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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第316回 君が流す最後の涙を(ダンヌンツィオ)

Ho terso con ambe le mani
l’estreme tue lacrime, o Vita.
L’amante che ha nome Domani
m’attede nell’ombra infinita.
(君が流す最後の涙を、私は両手で拭い去った。ああ、人生よ。
 明日という名の恋人は、無窮の陰の下で私を待っている)
 
 イタリアの愛国詩人、ガブリエーレ・ダンヌンツィオ(Gabriele d’Annunzio, 1863~1938)の「賢者の言葉は何を語っているのか(Che dici, o parola del Saggio)」の最終連。賢者はアマランタに生への希望を説くが、アマランタは自らの死がより甘美な未来を導くと感じている。
 ダンヌンツィオはアドリア海に面する港町の富裕な地主の家に生まれた。早熟の天才として知られ、16歳で擬古体の処女詩集を発表する。ローマ大学在籍中に文学活動に励み、社交界の寵児となった。30代半ばで下院議員に選出されたが、借金苦からフランスに逃亡。そこでドビュッシーと親しくなり、歌劇「聖セバスティアンの殉教」が生まれた。
  第一次世界大戦の開戦とともにイタリアに帰国し、志願兵として参戦する。戦闘機パイロットとして前線に赴いたが、事故で右眼を失明。戦後もファッシズム政権から国民的英雄として栄誉を贈られた。
 


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