『あなたがしてくれなくても』最終話について考える
フジテレビの木曜ドラマ『あなたがしてくれなくても』が最終回を迎え、その結末に賛否が巻き起こっている。
いや、賛否というより否しか見ないかもしれない。
不倫して、一回別れて、最終話でヨリを戻すという、不倫ドラマを好む層からするとあり得ないラストだという声が多く上がっている。
自分(男)も以前記事にも書いた通りこのドラマを観ていたのだが、個人的にはそんなに否定的には受け取らなかった。
なんならちょっと「よかったやん」とまで思った。
なぜ自分はこう思ったのか。そしてなぜ否定的な声が多くあがったのか。
自分なりに考えてみた。
「そもそも不倫ドラマではない」
これに尽きると思う。
たしかに不倫はしたが、この作品の主題は不倫ではなく、みちと陽一、誠と楓の「セックスレス」から起こる、お互いの距離感を描いたドラマだった。
つまり不倫ドラマとは似て非なるセックスレス・ドラマだ。
不倫という事実はこの距離感を描く中での要素の一つでしかない。
しかも不倫と言っても、両者とも完全に気持ちが移った相思相愛の不倫ではなく、みちは別に誠に対して恋愛感情を抱いている訳ではなく、恋愛感情はあくまでずっと旦那である陽一の方に向いていた。
そして陽一も不倫というか妻以外の女性とセックスをしてしまったが、恐らく「妻だけED」なのかを確かめるため、自分の男としての能力を確認するためにしていたのだと思う。
なので本気の不倫をしていたのは、誠だけだったと思う。
たしかに第三者から見れば、あそこまでやっていれば全部不倫に違いない。
ただこのドラマは第三者視点で見るよりも、誰かの視点で見る方が、描きたいものの意図が伝わるストーリーになっている。
最終話の1話前で、みちと陽一、誠と楓は離婚した。これでみちと誠がくっつくと予想した人も多かったと思う。
しかし実際は、みちが断った。
ではなぜ離婚を選んだのか。
一人で生きていく的なことを言っていたと思うが、決して諦めていた訳ではなかったと思う。
ただ意地の張り合いのようになったところはあると思う。
恐らく陽一が離婚届を一気に書くシーンのとき、すでに「止めてくれないかな」と思っていたのだと思われる。
というのも、みちは陽一が離婚届を書いたことに驚いていたし、「本当に書いちゃうの?」という面持ちだった。
そして陽一は「じゃあ、こうするしかない」という気持ちで書いていた。
そして恐らくこの時点でも、「引き止めてくれる」と、お互い思っていたのだと思う。
しかし、考えがすれ違ってしまったために、お互い引くに引けず離婚した。
ただ少なくとも、みちは陽一が「みちが引き止めてくれる」と考える人間であることは分かっていたと思う。
たとえば最終話で、部屋に来たみちが帰ろうとしたとき、陽一は痛いフリをして「看病してー」みたいな引き止め方をした。
しかしみちはそれがウソだと分かって部屋を出て、外で笑っていた。
こういう人間であることを分かっていたのだと思う。
ただしそんな陽一が離婚届を書いた。ここで陽一がヤケクソになっていることに気づけばよかったんだろうけど、純粋に驚いて、自分も引けなくなってしまったのだと思う。
セックスレスから気持ち・考えまですれ違うようになり、お互い素直になれなくなった。
しかし最終話で誠のアシストにより、陽一は自分の気持ちを伝えたし、それを聞いたみちも自分の気持ちに気づいた。
急に若年層向けの恋愛漫画みたいな展開にはなったが、つまりはこういうことなんじゃないかと思う。
お互い素直に気持ちを伝えあえるようになったのであれば、セックスができるようになったかもしれない。まだ出来ないかもしれない。
それは想像するしかないが、最後の姿を見ると、以前よりは幸せになれているのではないかと思う。