く、ヴェルディ戦の後にお互いに全力でプレー/サポートすることを誓い合い、それを選手はチームにゴール裏はサポーターへ共有するように話をしたとのことでした。その言葉に違わないサポートをスタンドは試合前からし続けていたと思いますし、76'57~に中島が中央でボールを受けたところを後ろから手塚に倒されながらもボールをキープして石原につないでクロスが入るといった流れがあったように、終盤に行けば行くほど浦和の選手たちが体を張ってボールをキープし、繋ごうとする姿勢が強く見られました。
スコルジャさんがマジカルスタジアムと形容する「本気の埼スタ」は本当に素晴らしい雰囲気でしたが、そこまでしないと勝てないのか、そこまでしないと厳しく闘えないのか、という思いと、相手も勝とうとしているのに本気を出さないで勝とうなんて甘いわ!という思いの両方があります。
先日浦レポの記事の中で轡田さんが「効率的」という言葉が招きやすい勘違いについて触れていましたが、「自分たちの体力は温存しつつ、相手の体力は削りたい」という思惑がシーズン移行の話題でJリーグ公式が出した動画の中で話されていたように、楽が出来るなら楽をして勝ちたいという考え方が前提になってしまっているのかもしれません。僕も仕事をしている時にはなんとか楽に済ませられないかとしょっちゅう考えます。
ただ、普段から全力を出さずに済ませることが習慣になってしまうと、ここぞの場面で全力を出し切ることは難しくなってしまいます。頭の意識としては全力のつもりだけど実は60%くらいしか出せていないということもあります。
この試合の熱量をスタンダードにするのは簡単ではないと思います。ただ、そうしないと勝ち続けるチームにはなれないのではないかとも思います。昨年、神戸の大迫がゴールを決めた後に目がバキバキになっていたことを揶揄するような言葉を見かけましたが、それくらいの熱量で闘っているからこそ彼はここぞの場面でゴールを取れるのではないかと思ったりします。
ヴェルディ戦の雑感でも論理と感情は掛け算ということを書きました。僕はこうして論理のようなものを並べてあれこれ書いていますが、前提として勝ちたいという感情がものすごくあります。本当に勝ちたい。だから僕はチームが「こうすれば勝てるはずだ」と信じて試合に臨んでいる戦術を理解してサポートしたい。だから選手たちも強く前向きに闘い続けて欲しい。
1つの勝利で一気に順位が上がりましたが、それは1つの敗北で一気に順位が下がる可能性もあるということです。今年は何度もこれが良いきっかけになるかもしれないという勝利の後に躓いてきています。春先の福岡戦の後のFC東京戦も、夏の磐田戦の後の湘南戦も、そしてスコルジャさんが再就任して初めて指揮を執ったG大阪戦の後のFC東京戦も、引き分けですらなく負けてしまっています。
今度こそ流れをかえましょう。もう今年は上を目指すことはできないけど、早く数字の上でも残留を決めて来季に向かってポジティブなトライが出来る状況にしましょう。
今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。