Double Albumはお好きですか?/その弍
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LP1枚でもクオリティを保つのは難しい。
ましてやDouble Album(2枚組)で維持するなんて殆ど奇跡に近いです。
当然、完成度には差がありますが、
「盛りだくさんでバラエティ豊かな」2枚組につい惹かれてしまいます。
そこで、これまで聴いたDouble Albumを、ひたすら身勝手で偏った視点で紹介します。
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前回(その壱)は、こちらの6アルバムを紹介しました。
ワクワク、ニヤニヤしながら聴ける•••
はずの2枚組ですが、意外と辛口になってますね。
さて、今回(その弍)は、2枚組の中でも特に思い入れがあるThe Whoのこのアルバムをご案内します。
■Quadrophenia - The Who
The Whoは不思議なバンドです。
僕が子供の頃(70年代半ば)、彼らの日本での知名度は
「ビートルズやローリング・ストーンズ」 > The Who > 「キンクスやスモール・フェイセズ」
みたいな感じがありました。
ピート・タウンゼント、ロジャー・ダルトリー、キース・ムーン、ジョン・エントウィッスルと錚々たる面子で、モッズバンドの代表格で、ロックオペラ『Tommy』が評価されて映画にもなって、ロック史への貢献度も高いにも拘わらず、何故か日本での人気はイマイチ。
今みたいに情報が簡単に入手できなかったこともありますけど、
本当に不思議なバンドです。
当時の知識としては、兄が持ってた『Odds & Sods』と、それに釣られて買った『Live At Leeds』の曲だけ。このライブアルバムは名盤と言われてますが、観声が抑え目に収録されているので、人気のないバンドみたいで寂しいというか物足りなさを感じてます。
後はエルトン・ジョンが『ピンボールの魔術師』をカバーしてるといった程度。
今思うと笑ってしまいますが、The WhoはLed Zeppelinみたいなハードロックバンドだと思ってました。
●フェーズ1 ・・・手に入れる
この『Quadrophenia(四重人格)』のリリースは1973年ですが、買ったのは1977年頃の中学生の時でした。
アルバムの存在を全く知らない状況で、「とにかくThe Whoのカッコいいレコードを買おう」と思い立ち、中古レコード店で偶然見かけたアメリカ盤(もちろん中古盤)を購入しました。
これがいけなかった・・・
当然、このアルバムがコンセプトアルバムということも知らず、モッズもパーカーもスクーターもロッカーズとの「ブライトンの暴動」の知識も皆無。
しかも、全曲初めて聴く曲で、中古盤のため分厚いブックレットも付いてなくて、日本盤なら入っているライナーノーツの解説も歌詞も訳詞もない。
「無い無いづくし」のMax状態ですから、聴いても理解できるはずがありません。
「全然ハードロックじゃないじゃん・・・」と、大ショックを受けた覚えがあります。
それでも、少ないお小遣いをつぎ込んで買ったわけですから、来る日も来る日も聴きまくっているうちに、徐々にメロディが耳に馴染んできて、『The Real Me』『5:15』『Sea and Sand』『Doctor Jimmy』あたりが好きになっていきます。
少しプログレを聴き始めた頃だったので、テーマとなるフレーズ(メロディ)が至る所に散りばめらている点に、何となく組曲的でコンセプトアルバム的なモノを感じ始めてました。
ここまで来ると「こっちのもの」で、それ以降は聴くたびに好きな部分が増殖していくばかり。
2枚組のボリューム感をプラスに感じる自分がいました。
【ROCK教訓1】---------------
「石の上にも3年」「待てば海路の日和あり」ではないですが、
『Rockは根気』ということを悟りました。
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そうこうするうち『Who Are You』がリリースされ、その直後にキース・ムーンがオーバードーズで亡くなったことを知ります。
ラジオの新譜紹介で数曲聴いて好印象を持ったので、友人のK君のお兄さんに頼み、10%ぐらい割り引いてくれる大学生協で買ってもらうことにしました。
●フェーズ2・・・買い替える
『Who Are You』で割引購入の味を占めた僕は、『Quadrophenia(四重人格)』もライナーノーツを読んで詳しく知りたいと思い、再びK君のお兄さんに助けてもらうことに。
これが大正解だった・・・
まず、手にした瞬間、「やけに重いな」と感じました。
そうです。あの写真でストーリーを綴った分厚いブックレット(表紙を含めて42ページの大作!)のせいです。
このとき初めてブックレットがあることを知り、「こんな大事なモノ無しで聴いていたのか!」と愕然となります。
ストーリーを理解するのに重要なだけてなく、イギリス庶民の文化、社会背景を垣間見ることができる点でもとても重要だと思ってます。
例えば、バタシー発電所、モッズとロッカーズ、ファッション、フィッシュ&チップス、ソルト&ビネガー、ジェリード・イールズ、Take awayという表現、ハマースミス・オデオン、ウォータールー駅、ブライトンの街とピアなど、後にイギリス文化好きになるきっかけ満載の写真集でした。
また、福田一郎氏が書いたライナーノーツや、訳詞やジャケットの内側に書かれたストーリーの翻訳もとても役立ちました。
結果、アルバムとの距離が一気に縮まり、「最高じゃん、このアルバム」
と思うわけです。
【ROCK教訓2】 ---------------
コンセプトアルバムでは顕著ですが、歌詞からその国や時代背景を知ることができます。
『Rockは社会学の教科書』ということを悟りました。
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ここから、The Who好きへ邁進します。
ただ、彼等のレコードは廃盤が多くて、初期のビートグループ時代のアルバムを知るのは随分後になってからでした。
●フェーズ3・・・映画を観る
高校へ入学する頃には『Quadrophenia(四重人格)』はThe WhoのTopアルバムになっていました。
この頃までは僕の周りにThe Who推しの友人は殆どいませんでしたが、1979年にこのアルバムが映画化されたことで少し日本での立ち位置が変化した様に感じます。
『さらば青春の光(Quadrophenia)』です。
これ程苦労して攻略したアルバムが、まさか映画になるなんて。
信じられませんでした。
『そんなに凄いアルバムだったの?』と驚きましたが、全英、全米チャートで最高2位のアルバムらしいので、あり得るのかな。
(日本のチャートはどうだったんだろう⁈)
映画はもちろん観に行きました。
内容的には『こっ恥ずかしい青春映画』でしたが、アルバムのコンセプトを再認識でき、60年代を感じられたという点では大きな意味があったと思います。
フィル・ダニエルズが演じたJimmyのキャラは好きになれなかったかな。
Stingは主役並みの存在感だった。
やっぱりレスリー・アッシュ!良かった!
サウンドトラックも良かったです。
オリジナルアルバムからの曲も、サントラ用のナンバーも、当時のダンスナンバーも。
『The Real Me』 はドラムとベースがメチャクチャカッコ良くて、そこに絡むギターがぶっ飛んでます。
サントラ盤に収められたクロスフェードしないバージョンを貼っておきます。
『Four Faces』はサントラ盤のみの曲。
ポップなのにチョット強引なメロディのBridge (Cメロ) が、The Whoらしくて大好きです。
Booker T. & The MG'sの名曲『Green Onions』は渋いですよね。ギターのカッティングに痺れます。
映画によって益々ポピュラーになった
The Whoと『Quadrophenia(四重人格)』は今ではモッズのシンボルでバイブルですね。
さて、アルバム評価ですが…
偶然の成り行きで手にした『Quadrophenia(四重人格)』は、アレヨアレヨと言う間に、僕の中での存在感を増して行きました。
The Who の特徴である強引なメロディと展開もこのアルバムでは思う存分聴けます。
また、曲のアレンジがそれまでのアルバムとは比べ物にならないほど質が高く、サウンドに迫力があります。
『Tommy』や『Who’s Next』も良いアルバムですが、何となく音が軽いんですよね。
でも『Quadrophenia』は曲にバリエーションがあって飽きません。演奏もメリハリがあり、アルバムを通してグイグイ迫ってくる感じが堪らなく良いです。
これだけのモノを表現するためには、やはり2枚組で正解でさたね。
ほぼ満点の出来です。好きです。最高です。
◎僕的『スキ度』: ★★★★☆
(最高は★★★★★の5つ)
あくまでも私的な話ですが…
The Whoの位置付けも完全にストーンズを上回るモノになってます。
僕は、この2枚組アルバムによって、ZEROから知ることの楽しさを知りました。
英国庶民の文化(ロイヤルファミリーやアフタヌーンティーみたいな華やかなモノではない文化)も好きになりました。パブランチとかフットボールとかマーマイトなんかも。
そうやって手に入れた『喜び』は一生モノになっています。
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さて、今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。