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他愛のない備忘録


「あなたは、なんで来たの?」

どきり、とした。
そのまっすぐな瞳に、言葉を濁さない言いように。

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昨日からとあるシェアハウスでお世話になっている。
「パーマカルチャー」や「多世代共生」をコンセプトに運営しているのが特徴で、一般的なシェアハウスとは違う、どこか気になる存在ではあった。


このシェアハウスのことは3年前から知ってはいて、この3年の間に接点のある友人が増え、いろんな縁が重なり、気づいたらここにいた。


滞在期間は1週間。
何かを知るにはほんの入り口しか見れないだろうけれど、行ってみたいと思った。


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冒頭の言葉は、滞在初日の夜にルームメイトが言った言葉。

みんなが集まって自己紹介をするはじまりはなく、それぞれ夕飯の支度をしながら出会った人から挨拶をして過ごしていた。


たまたま居合わせた幾人かが集まり、他愛のない会話をしていた時に投げかけられたー「あなたは、なんで来たの?」


どきり、とはした。
でも怖くはなかった。


頬杖をついてこちらを見つめる眼差しは、はじめて立つ子鹿を見つめる親鹿のようだった。


「なんで、かは分からないです。なにかピンと来たから。紹介されたからでも、何か目的をもって知らなきゃでもなくて、自然な流れだと思ったから。」


うまく言語化できないけれど、みたいなことも付け加えたと思う。


明確な理由は説明できない。
でもそれこそが理由だと思った。


理由や答えのようなものは、後から分かるもので、直感だけを信じていい。
むしろそこで信じた直感が何か新しい扉を開く鍵だと感じた。


そしてたぶんここでは、分かりやすい言葉で無理に説明しなくて大丈夫。そんな安心感もあった。


「あなたは直感で生きる人?」

また不意を突かれた。

彼女の言葉は、彼女に対する反応としての言葉ではなくて、私が私の言葉で話さざるを得ない問いだった。

「直感で生きている、けれど時々それが塞がってしまう人だと思う。」



どの答えに対しても彼女は大きな反応を見せなかった。
良いとも悪いとも言わず、「ふーん、そう。」と優しい笑みのまま言った。


その後も石に絵を描いた私の作品を見て「石の魂が見える人?」とか、(「自分では分からない。石の声が聴こえる人と言われたことはある」と答えた。)
唐突に「あなたは自分の闇をみたいと思う?」とも言った。


言葉を言葉のまま受け取っていい安心感があった。
その分、日頃相手の反応や言い回しに敏感になっている自分にも気づく。



「闇の中の瞬く光という言葉が好きです。」
と答えた。

「ずっと、闇の真ん中に触れないようにして生きていた。闇を真ん中に残したまま体だけが蝕まれていった。でもいちばん暗いところに触れたらそこに光があった。いろんな人のお陰でそこに触れられた。」
「だから闇だけを見たいとは思わないけれど、闇も見たいと思う。そこに自分がいたから。」



自分の中にイメージがあって、それを思い出しながら自然と出た言葉が嬉しかった。


ふ〜ん。と言いながら、彼女は最近出会った言葉をいくつか教えてくれた。


「あなたは自分の感情を言葉にできる人?」
と彼女は続けた。


「以前よりはずっと。」
「私の中は"怖い "の感情がいちばん大きくて、"怒り"がいちばん少ないと思う。」
「本当はここに来るのも怖かった。でも最近はその"怖い"は自分の願いを塞いでいる"怖さ"だと感じるから、その中にある"したい"に飛び込むようにしてみてる。そしたらここにいた。」


「 呼ばれたんだね〜。」と彼女は言った。


「いい夜だった、ありがとう。2日ほど(シェアハウスを)空けるけど、1週間いるならまた会えるね。」





やっぱり来てよかった、と思った。




いつか振り返った時、これからの1週間はどんな風にに見えるだろう。





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