学び
( 写真は昨日どっさりと降った雪 )
11月の末にわたしの愛犬フリコが急逝してしまった。息つく暇もなく、師走に風邪から後期高齢者の母が持病である今話題の間質性肺炎の悪化で緊急入院、在宅のこれまた後期高齢者(あと数年で100歳)の父の様々なことを姉妹でこなす。
わたしたちはプチシニア世代。自分のことでもかなり精一杯で自らの家族のことなど入れるともうヘトヘト。夜には電池が切れたように寝てしまうし記憶が飛ぶことも頻繁にある。
でも、自分の親って自分が体力があったり健康だったりだと、子どもが目に見える病気じゃない限り、身体がとりあえず動いている様子があれば、内側のそういう体力がないみたいなことがわからないようだ。自分より若いんだろうと一括りというか。子への愛情がなくなったわけでは決してないのだが、いつの間にか自分のことしか考えられなくなっている自分にさえ気づけないくらい。ハッと思い出したように気遣いは勿論あるが、基本1日を終えることだけでもう精一杯のようだ。
そりゃあそうだ。ヴィンテージからアンティークへの過渡期なんだもの。もうすぐ100歳(!)なんだもの。
そんなこんなで、この新しいスタイルの家族の関わり方に、私たち家族全員が納得したり、妥協したり、諦めたり、聞こえても聞かなかったことにしたりする、すべてのことに全員がなんとなく馴染みたくないけど馴染まざるを得ないという、いっそ少しの間だけでもいいから一度棚に置いておきたいような、この待ったなしの人命の関わる状況下で、亡きかわいい愛犬フリコとの思い出に浸ったり動画や写真を眺めたりする暇もほとんどないくらいの毎日で、わたし的にかなり精神的肉体的に疲弊したクリスマスー大晦日ーお正月を過ごした。名前やマガジンにするくらいクリスマス好きなわたしが「大変過ぎてクリスマスツリーを飾るのすら忘れていた」と言ったら、わたしを直接知るものはどれだけ逼迫した状況だったかが窺い知れたようで心底心配してくれるほどだった。
あちこちで聞きたくない話しもたくさん聞かされた。全員が精神的にも肉体的にも参っていた。わたしの脳内にはいつしか砂漠が広がっていた。歩いても歩いてもずっと砂漠。歩いているつもりでも現在地がわからない。掴んだつもりでもするする手から落ちていく砂。いやもうどうしようという気持ちだった。ちょっと限界に来ているのでは?もう最高潮にこれはここからどうしたらいいかと途方に暮れたような気持ちになったある日のこと。
妹と「もうこれはだめだ。このまま家に帰ったら絶対にだめだ。一回気分をリセットしてから、少し感情を和らげてからじゃないと帰れない」とあてもなく降りしきる雪の中をドライブした。でも遠くまで行く元気は2人とも残っていない。
「とりあえず、珈琲でも飲むか」と寄った珈琲屋さん併設のTSUTAYA。でも入ったはいいがやっぱりここで珈琲を飲むのは違うような気がして書店側へと流れていった。
ふと見ると面陳列の棚に置かれていた、わたしの大好きな吉本ばななさんの「小さな幸せ46こ」の文庫本と目が合った。「あ、ばななさんの本!わたしコレ持ってたよね。えーと、どんな内容だっけ」とパッと本を開いた。
すると「元に戻る」というタイトルで、ばななさんのお姉さんのハルノ宵子さんとご実家のお話しの最初の数行に2人で協力して介護にあたったことが書かれてあった。この11行くらいにわたしの今とすべてが詰まっていた。
30カ国以上で出版されて世界中にわたしを含むファンがたくさんいるばななさん。ばななさんの言葉にはスピリットが宿っている気がする。
たしかに以前に読んでいるはずの言葉たちだが、読み手が言葉を読むとそれがスイッチになって今という鍵がガチャリと扉を開けた途端に一瞬でそこにやってきて心の中にやさしさを置いていく。
不思議なもので読んだ後に自分が戻ってきた。すぅっとリフトアップしてくれる魂の美容液のようでもある。はっきりとわかりやすい効果に、自宅に単行本はあるがすぐにKindleで同書を買ってiphoneにおとして該当ページをブックマークして、その日以降、介護まわりで心折れそうになった時にリマインダーのように読むようにしている。持って歩けるお守りのように。いい時代になったものだ。
人間やっているといつかはやってくることが自分ごとになった時にいくら準備していても想定外がある。でもこんな時に一番癒されるのは共感や言葉からでそれを発しているのは同じような経験のある人間。しかし大変なおもいをさせられるのも人間。こういう不思議な循環もまたあるのだなあとこの年齢でもまだまだ学びはあるものだし、なんなら目指せ100歳の父にも、病院のベッドの上で不死鳥のようにまた医療従事者が驚くような起死回生の2発目を打ち出そうとしている母にも、また日々の人間としての学びがあるようだ。
人間の学びは一生というのは本当だなぁとしみじみ思う。
ありがとうございます(*Ü*)*.¸¸♪