追跡監視
俺の仕事は、
日本の先端技術を守る事。
特に半導体の国際競争は激しい。
その中でも、
日本は基礎素材や
製造装置、テスト機器の分野で
世界のトップレベルにいる。
その技術は、日進月歩し
常に世界から狙われている。
それらの技術は軍事的にも
重要な位置を占めており
流失すると一民間企業の損失に
止まらず、自国や同盟国の国防にも
大きな損失を与える。
その先端技術の開発で
特に重要な人物を全て
監視するのが
我々の任務である。
俺はその中の
ある一人を担当していた。
困難であるが、
やりがいのある仕事だ。
研究室から退所し
自宅に帰りつくまで
の彼の行動を
雨の日も風の日も
どんなに遅くなっても
毎日監視している。
会話した人物や会話の内容
寄り道した場所などのデーターを
逐一本部に報告している。
本部はそのデーターを分析し
情報の流失が無いか監視している。
ある時、彼を監視しているのが
自分だけでない事に気付いた。
これは一大事件である。
政府は、この背後関係を
徹底的に調べることにした。
俺は、任務から離れ
背後関係の調査に向けられた。
なかなかうまく立ち回るので
困難を極めたが
ついに突き止めることができた。
黒幕のマンションに捜査員が
突入して、犯人と思しき女性を
取り押さえた。
彼女は、同じ研究所の女性研究員で
彼に片思いをしていたようだ。
結局ただのストーカー行為であった。
事件は一転、秘密裏に解決した。
俺は元の監視業務に
復帰する事になった。
しかし、
ここで困ったことが起きた。
犯人の使っていた
テントウムシ型ドローンの事が
忘れられない。
俺は、ハエ型ドローンで
地味で暗い嫌われ者だ。
こんなに可愛い子を
追いかけたのは
はじめての経験でドキドキして
毎日が楽しかった。
初恋かもしれない。
今は毎日が抜け殻になり
任務もおろそかになりがちだ。
以前の様なやりがいも
やる気も無くなっていた。
「主任、26号ハエ型ドローンの
挙動がおかしいです。
組み込みAIが誤動作しているようなので
一度回収、修理します。」