多国籍なおいしさ。映画『エイブのキッチンストーリー』アメリカ・ブラジル2019年。
予告編を見たときから、かわいくて絶対見ようと思っていました。ニューヨークに住む主人公のエイブラハムは12才で、イブラヒムとか、アブラハムとか呼ばれる。というのも、お母さんがユダヤ人でお父さんがパレスチナ出身のイスラムだから。祖父母たち家族はいつも、団らんのはずの食卓で、宗教やら政治の話題でもめてしまう。
無宗教でやりたい父親。アイデンティティの問題をないがしろにしたくない母親。エイブはどっちもやってみたいと思うけれど、上手く行かない。線が細くて料理が好き。友達はあんまり多くなさそうで、インスタが友達。
夏休み、両親のすすめるサマーキャンプに行くふりをして、ブラジル人の「フュージョン料理」のシェフ、チコのお店で働かせてもらうようになったエイブ。フュージョン料理って初めて聞いたけど、多国籍料理だそうです。彼の厨房はいろんな国の人がいて、とても楽しそう。
最初は皿洗いとゴミ捨て。そのうち野菜を切ったり、レモネードを作らせてもらえるようになる。自分なりの工夫をして、がんばってキッチンのみんなに受け入れてもらえるようになったと思ったら、両親にバレて…は大体お決まりのパターン。両親の喧嘩が絶えないことを気にしたエイブは料理で家族を結びつけようとしたのに、却って祖父母と両親は大喧嘩。
アンドラーデ監督はブラジル人。ユダヤ人とカトリック系ブラジル人というルーツから、LGBTQや女性の権利の啓発、人種差別、そして環境問題などなど。難しいドキュメンタリーフィルムをとっている人。YouTuberや雑誌記者を経て監督になったとか。この物語は、とてもポップでキュートでかわいくて、おいしそう。若くて多彩な監督さんのようです。
家を飛び出したエイブを、シェフのチコがやさしく励まして言ったセリフ。「問題からは逃げられない。立ち向かえ。自分らしく」 ステキですね。美味しいものをしっかり食べたら、闘う勇気がでてきそうです。
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