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機械と人間の狭間で ―サイボーグ、AI、アンドロイド―

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『攻殻機動隊』を中心に、欧米、日本のSF小説、漫画を題材にして、機械の人間の狭間を考えます。全8回。(完結) ※文中のAmazonへのリンクはアフィリエイトではありません。
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2020年3月の記事一覧

2.機械の中の幽霊(2)

2-2. 義体はどこまで現実か2-2-1.サイボーグの再定義 SFの分野では一般的になった「サイボーグ」という概念であるが、技術の進歩によって実現性が高まってきている。 北アイルランド出身でスペイン育ちのアーティスト、ニール・ハービソンは先天的な「1色覚(全色盲)」である。しかし、現在の彼は色を識別することができる。彼の頭部には光センサーがついたアンテナが埋め込まれており、先端の光センサーが視界の光の波長を捉え、それを頭部に埋め込まれたマイクロチップが振動に変える。後頭部

2.機械の中の幽霊(1)

2-1.日本SFにおけるサイボーグ~『009』から『攻殻機動隊』へ~2-1-1.日本サイボーグSFの黎明 少し時間をさかのぼって、日本におけるサイボーグの受容を眺めてみよう。 クラインとクラインズの「サイボーグと宇宙」が刊行された翌年である1962年には、日下実男『地球物語 : 地球の生成から消滅まで』(早川書房)において、早くも「宇宙人間サイボーグ」と題して、その内容が簡単に紹介されている。 その年には光瀬龍が《宇宙年代記》シリーズを書き綴り始め、「スーラ2291」(1

1. A Cyborg Manifesto(2)ダナ・ハラウェイ『サイボーグ宣言』

1-2-1.政治神話としてのサイボーグ「我々はサイボーグである(we are cyborgs.)」というセンセーショナルな言説で知られ、フェミニストやSF関係者にも幾度となく再読されてきたハラウェイの『サイボーグ宣言』であるが、本来は当時の社会情勢下における、社会主義/フェミニズムの観点からの政治的提案である。 ハラウェイ自身『サイボーグ宣言』の中でいくつものSF作品に言及しているし、サイバーパンク作品群を読み解く理論として多くの場で持ち出されてきたが、そもそも文学理論で

1. A Cyborg Manifesto(1)サイボーグの起源

1-1-1.サイボーグという概念「サイボーグ」という言葉を知らない人は恐らく現代社会にはほとんどいないだろう。しかし、サイボーグとはどのような存在であるのかを問われた場合、それをきちんと説明できる人は多くはないだろう。それは、「サイボーグ」が広く用いられるようになったために、イメージが広がってしまってためでもある。 ここでは、原点に立ち返って考えてみる。 『大辞林(第三版)』(三省堂)には以下のようにある。 簡単に言えば、機械によって生物器官の一部を置き換えた存在が「サ

機械と人間の狭間で ―サイボーグ、AI、アンドロイド―【参考文献】

・日下実男(1962)『地球物語 : 地球の生成から消滅まで』早川書房 ・アーサー・C・クラーク,福島正実,川村哲郎(1966)『未来のプロフィル』早川書房 ・加藤一郎(1986)「人工の手・足」計測と制御7(12),p881-889 ・副島美由紀(1994)「ポスト・ヒューマン時代の政治的想像力,あるいはアイロニカルな神話 : ダナ・ハラウェイの『サイボーグ宣言』を読む その(1)」小樽商科大学人文研究88,p175-193 ・副島美由紀(1995)「ポスト・ヒューマン時代