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たくさん、抱きしめて
毎日のように、人の終わりを見ると思う。
あぁ、この人はこれまで、どんな人生を歩んでいたんだろう。
どんな人と出会ってきたんだろう。
どんな風に、世界を見てきたんだろう。
楽しいことはあったかな、
嬉しいことはあったかな、
悲しいことは、苦しいことはあったかな、
幸せを感じる出来事はあったかな。
どんなものを愛して、どんなものに愛されたんだろう。
そんなことを思う。
それぞれの宗教のお別れの仕方があるし、それにとらわれないお別れの仕方もある。
生き方が人それぞれであるように、お別れの仕方に同じものなんてない。
それでもこの仕事は、嫌でも慣れてしまうものがある。
毎回同じルーティンを辿るように、出会いから別れまで、涙と共に添い遂げる。
残された家族に大丈夫ですか?と聞きながら、
大丈夫ですよ、と言いながら。
大丈夫じゃないことは分かってる。
そんなの、大丈夫なわけない。
でも、それでも、時間は止められないから、進む手助けをしなければならない。
別れの時間は、長くなるほど後を引く。
本当は、人間の体なんて、あっという間に消えてなくなる。
でも、あっという間に消えてしまえば、心は追いつかないし、その時間が長いほど別れは辛くなる。
本当は、終わりの儀式なんて、どうでもいいんだと思う。
だって、本人は分からないから。
周りの人が、残された人が、これからの生きるための区切りとして、ただ大事なことなんだと思う。
一番大切なのは、生きてる時間だよ。
生きている今が、一番大事なんだよ。
語りかけるように、彼らは言う。
お別れの言葉は、悲しい。
生きている時に言えた言葉があるのは、もっと悲しい。
握り返さない手を握るのは、辛い。
冷たくなった体には温もりは戻らない。
その時になって、みんな思うのだ。
こんな風に触れたのは、いつだっただろうと。
温もりを、本当に覚えていられたほど、この人に触れてきただろうか。
手を、握っただろうか。
強く、抱きしめただろうか。
そう問いかけている時点で、答えはきっとYesではないのだ。
もしかすると、動かない体に語りかける言葉は、天国に行く彼らに、届くかもしれない。
でも、本当はきっと、生きている時に、言って欲しかったと思う。
まだそばで生きていたらなって、天国で思うと思うの。
言葉や行動に移さないと、伝わらないものは多い。
私の気持ち、わかってるよね。
ちゃんと伝わってるよね。
そう思っていても、やはり人は口に出すのと出さないのでは、大きく違うのだ。
伝えればよかった。
そんな後悔、出来るだけ軽い方がいい。
伝えたけど、もっと伝えたかった。
その方が、いい。
ねぇ、大切な人がいるのなら、
たくさん、抱きしめてあげてほしい。
大切な人たちを、たくさん抱きしめてほしい。
連絡をとってほしい。
会いに行ってほしい。
手を握ってほしい。
握り返してほしい。
笑いかけてほしい。
見つめ合ってほしい。
表情で語りかけてほしい。
言葉にして、伝えてほしい。
そんな風に、ふと思う時が多くあります。
そして私も、そうで在りたいです。
そんな話です。
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