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夕遊の漫画cafe

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大好きな漫画その他をここにまとめておきます。本当は、ここに書ききれないくらい好きな作品がたくさんあるのですが...
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偉大な中華帝国のリアル運用。『中国ぎらいのための中国史』安田峰俊

日本では、歴史はだいたい、「昔あったこと」。明治維新はよかったけれど、日清・日露戦争を経て、大正時代から昭和の前半までの戦争は失敗したけれど、でも敗戦後から現在までは、そこそこ経済発展して先進国の仲間入りをした、イメージ。 古代の邪馬台国も、平安時代の貴族社会も、戦国の武士たちの争いも、江戸時代の百花繚乱の文化も、今の日本人にとって、自分たちとは直接かかわりのない「遠い昔の物語」。なんなら、ゲームや小説、ドラマ、映画の世界。中国の歴史だって、ヨーロッパの歴史だって、「遠い遠

【鳥取】冬の山陰線で『名探偵コナン』と倉吉を堪能

いつもは夏な鳥取ですが、今回はイレギュラーに冬にお仕事。いつものようにスーパーはくとに乗って、出かけます。鳥取は『名探偵コナン』の作者、青山剛昌さんの出身地だそうで、運が良ければコナン君のラッピングカーに乗れます。 ローカル線のおたのしみ難読駅名。郡家(こおげ)は初見で絶対読めないし、多分2度めも無理。 倉吉駅に着いたら、ホテルに荷物を預けて、バスで観光。定番の白壁の町並みを歩きます。 地元の八百屋さんで、お得に梨をたくさん買うのが毎回出張の楽しみ。名前も知らない梨がた

『三日月よ、怪物と踊れ』黒博物館シリーズ原画展(旧尾崎テオドラ邸)藤田和日郎

藤田和日郎さんの黒博物館シリーズは、熱烈な固定ファンのいる名作。最初に『ゴーストアンドレディ』を読んだときの感動は忘れられませんし、ちょっとめげそうになったときには、いつも読み返してパワーチャージをしています。 そんなわけで、最新作の『三日月よ、怪物と踊れ』も期待しかなくて、だけど毎回、単行本の発売を待つのも辛いので、がまんして連載の完結を待って、一気読みしました。ああ、至福の時間。イギリスのヴィクトリア朝時代の物語を堪能しました。 今回、黒博物館のキュレーターさんがお迎

努力と仲間とダンスへの情熱と。映画『熱烈』中国、2023年

元気がでる映画シリーズ第2弾。ダンス(ブレイキン)は全然知りませんが、見ているだけで熱くなれるのがいいところです。主演の王一博(ワン・イーボー)はローティーンの頃からダンスがすごい人なので、彼のダンスの凄さがメインだろうなと思って見に行ったら、見事にいい意味で裏切られました。 お金持ちの息子で、チームのスポンサーでもあったケビンに逃げられた杭州のダンスチーム「感嘆符!」。昔、チームのコーチは昔、メンバー募集のとき、ケビンと比べて落とした陳爍(チェン・シュオ)に代役をしてくれ

映画『THE FIRST SLAM DUNK』復活上映に行ってきました。

7月下旬から約1ヶ月、ひたすら仕事先と自宅にこもって忙しかったので、お盆頃にはとうとう限界。なにもアウトプットできなくなりました。というわけで、友達を誘ってエネルギー補給。また映画館で見れてうれしいです。 スポーツとかアニメに全く疎い友達を誘ってのデートでしたが、見終わった後、「すごくいい映画だった!」って言ってくれたのでよかった。せっかくなので、原作も超絶プッシュして、感想を聞かせてくれるよう約束しました。今から聞くのが楽しみです。 とかいう私も、実は原作を読んだことな

とうもろこしも神様。特別展『古代メキシコ マヤ、アステカ、テオティワカン』

子どもの頃に見た、アニメ『アンデス少年ペペロの冒険』。「黄金のコンドルよ~♪」のオープニングソングと、ラストの黄金のとうもろこしエピソードは、なぜか強烈に印象に残っています。特別展『古代メキシコ』。ようやく行くことができました。 とはいえ、今のメキシコっぽいイメージは、大好きな岩本ナオさんの『マロニエ王国の七人の騎士』の動物の国。ここでジャガー王と対面できる期待に、わくわくして出かけました。 アメリカ大陸で、独自に発展した「もう一つの文明」メキシコ。ヨーロッパとはまったく

耽美をめぐる社会情勢と魅力『BLと中国』周密

以前から興味を持っていた分野なので、すごく読みたかった本ですが、発売前から重版がかかるほどとは。ドラマ『陳情令』の原作『魔道祖師』や『天官賜福』の作者・墨香銅臭さんのインタビューが掲載されていた『すばる』2003年6月号もすごかったですから、当然といえば当然なのかも。 さて、周密さんの『BLと中国』は、日本でいわゆる「BL」とされる物語が、中国では「耽美」(Danmei)と呼ばれている、その語源からたどります。日本が新しいもの=外来語を使って新しさや付加価値つけて表現し、そ

日露戦争に人生を狂わされた男たちの物語。映画『ゴールデンカムイ』2024年

オープニングのすさまじい二〇三高地のシーンから、主人公の杉元とアシㇼパが出会い、困難を乗り越えて相棒(バディ)を組むまで。この映画は、壮大な物語の「序章」です。内容は原作のテイストそのままですが、なんといっても生身の俳優さんたちがくりひろげるアクションシーンがすばらしい。そして、合間、合間に広がる試される大地、北海道の雄大な景色。映画ならではの表現で、原作の世界を存分に表現しています。 タイトル『ゴールデンカムイ』のロゴがラスト近くに大きく映し出され、今後の続編に出てくる、

台湾の伝奇ミステリー『守娘』小峱峱

表紙の美麗さに、迷うことなく入手した台湾のコミック。水墨画のようで、ちゃんとマンガだけど、アーティスティックな線描写がとてもステキです。時代は清朝。日本でいうと、江戸時代。日本の植民地になる前のお話。 台南の杜家の娘・潔娘(ゲリョン)はやさしい兄に可愛がられて育ちました。当時としてはめずらしく、読み書きができて、纏足をしない。これだけ聞くと客家っぽいですが、周りの親戚はそれをよく思っていないのが少し謎。どういう家族&親戚設定なのか、日本語版だとイマイチわかりません。原作だと

神様の記録。映画『ペレ 伝説の誕生』アメリカ、2015年

娘と映画を見に行くときは、なるべく楽しい映画を選びます。スポーツ映画は王道。深刻なドキュメンタリーも必要だけど、見た後に元気になって、「明日からまたがんばろう」って思える映画や思い出が人生には必要だから。 ペレといえば、サッカーの神様。ブラジルの英雄。サッカーにあまり詳しくない私でも知っています。でも、一番昔の記憶では、夜中まで起きてワールドカップの試合を見ていた頃のスター選手はマラドーナやベッケンバウアー、プラティニ。 ペレは、さすがにリアルタイムでは見れていません。私

果実酒と菊花茶と私

この春、ふと祖母を思い出して仕込んでみた梅酒。無事、おいしくしあがってくれました。疲れた体にうすーいお湯割りや、ロックでほんの少しだけいただく食前酒。ビタミンのように身体に効きます。 梅酒がうまくいったので、祖母を思い出して花梨酒を仕込んでみました。私の育った信州の家には、ブドウの木とカリンの木、それからイチジクの木がありました。祖母が大事にして、いろんな方法で保存していたのを覚えています。花梨酒、どんな風にできあがるか楽しみ! もう一つ。年末の疲れた身体をサポートしてく

アマチュアの歴史的大発見と実話ベースのファンタジー。映画『ロスト・キング』イギリス、2020年。

シェイクスピアの演劇で有名な、イギリスの王様リチャード3世。多分、日本ではそれほど有名じゃないと思います。私が知っているのも、『7人のシェイクスピア』という名作コミックのおかげ。本題から少し脱線しますが、この作品の中でもリチャード3世の演劇は魅力的です。続きが早く読みたくてたまりません。 さて、歴史上のリチャード3世は身体が不自由で、野心家で正当な王の権利を持たない簒奪者というイメージらしく、それをシェイクスピアがあまりにもおもしろい作品にしてしまった(?)ということで、よ

台湾グルメと鉄道の旅と百合。『台湾漫遊鉄道のふたり』楊双子(三浦裕子訳)

予告されたときから、すごく楽しみにしていた本。『台湾漫遊鉄道のふたり』というタイトルもそうですが、表紙のデザインがレトロかわいくてステキ。台北駅がモチーフになっていて、昭和のおしゃれな女性2人が楽しそう。広告のキャッチコピーも「グルメ、鉄道、百合」って情報量多すぎで、わくわくしかありません。 舞台は昭和13年5月、作家の青山千鶴子は台湾の講演旅行に招かれます。妖怪と言われるほど食いしん坊な千鶴子は、台湾の珍しい食べ物に興味津津で、片っ端からチャレンジしたがります。でも、当然

黒博物館シリーズ『ゴーストアンドレディ』藤田和日郎

黒博物館シリーズは、19世紀のイギリス伝奇アクション。ロンドン警視庁の犯罪資料館「黒博物館」にいわくつきのモノを見るため、いろんな人がやってきます。毎回お出迎えしてくれるのは、かわいい学芸員(キュレーター)さんです。 本作で訪ねてきたのは老人で、彼のお目当ては1856年に王立ドルリー・レーン劇場に残された「灰色の服の男のかち合い弾」。その男(グレイ)は、劇場に出る縁起の良い幽霊で、生きているときは決闘代理人。芝居が大好きで、幽霊になってからも100年近く演劇を見ていたグレイ