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東北の海を見て、美しいと思えること。1。



仕事を退職して、時間ができて
行きたい場所を色々探していた時、
日本地図を見ながら
いや、行きたい場所じゃなくて、
行かなきゃいけない場所が私にはあるだろうと、我に返った。

学生時代にボランティアで訪れていた時も
その後働いてからも、たまにふと、
3.11で被害のあった色んなの場所を
ちゃんと自分の目で見なければ
そんな想いに、忽然と駆られる時があった。

本当のことを何も知らないまま、歳を重ねて、
あの日のことが遠い過去になって
そんなこともあったねと言ってしまう日が来るのかもしれない。
知らないままでいることが、たぶんずっと怖かった。


見えないものは知らないまま、
見えていたものはいつの間にか、
目に映らないものは意識しなければ
あっという間に記憶から消えていってしまうから。

私はずっと、知りたかったんだと思う。
あの日何があったのか、
どういう状況だったのか。
残されたものたちがなくなってしまわないうちに、
心から消えてしまわないように、
自分の目で見なければと思って。

震災から13年が経って
残っているもの、遺されたもの。
海水に浸かったものたちが、
ずっと残り続けることなんてない。
いつか消えてしまう。
残っている今、ちゃんと見に行かないと。

そう思って、仙台の夜行バスを取った。
東京から7時間。
仙台に着いて、レンタカーを借りた。



最初に向かったのは
せんだい3.11メモリアル交流館
ここは地下鉄荒井駅に併設されている施設で、震災の復興の様子をパネルで見ることができる。

当時の新聞を読みながら、この記事を書いた人たちが地元の状況をどんな思いで書いて、見ていたのかと思うと、胸がぎゅっと締め付けられた。

震災当時の新聞

その後向かったのは、荒浜地区基礎住宅
津波で流されてしまった住宅の基礎が残っている。

ここに沢山の人の家があって、暮らしがあった。
想像して、想いを馳せることしかできなかった。
ただこういう場所が、こうして訪れる私たちのために残されていることがありがたかった。


荒浜地区基礎住宅からすぐのところに
震災遺構荒浜小学校がある。
津波で大きな被害を受けたものの、津波避難対応の成功例として語られている学校だ。

浸水した場所はそのまま残っていて、波に浸かることのなかった教室では、当時の状況をビデオやパネル展示で見ることができる。
後から思うと、仙台から近い震災遺構ということもあり、他の遺構よりも来客数は多い気がした。
みんな、静かに、ゆっくりと見ていた。


お腹が空いたので、なにかグルメをと思って調べていると、私は今回の旅で岩手まで行けるかわからなかったので、絶対食べたかった盛岡冷麺を食べた。
スイカがのっていて、麺がもちもちで美味しかった。

お腹が満たされたので、車を走らせる。
途中、ブルーインパルスの本拠地である松島基地の近くを通った。
後程ブルーには会えるのでこの日はスルー。


たどり着いたのは、石巻市。
石巻市震災遺構門脇小学校。
ここは津波火災の被害が大きかった小学校を、震災遺構として残してある。
当時いた学生や職員は裏の山に逃げて無事だった。

ここは、本当に、建物に入った瞬間に涙が溢れた。
あの日、ニュースの映像で見ていた津波火災。
見ていて知っている気になっていたと痛感した。

当時の状況は自分が想像できるものではないけれど、この情景を見ていた人達の胸の内を想うと、涙がポロポロと溢れた。

大切なものが目の前で消えていく。その光景が、どれほどの思いだったか。
そこにいなかった私に、想像できるものではない。
ただどうか、ここにあった思い出たちがずっと、ここで生きた人たちの中で、
抱きしめられるものであってほしいと思った。


また車を走らせ、南三陸町へ。

この日宿泊したのは学びの里いりやど。
研修施設だけど、一般の人も、ひとりでも、宿泊できる。
夜ご飯はボリュームたっぷりで、具沢山のお味噌汁がとっても美味しくてほっとした。

事前予約制で、施設の人が3.11当時の南三陸のことを話してくれる震災学習プランというものがあり、それを聞きたかった。

参加者は私ひとりだったけど、館長さんが当時の街の状況をしっかりと、丁寧に話してくれて

なぜ今、震災のことを知ろうと思ってくれたのですか?

そう聞かれて、
私は当時岩手にボランティアに来た時のこと、
時間ができてやっと来れたこと、
震災遺構として残っているものたちのこと、
変わってしまった街のかたち、
過ぎていく時間の中で感じる3.11のこと
心にあった色んな自分の思いを話した。

そうすると館長さんは、
「震災の遺構は残さないでほしいという人が沢山いた。
見るだけでつらいという人が沢山いた。
けれど、それでも、10年以上経った後こういう出会いがあると、
あれらは未来のために残してよかったんだなと心から思える。ありがとう。」

そうおっしゃってくれて、
私は時間が経ってしまったけれど、私はここに来てよかったんだと、強く肯定された気がして、本当に嬉しかった。



自分の目で見て、土地を踏んで、風を感じて、人と出会って、対話をして。
そうやって知るもの、学ぶもの、感じるもの。
自分が思うよりも、ずっとずっと多いなと思う。
そしてほんの少しの色んなことが、きっとずっと、自分の心に残り続けるのだろうと、思う。

レポート1おわり。


#私のこだわり旅

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