激動の台湾の日常を生きる。映画『幸福路のチー』2017年・台湾
台湾好きの家族みんなで見に行きました。
予想していたより、ずっとアニメっぽくて、でも内容も濃かったです。
まず、主演の声優がグイ・ルンメイという贅沢さに驚いたし、エンディングがジョリン・ツァイだったのにもびっくり。豪華すぎる! でも、それが充分納得の作品でした。
戒厳令下の台湾で生まれた主人公。原住民の血を引くおばあちゃん。田舎から町に出てきた家族。学校になじめない主人公と、彼女を支える友達。賢かった彼女が医学部進学をやめて、学生運動にのめり込んで、不本意な就職をして、アメリカへ新天地を求め、結婚し、そして帰国する。いろんな心の傷を抱えつつ。
背景には、発展していく台湾。民主化して自由になる台湾。だけど、人々はかわらない台湾。お母さんやお父さん、悪ガキの友達やミックスの友達、出てくる人みんな、台湾のどこにもいそうだけど、特におばあちゃんのキャラがよかった。台湾っぽいゆるさと包容力。道教っぽいお葬式。
ただ、今の台湾しか知らない人や、あまり台湾に詳しくない日本人には、ちょっと難しい映画。なんせ、中国と台湾の区別がつかない人もびっくりするくらい多い。日本植民地時代までは知っていても、冷戦時代の戒厳令とか、国民党の一党独裁とか、民主化運動とか。でも、このアニメがきっかけになって、多くの人に興味をもってもらえるといいなあ。
この映画に出てきた、学生運動でつかまった主人公の従兄弟が持っていた本は、史明のもの。日本を拠点に台湾独立運動に一生を捧げた彼のインタビュー本はこちら。
邦題:幸福路のチー (原題:幸福路上)
監督: ソン・シンイン(宋欣穎)
主題歌: ジョリン・ツァイ(蔡依林)
製作:台湾(2017年)111分