宇宙人が地球に来て宗教をみたら?映画『PK』インド、2014年
アーミル・カーンの映画に外れなし。『きっと、うまくいく』、『チェイス』、『ダンガル』、『シープレットスーパースター』。大学生、銀行強盗、元レスリングの選手、落ちぶれた音楽プロデューサー。何を演じても、本当に文句なくおもしろく、楽しく、切ない。すごい。
今回の映画のアーミル・カーンの役どころは宇宙人。地球を探りに来たけれど、宇宙船と交信するリモコンを無くしてしまい、置き去りにされてしまうお話。彼を助けたのはテレビ記者の女性ジャグー。留学先で恋をしたのに、彼はパキスタン出身のムスリム。ジャグーはインド出身のヒンデゥー教徒の家庭で育ったために、宗教問題で失恋して帰国した設定です。
宇宙人のアーミル・カーンは、洋服を入手し、コミュニケーションを習得し、かなり変則的な方法を駆使して人間社会に溶け込み、あろうことか言語まで習得し、リモコンを探してインドにたどり着きます。もう、この過程が笑い転げるほど面白い。そして、「神さま」だけがリモコンを見つけられると教えられ、ジャグーと一緒にインドのいろんな宗教をめぐって、リモコンを探して歩きます。
地球についての予備知識ゼロの宇宙人アーミル・カーンは、いろんな宗教団体の教祖たちに問いかけるけど、このトンチンカンな行き違いがかなり笑えるし、実は世の中やあ物事の本質をついた内容です。おかしいやら、関心するやら。脚本の練り具合が尋常ではありません。
そして、インド映画定番の「全部のせ」。喜びも、悲しみも、恋愛も、親子の愛も、ダンスも、文学も、人生の全てをつめこんだ153分があっという間。魅力的な主人公、そしてかわいいアーミル・カーンと、いじらしいジャグー。宗教で対立したり、世の中のしがらみで面倒くさいことになったり、おもわぬ異文化対立に巻き込まれたり、大事な人とすれ違ったり。そんな現実を解決するのは、ただ誠実な態度とまっすぐな愛情。
いろんな伏線が最後に見事に一気に回収されていく爽快感もさすがです。自宅でのんびりビデオ鑑賞もいいですが、やっぱり、インド映画は大画面に限ります。泣いて、笑って、あー楽しかったと劇場を出て、また次の日からがんばることができるんですから。
ちなみに、「PK」はヒンドゥー語で「酔っぱらい」のこと。地球のことを知らない宇宙人の言動を、まともじゃない「酔っぱらい」だと勘違いした人がつけたあだ名です。でも、世の中には、常識に囚われた人たちより、何も知らない人の方が物事の本質を見抜けることもあるというお話でした。超おすすめです。
インドの宗教対立を題材にした映画では、こちらもおすすめ。説教くさくなく、コメディと旅と人との出会いで「こうくるか!」のオンパレード。幸せな気分になりたいとき、生きるエネルギーがちょっと足りないときに見たい映画です。