経験者にも大受け。『日本人の知らない日本語』蛇蔵&海野凪子
全力でマジメに日本語を勉強すると、なぜかギャグになる・・・わけではないけれど、とっても楽しい日本語学校の日常を描いたコミックエッセイです。以前、夜間中学で中国やフィリピンやブラジル系の学生さんたちに日本語を教えていたときのズッコケな毎日を思い出しました。
コミックエッセイの舞台は、とある日本語学校。日本語教師が学生さんに「立って言ってください」と言ったのに、外国人の生徒は椅子に座ったまま、「た。」と一言。こういうすれ違いは、コミックが一番表現しやすいです。
インターネット以前は、映画や文学から日本を知る外国人が多かったので、日常会話よりも美文調の日本語に詳しかったり、「先生さま」みたいなMAXすぎる敬語が出てきたり、時代劇やヤクザ映画のセリフが日本語教室で展開されて、とってもフリーダム。
そうかと想うと、先生が骨折して入院したときに仏花や鉢植えを持ってお見舞いに来たり、挙げ句、現金のお見舞いが届けられるカルチャーギャップには師弟愛があふれています。
要所要所で専門的に説明される日本語や、昔から使っている言葉の変化なんかは、日本語教室を知らない日本人にとっても楽しめること間違いなし。漫画なので、仕事に疲れて帰宅した後、なーんにも考えず笑えます。
仕事先の本職の日本語の先生に、この『日本人の知らない日本語』を紹介してみたら、結果は大好評。さらに本職ならではの、コミックエッセイのネタの解説までしていただいちゃいました。
例えば、学生が日常的な言葉を、なんでもかんでも日本語の先生に質問してしまうのは、日本語がまだ話せないから。「片言でもいいので、バイト先の人に聞けば、それでコミュニケーションがはかれるんですけど、それができないんです。日本にきたばかりなので。日本は物価が高いから、すぐにバイトを始めないと生活できないし」とのこと。なるほど……
興味をもった中国人の先生が、「貸してください」とのってきました。もちろんオッケーなのでお貸ししたら、謹厳実直を絵に描いたような先生が、「広辞苑にこの言葉は載っていませんね」とか言いながら、電子辞書片手に読んでいました。かなり、かわいかったです。
その後、帰り道一緒になった日本人の先生にも貸しました。中国語の授業を担当しているそうですが、留学生たちに囲まれて日本語に四苦八苦しているらしいので。
翌日、早速お礼のメールが来たので、よほど役に立ったのかと思ったら、ご本人がおもしろがった以上に、中国人の奥様が大笑いして読んでいるとのこと。育児にかなり苦労しているらしい奥様の気晴らしになるなら、それは何より。