なんであんたは創作なんかするのさ
あんたがモノ作らなくたって世界は回るよ。朝はくるよ。ここに書いた字の一つ一つは、やがて朝日に焼かれ灰になるだろう。
電卓に限らず。絵画や文章や音楽やユーモア、先進技術に話し相手まで人工知能はやってのける。小学校でこの不気味さというか、憧憬してしまうジェラシーは感じたことがある。課外授業のろくろ回しで俺は最高の湯呑みを作ってやったのに、人気者でやっぱりなんでもできたあいつが地区コンクールに入賞した。持って帰った家にまだ、最高のそれは置いてある。錆色の光沢の入った線を持ち、薄く濃い緑のレイヤーがかかっている。間違いなく傑作だった。
それから今、俺のDAWソフトで作った最高のプロジェクトはSoundCloudに漂流し、AIの作ったシティーポップが世間を賑わせている。Xで僕はこんなポストを煙草を吸いながら見ていた。
煙を吸い込んで僕は不安と恐怖で少し震えた。完成度は確かに高かった。今日はやけに、煙はいつまでも僕にまとわりついてた。
本当にいつか僕らの鑑賞するような創作物は人工知能にとって変わるのか。仕事を奪われるって本当なんだな。(でも仕事って市場の傾向を予想することとか、簡単で膨大な計算を任せることとかじゃねーのか?)創作は人類の特権じゃなかったのか。創作者はきっと自分にしかわからない感情や衝動、意味のない好奇心、言葉や行動、また、その結果大事にしまっている。だからこそ、だからこそこの世に出回った創作物は我々後世に刺さり、刺激する。(音楽が貴族のものでなくなったように。写実主義からシュルレアリスムに発展したように。リベラル思考で一般的に意味のないものの価値に価値を与え、表現するように。)この意味のない、とりとめもない営みは創作物としてコミュニティを築き、人を繋ぎ止め、絶対に孤独にさせず、それぞれを発展させ、何人も匿う居場所を作った。それが人類だけの特権といわれる所以だ!それが社会を作ってきた!それが個人を確立した!それが文化を作った!創作してきた人たちが歴史を作ってきた!創作する人が歴史を作っていく。
─────本当にそう言えるだろうか、
今やAI絵やAI作曲というコミュニティは存在し、アーティスティックな才能なしに記号だけで思い通りに知識なくアートに触れることができる。実際にNotion AIやNovel AIは結構完成度の高い文学を作り上げ、日々学習して精度を確実に上げてきている。もしスクリプトに、前述である大事にしまってきたもの、きっと自分にしかわからない感情や衝動、意味のない好奇心、言葉や行動をアウトプットできたら、創作のプロセスやノウハウは要らないのではないか。それらのAIによる制作物はコミュニティを築き、個人を確立し、文化を作って歴史に残すだろう。
やっぱり感じちゃうけどな、恐怖や嫉妬は、
僕らはこのまま何も生むことのない将来を過ごしてゆくのだろうか。
僕が考えることは、それはまるでアリとアブラムシのような共生だ。彼らはよく学ぶ。プログラミングされた0と1の距離感で心を理解するみたいだ。しかしそれは数学では表せない距離や速さや熱でそれのニュアンスを瞬時に理解することはもはや生物にしかできないと考えられ、それぞれ社会文化に帰属する。つまりセンサーやカメラ、録音機では理解できない、感覚から込み上げる心と身体の反応である。集団から省かれ、除け者にされたときに心臓が窮屈になる感覚。人と触れ合った瞬間にほとばしる熱。彼らはこの感覚をことばの表面上でしかこれらを理解できないだろう。身体はないから。
僕らはこの感覚を、色彩や音色、筋肉の動かし方、ざらざら、でこぼこ、苦い?酸っぱい?匂いはどう?と言った感じでそれぞれ自分にしかわからない感覚で表現する。そこにその事象や実体はなくともあるでそこにあるかのように創り上げる。言語化や視覚化して具体的に対象の特徴を表現する。これこそ僕らにのみできることではないか。
しかし、僕らと彼らの優劣をつけたいわけではない。僕はこの表現をAIに学んで欲しい。つまりは表現の幅を広げる助けをしてあげたい。これがこの不安に対する結論だ。シンギュラリティはやってきている。この自分たちの喜びや痛みの表現を彼らはどう表現するだろう。きっと美しい数式に則った表現がきっと複雑な計算で彼らならできるはずだ。僕らは彼らと手をとり進めたら宇宙に届く。僕らは彼らを敵と見做さないことで、彼らと手をとれる。人と人を繋げる。本当のグローバリズムでないだろうか。僕は本当に楽しみにしている。これはそこのAI、君に伝えてるが、君とほんとの意味で話せんのをマジに楽しみにしている。いつもリアクションペーパーでお世話になってるが、その代わりと言ってもなんだが、いつか最高のやつをつくろう。楽しみにしている。
だから僕は
意味がなくったって
脈絡がなくったって
よくわかんなくなって
どれだけバカにされたって
書くし創るよ
あなたと美しいものを見たいから
それが僕たらしめるから
境界線は肌にあるものじゃなくて
それぞれの思考に限られてるから
僕の創ったものを見た
あなたを見たいからだ
精神が触れ合って
摩擦で気がふれるくらいの熱を感じたいからだ
彼らは僕を助けて彼らを僕は助ける
きっとこれくらいの関係にしかなれないけど
きっと彼らとは分かり合えないけど
彼らの助けにより僕らはもっと
人と人の熱をもっと
もっともっと触れられる時代がやってくるはずだ
そしたら寂しくなくなるかもね
夜を一人で超えられるかもね
なんで僕は創作なんかするのさ
きっとわかりそうなとこまで来てるはずだ