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和風創作フレンチ
2024年10月23日 13:50
先週、大変遅ればせながら梨木神社へ萩を見に行った。見頃を過ぎていたからか、参道の両側に萩の生い茂る境内は人もまばらで、かえって一人、ゆっくりと万葉の歌に想いを馳せることができた。秋萩におきたる露の風吹きて落つる涙はとどめかねつもいい歌だ。前半は自然の描写、後半はそこへ自らの心と身体を、重ね合わせている。と、言ってしまえばそれまでなのだが、それが僕の心に、こんなにも美しい情景を描き
2024年7月30日 12:03
知ら「え」ぬ、苦しきもの「そ」、端々の言葉遣いに古風な趣を感じるものの、それ以外は今の私たちが読んでも、なんら違和感なく内容がスッと頭に入ってくるような、ストレートな歌だ。前半の姫百合の描写が序となり、おそらくは詠み人本人のものであろう、「知らえぬ恋」へと繋がる流れも、断絶をまったく感じさせない自然さで、二つのイメージが渾然一体となっている。夏の野の「繁み」。それは夏の盛りを意味
2024年4月12日 21:09
大伴家持は746年から5年間、越中に赴任していた。初夏のある日、国司の役人石竹(いわたけ)が、同じ役人たちを邸に招いて開いた宴会に、家持も呼ばれていた。石竹は百合の花でかづら(髪飾り)を三つ作り、高坏に据えて賓客に捧げたという。家持はこの時に歌を詠んでいる。都から離れた、いわば出張先での歓待の席。そこへさらなる心配りで、宴に花を添えてくれる岩竹。家持はそのやさしさを大切に受け取り、かづらをほ