敦賀の伝承料理「にしんずし」をつくる
「あ〜にしんずしね!食べる食べる!うちはおばあちゃんが漬けてくれて....。」
敦賀の方に聞くと、だいたいの人がそう答える。家庭で脈々と受け継がれる味があったり、炙って食べてみたり、いろんな具材を入れてみたりと、その楽しみ方はさまざまのよう。
これほど地元で親しまれていながらも、名物化していない掘り出し物の雰囲気と、北前船の寄港地として栄えた敦賀の歴史に紐づく食べ物として、わたしは「にしんずし」に注目している。
そんな郷土食・にしんずしへの興味から、手始めに実際に作ってみることにした。とても手間のかかる料理で、しかも美味しく漬けるにはコツがいるということで、今回は「生活改善実行グループ」の柴田さんににしんずしの作り方を教えていただいた。柴田さんはにしんずしの製造場で働きながら、生活改善実行グループの一員として、毎年郷土食の講習などを開催する、言わばにしんずしのプロだ。
▲講師の柴田さん
工程①:大根抜きから始めるにしんずし作り
大根畑もみたい...!と、ちょっとわがままを言って、柴田さんと交流のある農家さんのところで大根の収穫から体験させていただいた。
▲意外と、町中に畑があってびっくり。大根は割と身近な存在だと知った。
収穫した大根は2本ずつ紐で縛り、軒先で干す。よく見る”田舎の風景”に和みます。
工程②:大根を塩漬けする(本漬け2日前)
1週間ほど干してしわしわになった大根を持って嶺南振興局へ。
大根を切り、塩をまぶし、漬物樽へ。重石を乗せて2日ほど寝かせます。
工程③:にしんを水で戻す(本漬け1日前)
にしんずしの主役、身欠きにしん。堅いにしんを糠と一緒に一晩水に浸します。木箱を開けただけでもにしんの香りがすごい。
キッチンや鍋からはしばらくにしんの匂いがする日々が...。なかなか強烈。
工程④:にしんを洗う
塩漬けした大根、水で戻したにしんを使って、ようやく本漬けに移ります。
まずは、水で戻したにしんを洗う。これが1番のポイントなのだとか。
たわしを使って、食べにくさの原因となる鱗や血合を取り除く。
「鱗が残ると美味しくないからね」と、みんな真剣ににしんを洗う。
工程⑤:具材を切る
彩り要員。にんじんも加えます。柴田さんがお花型にしてくれました。他にも鷹の爪など。ゆずを入れたり、茗荷やきゅうり、ナスなどの夏野菜を入れる家庭もあるらしい。
工程⑥:漬物樽に詰める
麹、にしん、麹、大根、にんじん...と満遍なく麹が行き渡るように具材をつめていく。
工程⑦:調味料を入れる。
醤油、みりん、酒を合わせた調味料を回し入れる。
工程⑧:漬物石で抑える
食べ頃は2週間後
12月18日、自宅で開催した芋煮会で皆さんに振る舞いました。おいしい、おいしい!と皆さん食べてくださって嬉しかったです。
はじめてのにしんずし作り。
その工程の多さには驚きましたが、この手間の多さがにしんずしをより愛おしくさせるように思いました。いろんなにしんずしを食べ比べてみたいです。