弱っていた心をガッチリつかまれました。映画『グレイテスト・ショーマン』2017年、アメリカ
偶然見た映像に、心わしづかみにされることがあります。何気なく聞いた音楽が耳について離れないことがあります。歌詞のすばらしさと、化粧っ気ない高校生たちのダンスにボロボロ泣いてしまいました。さほど遠くない公立高校で、ダンス部がとても有名なんだそうです。知らなかった…
この動画をきっかけに、絶対見たいと思った映画『グレイテスト・ショーマン』。全部で7回見ました。DVDも買ってしまいました。本当に、歌がよくて、ダンスが力強くて。もう、ただただ圧倒されて、押し切られるような映画。仕事で落ち込んだときに、絶対、元気になれる映画です。できるだけ大画面で、いい音で見るのをおすすめします。
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実在したP・T・バーナムをモデルに、現代風にアレンジした物語。サーカスをつくった人。大金持ちになって、その後、政治家にもなった人。毀誉褒貶があるアメリカ人のバーナム。映画では愛すべきプロデューサーにしています。そのあたりが、欧米では物議を醸したようで、ダンスも歌もステキなのに賞をとっていないとか。
確かにヒュー・ジャックマンはペテン師でクズだ。彼らを使ってカネ儲けをしているショーマンだ。しかし、世間はそもそも彼らに目を向けなかった。居場所を与えなかった。サーカスは家族、というのは非常に象徴的な台詞だと思う。繰り返すが、ヒュージャックマンはペテン師だ。だが彼らに夢を見せただけでなく、”本物の”居場所を与えた。おれには、彼らが、無関心のままに彼らに何もくれなかった世間と違い、本当の居場所を、価値をくれたヒュージャックマンについていった理屈の方がよくわかったのだ。それだけの話だと思ったのだ。 (『グレイテスト・ショーマン』による“地上最大のショー”は映画館を間違えたおれを笑顔にしたのか)
最初に見たときの圧倒的ヒロインは、レベッカ。愛と母性のシンボルみたいなミシェルでも、魅力的な空中ブランコのゼンデイヤでもなくて。絶対的な美貌に歌唱力を持つ、ヨーロッパ一の歌姫の「本物」さにヒューが魅入られるシーンは圧巻。彼は、ずっと「偽物」だと言われ続けたショーではなく、彼女のアメリカツアーを計画する。自分が「本物」になるために。
一方で、レベッカが求めるのはヨーロッパ的な階級を飛び越える愛。私生児という生い立ちを含めて、すべてを包み込んでくれる愛を求めている。そして、自分の歌で「本物の芸術」に魅入られたヒューを、自分の生い立ちや人間性の全てを愛してくれる人ではないかと期待してしまう。
結局、ヒューには妻と子供がいて、彼女に愛の全てを与えることはできない。彼女はプロデュースする対象でしかない。彼女は絶望して、「満たされたい」と歌う。同じ歌なのに、最初と最後で全く印象が違うのはすごい。彼女はヒュー裏切られ、きついしっぺ返しをする。自分だってリスクがあるにもかかわらず。そして、堂々の退場。彼女の行動の全てがかっこいい。
実際の歴史上のバーナムやジェニー・リンドは全然違う人物らしいけど、映画だから改変はありだし、それで良さが減るなんてこともない。歴史は歴史。映画は映画。物語の登場人物たちの弱さに涙するし、アホさを笑うし、立ち直る強さに励まされます。
2回めは、細かい部分にしっかり目が届いて、ヒューのクズっぷりがよくわかりました。ええ、2回めはやっぱり、奥さんの愛に泣けるし、ゼンデイヤ&ザックの純粋な愛の感じがよくわかりました。
3回めは1人で映画館へ。リピーターが多い平日に。そして4回めは塚口サンサン劇場さんの応援上映に家族で行きました。ペンライトを買って、楽しかった。支配人さんの芸達者ぶりと、常連さんたちの盛り上げ上手にも驚き。大声で歌って、仕事の嫌なことを忘れる夢の時間。
5回めは1人で近場の映画館で見て、DVD買ったあとには、とどめの爆音上映で7回目。いつも女子会する友達を誘って見に行き、音響の良いスクリーンで歌とダンスを堪能したあとは、ビールで乾杯。ステキな時間でした。ああ、また大きなスクリーンで見たいなあ。
邦題:グレイテスト・ショーマン(The Greatest Showman)
監督: マイケル・グレイシー
製作:アメリカ(2017年)105分
出演者:ヒュー・ジャックマン、ザック・エフロン、ミシェル・ウィリアムズ、レベッカ・ファーガソン、ゼンデイヤ、キアラ・セトルほか