「ジレンマ」
今に限った話ではないが、週に1回は温泉に行くと決めている。夏であろうと、あまり関係なくいくタイプである。
そんなこの前も、普段通り温泉にいこうと思い、爆音で音楽を聞きながら施設の中に入った。券売機で入浴券を買い、受付に持っていき、さぁ今から入ろうと思った矢先、突然音楽がやんだ。
「あれ、またイヤホン壊れたかな?」と思って、携帯をとり出した。いや、故障ではなかった。地元の異性の友達から着信であった。突然の連絡に、一瞬おどろいた。
「はい?」おそるおそる着信に出る。
「やっほ〜。何してんの?」
「いや、今から温泉に入ろうと思って。」
「あたしより温泉の方が大事なの?!」
「いや、タイミングが悪いっしょ。」
「じゃあ今週どっかでかけてきて。」
「おけ。」
切った。とりあえず、温泉に入って、その日は身を休めた。
翌日、電話することにした。夜、空いてそうな時間を見計らって、電話をかけた。
「もしもし。」
「あ、おれ。今日は温泉入ってないから。笑」
「あ、そう。笑」
「ところで、なんで突然電話かけてきたの?」
「いや、なんか最近元気かなって思って。ほら、この前の会、あんま元気なかったでしょ?」
僕には地元に帰ると、定期的に集まるグループがある。6人いる。地元で働いているものもいれば、県外に出て働いている人もいる。だからこそ、年に会っても1〜2回ほどなので、たまには会おうという話によくなる。
しかし正直この集まりに対して、むずかしいなとも思ったりしている。
住む場所が変われば、生き方も変わり、考え方も変わっていく。人は身を置く環境に左右される。ゆえに、自身を形成していく点においてどこで生きていくかが重要であると思われる。
当然、どの人と会うかということも今後の人生に影響する。限られた時間の中で、使える時間も決まっているので、誰とどのくらい会うかは本当に大事なのである。
その点、昔の友達、特に地元の友達やグループによくあるのだが、過去の話をしがちである。あの時のお前はこうだったとか、文化祭の時の君はどうだとか。
それ自体はあっていいと思っているが、自分のグループの場合、いかんせん頻度が多すぎる。近況報告をすることもあるけれど、百発百中で昔話にたどり着き、同じような話を毎回している。
君は人生進んでんのかい、昔にばかり生きてやしないかいと思ったりすることもよくある。
だからあまり参加する意義を感じないことが多い。ほんとにたまにするぐらいだったらいいのだけれども、毎回されると飽き飽きしてしまう。
かといって頭ごなしに言うわけにもいかない。だとすると、こちらから身を引いた方がいいという結論に至るのである。
僕個人としては、未来に向けて今を生きていたい。過去の話は、生ききった後でゆっくりすればいいと思っている。そんなことを地元の異性の友達と話したのであった。
しかし同時に、むずがゆいなと思うこともある。残りの人生の中で、自分が生きている中で、いったい何回ぐらい顔を合わせることができるんだろうって。
そう考えると、今のグループに会うか会わないか、ジレンマに挟まれているような気もしている。生きるってむずかしいね。