イギリスの闘う女性たち。『未来を花束にして』イギリス、2015年
1912年のロンドンで、参政権を求めたイギリスの女性たちのお話。『ダウントン・アビー』と同じ時期の映画で、ドラマにも三女シビルや恋人のトムが参政権を求める運動に関わるシーンが確かあったと思うけど、この映画で展開する人間ドラマは、かなりきついです。
主人公のモード・ワッツは、夫サニーと幼い息子ジョージの3人で暮らす労働者階級の主婦。母親も洗濯女で、父親不明。でも、工場長が父親っぽいことがセクハラで暗示されています。4才で母親と死別しているのは、洗濯女は仕事が大変で寿命が短いから。7才から働いて、12才で社員になり、20才で主任。夫も同じ工場で働く。劣悪で低賃金の洗濯工場が、ほぼ人生の全て。
ある日、モードは洗濯物を届ける途中、女性参政権を求めて活動する婦人社会政治連合(WSPU)の過激行動に遭遇し、これをきっかけに、サフラジェットと呼ばれる女性参政権を求める活動家たちと出会います。公聴会で自分の意見を褒めてもらえたモード。それまで誰にも認められなかった自分が、自分として認められ、運動に参加していくことになります。
低賃金の長時間労働に加え、工場でのセクハラ、息子の親権を認めてもらえず夫に勝手に養子に出される等など。現在では考えられない環境におかれた女性たちが、運動に希望を見出していく切実な気持ちが伝わってきます。
弾圧されて過激になっていく運動に共感するのは、現代の私には少し難しいけれど、過激な物言いをしないとメディアの注目を引けないし、おとなしい要求だけでは社会は変わらないのもよくわかる。だって、「言っていることは正しいけど、あの言い方が乱暴過ぎて」とか言う人は、穏当な表現のときには見向きもしないのを知っているから。
ラストで活動家の一人が殉教のように馬の前に身を投げ出し、それが世界的に注目されて、1918年の女性の参政権につながっていく。この過程が端折られているので、むちゃくちゃ気になります。自分で調べてみたい。というか、その名もずばり『サフラジェット 英国女性参政権運動の肖像とシルビア・パンクハースト』という本があるみたいなので、読みたいです。
でも、もっと気になるのはイギリスの政治的な映画で女性政治家や活動家の役にいつもメリル・ストリープが当てられること。サッチャーの映画とか。他に山程大物女優がいるはずだけど、なぜ?
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