
意-味
俺は吐き出した、
俺の吐き出した、
俺が吐き出す、
言葉たちは、
吐き出された瞬間に、
死ぬ、
その言葉たち、
言葉たちをオマエは食らう、
一語一句覚えてるなんてそりゃオマエは墓掘りだ、
従順な墓掘りだ、
差延を知らぬ、
過去を食いつぶす墓掘りだ、
過去にすがる墓掘りだ、
言葉を貪るオマエの腹は底がない、
何も残らない、
過去として記憶される、
オマエはたどり着けない、
俺の言葉にたどり着かない、
言葉は吐き出されたときにすでに朽ちる、
オマエは生の言葉に触れられない、
常に死ぬ、
言葉は常に完結しない、
俺が死なない限り、
言葉は死に続ける、
声を聞け、
その場で消えゆく声を、
声は残らない、
言葉にして書かなきゃ残らない、
オマエは書かない、
貪るだけだ、
貪って残さない、
綺麗にたいらげる、
それでいい、
何も残さなくていい、
オマエのなかに残らなくていい、
残ってたまるか、
俺が吐いて死にゆく、
いまに死んだ!
また死んだ!
また!
また!
ほらまた!
残してたまるか!
オマエが食らうのは屍姦だ!
蝕むのは犯される死だ!
オマエは生にすがれない!
あるのは言葉の死だ!
オマエは俺の声に耳を貸さない!
言葉だけを啜る!
音を立てずに啜る!
何も考えずに啜る!
声には何も手を出さない!
オマエにその手はない!
オマエには言葉を啜る口だけしかない!
口の聞けない口だ!
オマエは何も俺のことはわからない!
わかってたまるか!
わかるもんか!
わかるハズがない!
ほら!
また死んだ!
きこえるか?
少女の啜りが?
そんなものあるわけがない!
オマエには耳がない!
聞く耳がない!
あるのは蝕むことしかできない胃袋を繋いだふてぶてしい口だけだ!
オマエは言葉を貪ることしかできない!
何も残さない!
取り込むだけだ!
後には何も残らない!
墓掘りは刻み続ける、
言葉を、
身体へ!
刻みつづける、
律儀に刻みつづける、
執拗に刻みつづける、
身体はどこだ!
どこから身体だ?どこまでが身体か?
わかりっこない!
俺の吐き出した声が!
墓掘りの身体に成りかねない!
オマエはむしばむ!
墓掘りはそんなことしない!
してたまるか!
俺にはない、
一貫性がない、
あってたまるか!
オマエは一貫性に縛られている!
じゃなきゃオマエが成りたたない!
成り立ってたまるか!
オマエを全力で壊したい!
崩したい!
崩して並べてまた崩したい!
オマエは何も残らない!
残してたまるか!
オマエは俺の中では、
何も残らない、
何一つ、残りゃしない、
オマエには言葉を貪る、
口一つしかない、
言葉は無為だ、
死だ、
言葉は死ぬ、
何一つ物を言わず、
何食わない顔で、
明日も知らず、
虚無も知らず、
嘘も知らず、
どんなことも知らず、
知ることも知らず、
とりあえず死んでいく、
オマエは貪る、貪って、
何も残しやしない、
オマエは言葉を蓄えて、
何も残しやしない、
オマエは膨らむ、
無闇な人びとの言葉に、
後先知らずに膨らむ、
オマエは歓待される、
無邪気な人びとに、
オマエも貪られる、
人びとは飢えている、
恐れている、
弱虫だ、
オマエは犯される、
オマエは何者でもない、
人びとは名付けたがる、
俺は墓掘りに挨拶をした、
墓掘りは微笑んだ、
弱虫な、
ひ弱な、
青臭い、
包茎の砲台たちが、
十二時の方向を向いたまま、
よだれを垂らして、
俺を見つめている、
静かに、夜は過ぎる、