黒く潰れた地図記号
地図を広げて此処に来たはずなのに
帰りの途上で鞄に見当たらない
おおよその方角は合っているはず
だが日が暮れるのが早い
まえにも後ろにも人影はない
この景色に見覚えもない
夕暮れに沈んだ路面が陰の底に傾いて
一歩を踏みしめる足が重い
下腹がきゅっと固くなる
打開策を練りたいが乱れる息のせいで
頭の中が平面になっていく
失くしたはずの地図は真っ黒に
塗りつぶされて自分の形すらあやふや
こめかみに響く鼓動が
なんで、という声とない交ぜになって
靴音を呑みこみ ずぶずぶと
地図記号に落としこめられていく