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現代に残る道教のお葬式。映画『父の初七日』台湾、2009年
台風で自宅に閉じ込められたときに、見た映画。
お葬式の映画といえば、有名なのは伊丹十三監督の『お葬式』、韓国・林権沢監督『祝祭』、最近なら『おくりびと』などなど。
お葬式って、本当におもしろい。いろんな国どころか、一つの国の中でも地域によって全然違って、参加者の中で、若者はだいたい振り回されるばっかりの役回り。言われるまま、年長者の指示に従うだけ。
この映画の主人公の若い女性もやっぱり同じ。でも、親戚一同が道教の「道士」に従うのが、台湾的でおもしろい。台湾は仏教の大きくて有名な教団があるし、日本の新興宗教も進出してたりするけど、一番多いのは「道教」。主人公は、出棺までの7日間ひたすら振り回される(ように、観客には見える)。だって、ちゃんとしたしきたりを全て心得ているのは道士様だけなのだから。
私の田舎の祖母のお葬式のときは、地域のしきたり(=ご近所のおばさま方)の言う通りにしたけど、夫の祖父や祖母が亡くなったときとは全然違うお葬式だった。田舎の数だけ、家の数だけ、お葬式って違うのかも。
身近な人の訃報に触れる度、体の一部がどこか、あの世へちぎられていくような気がする。でも、お葬式の映画は、笑ったりおどろいたりしながら、自分の死後を冷静に考える機会をくれる。
悔いのない人生を、今を。よく生きられるように。
邦題:父の初七日
原題:父後七日(原作小説のタイトルも同じ)
製作・監督:王育麟
原作・脚本・監督:劉梓潔
製作:台湾(2009年) 92分