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ドキュメンタリー映画『我が心の香港』香港、2020年。

元旦から、神戸元町映画館で上映が始まったので、ようやく見に行くことができました。大好きなアン・ホイ(許鞍華)監督のドキュメンタリー映画。監督のスタッフの方がまとめたのだとか。

アン監督は、1947年の遼寧省鞍山生まれ。1952年、両親と香港にやってきたとのこと。アン・ホイ監督の「鞍」の字は、女性の名前として珍しいと思っていましたが、鞍山生まれならわかります。名前に生まれた場所の字を1つ入れるのは、中国ではよくあるパターンですから。

そして、アン監督の母親はなんと日本人。でも、父親は戦後間もない頃に中国で妻を守るために、ずっと周囲に隠していたのだとか。「満州国」の残留日本夫人だった妻を守るため、そして家族を守るために、中華人民共和国ができる頃、香港へ逃げたのか。

父親の愛情を一身に受けて、父親から中国文学の素養を身に着けた秀才のアンは、名門の香港大学でも優秀で、ロンドンにも留学し、映画の勉強をします。そして、TV局に入り、社会派のドラマやドキュメンタリーを撮影して、映画監督としてデビューします。

その後、アン・ホイは女性の監督として、男性ばかりの映画界で活躍します。私が知っているのは、1995年の映画『女人、四十』以降で、女性と社会に関わるいい映画をとる監督という評価だけですが、若い頃から、とにかくコンスタントにいろんな映画を撮っていて、それは自分の小さい頃の思い出や、大学時代の話、金庸の武侠小説の映画化、一番多いのは香港でその時々に起こる社会問題のようです。

アン監督自身の話以外に、映画スタッフ、そして香港を代表する映画監督のツイ・ハークや、俳優のアンディ・ラウ、台湾の侯孝賢監督に女優のシルビア・チャン、中国の田壮壮監督にジャ・ジャンクー監督まで、いろんな人が香港映画の歴史とアン監督について語ります。もうこれだけで、すごい内容。映像の中では、日本未公開の作品も多く、私の好きなマギー・チャンも若い(感動)。

そして、今は香港と中国がすごく厳しい状況。映画『明月幾時有』(2017年)は中国でも公開されて、アン監督は宣伝に駆り出されます。2017年は、ちょうど香港返還20周年なので、アン監督を招く側は「香港は中国に返還された20年で、どう良くなりましたか?」という質問をしたがります。でも、アン監督は「映画の質問しか答えません」と質問自体を拒絶します。

香港の反中国デモをめぐる話とかは、下記の新聞記事が詳しいですので、気になる人はチェックしてください。

ずっと興行的には成功していないアン監督。でも、その作品は海外でも高い評価を得ています。自分はもう年だといいますが、『花椒の味』みたいにプロデューサーでもいいから映画に関わって欲しいです。

邦題:我が心の香港 映画監督アン・ホイ(原題:好好拍電影)
監督:文念中
制作:香港(2019年)119分


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