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百聞は一見に如かず。ドキュメンタリー映画『東洋の魔女』フランス、2021年。


子供の頃から名前だけ知っている「東洋の魔女」。メチャクチャ強かった、東京オリンピックの日本女子バレーボールチーム。日紡貝塚の女子バレー部だったというくらいは、南大阪に住んでいるので知っていますが、今回の映画で初めて知ったことも多かったです。

全寮制のバレーボールチーム。高卒の女子バレー部員は、朝仕事をして、午後から夜中まで練習。まさにアニメの『アタックNo.1』と同じように、鬼コーチにしごかれてもがんばる女性たち。今では完全アウトなスパルタぶり。実際に見てもすごかったですが、これは予想の範囲(私も大昔、体育会系だったので)

驚いたのは、このバレー部の試合や練習フィルムが残っていること。しかも、その多くがフランス国立スポーツ研究所のライブラリーらしいことに2度びっくり。この映画監督さんは、このスポーツ研究所の映像担当なので、そのアーカイブを駆使したドキュメンタリーの3作目が本作品とのこと。

もっと驚いたのは、かつて魔女と呼ばれたお姉さま方が、今、70代後半や80代前半で4人がご健康で(写真)、現役でバレーボールチームのコーチをされていたり、近所のスポーツジムで筋トレされていること。すごいしかいえない。尊敬します。

合間、合間にちょっとうるさいくらいに挿入される『アタックNo.1』のアニメ映像ですが、ほとんどこれ日紡貝塚の練習そのものなことにも驚きます。そして、一番の驚きは、鬼の大松と呼ばれたコーチが、なんとビルマのインパール作戦の奇跡の生還組! オリンピックの重圧にもチームが負けないよう、ライバルの旧ソ連に負けないよう、徹底的にしごきます。

そんな大松コーチのことを、チームのメンバーは父親やあこがれの男性のように慕っていました。なぜなら、メンバーの多くが戦争で、片親や両親を亡くしていたから。生理のときなど、お互いがかばいあってなんとか乗り越えたそうです。そして、コーチも月1くらいで、メンバーたちを自腹で映画に連れて行くなど、かわいがっていた様子がうかがえます。

魔女のお姉さまたちは、鬼のコーチにしごかれて、世界選手権や東京オリンピックで連戦連勝して、バレーを辞めた後は結婚して家族を持って、それなりに幸せな人生を送られたようです。あの頃が懐かしいと、ニコニコインタビューに答えるお姉さまたちが眩しい。そして、焼け跡から再起をめざしたかつての日本の映像が力強かったです。

若干、期待していた映画とは違いましたが、色んな意味で裏切られるいいドキュメンタリー映画でした。日本でいま、こういうドキュメンタリーは無理だと思いますが、フランス人の映画監督が本作をつくってくれたというのが、もしかすると一番のサプライズだったかもしれません。




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