ドウデュースとジャスティンミラノ(ダノンデサイル)の末脚考察
◆1.ドウデュースは良い脚をどこまで長く使えるか
2024年ジャパンカップを考察
今年のジャパンカップのドウデュースのジョッキーカメラの武豊騎手のコメントによると
とのこと。
また2024年ジャパンカップの勝ち方も通過順的には4角で7番手まで押し上げてきているので、捲りをかけたようなレース評価を散見しますが、ドスローで隊列が団子だったのもあり、個人的にはまくりというほどの仕掛けをした印象はありません。
これが異常なスローペースでない、中央値的なペース、隊列のジャパンカップだったならば、ドウデュースの4角通過順は10番手前後だったと思います。
また7番手といっても、同率7番手みたいな馬が多数いて、まくり上げて7番手というよりは、スローのまま馬群が固まった状態なので外からそこまで加速させてないのに少し位置上げただけで7番手に来たというような形に見えました。
残り1000m前後から位置を上げていき勝った1999年スペシャルウィークとは違う戦い方
1999年ジャパンカップの大欅を超えてもう上がっていったスペシャルウィーク&モンジューは明らかに上がり3Fの競馬ではなく、残り900~1000mくらいから位置を上げていきました。
2006年ディープインパクトの勝ち方が2024年ドウデュースに最も近い
2024年ジャパンカップに近い流れだったのが2006年のジャパンカップでこれもスロー展開の中でドウデュースと同様最後方待機のディープインパクト武豊でしたが、ディープインパクト警戒もあるでしょうが隊列は動かず、大欅を超えてから徐々に位置を上げる馬が出てくるものの基本団子状態、ディープインパクトも大欅を超えて残り800を切り、残り650~700mから位置を上げる競馬で、団子状態だったので少し位置を上げただけで少頭数11番手から7番手まで上がったものの、1999年のスペシャルウィークのレースに比べたらほぼ上がり3Fのレースです。
ディープインパクトといえばドウデュース以上に長くいい脚を使う馬の代名詞のような存在の馬ですが、ディープインパクトですらスロー展開の中で2024年のドウデュースと似たような競馬しかできてないという意味では、確かにドウデュースはディープインパクト並に長くいい脚を使えたと言えるのかもしれません。
まあ着差という意味ではディープインパクトの方が完勝ではありますが、メンバーレベルを考えると2024年のジャパンカップの方が上かもしれません。
武豊騎手はドウデュースの末脚のことをかなり高く評価して、「こんな馬いない」みたいなことを言ってましたが…確かにディープインパクトに近いレースをして上回る上がりで勝ったと考えると馬場の差はあれどそう考えるのも全く分からなくはありません。
ただ、まくり方と早くから位置の上げていった部分でいうと1999年スペシャルウィークのジャパンカップの方が、コース改修前などの違いもありますが、長く脚を使ったのレベルや意味が違うので、個人的にはスロー予想ということもあってドウデュースが勝つならスペシャルウィークのような勝ち方になるかもと思っていた私としては、実際に想定以上の超スローペースかつ団子になったのに早めに位置を上げていかなかったこと含めて、基本的には瞬発力に自信はあるが、長くいい脚を使うという部分では本物の長くいい脚を使える馬と比べると劣るのかもという印象を持ちました。
瞬発力特化型で思い浮かぶサートゥルナーリア、ドウデュースの能力の活かし方が完全に分かっている武豊騎手の騎乗技術
2019年のダービーで、1番人気サートゥルナーリアは出遅れたこともありますが、直線で一旦は瞬発力を見せて3番手に立ちますが、ヴェロックスに差されて4着になってしまい、それだけを見たら失速した印象ですが上がりは最速でした。
ドウデュースは凄まじい瞬発力があるので末脚に自信があってペースが遅い割には遅仕掛け気味でも、一瞬で先頭を射程圏に捉えることができます。
一方、前述の通り、本物の末脚持続力を持つ馬に比べると劣る部分があるので、脚を早めに使うと、サートゥルナーリアのように最後垂れてしまうのではとも思われます。
ただ、サートゥルナーリアと違って、先頭に立つのが早くても、2024年ジャパンカップや、2022年日本ダービーのように粘って押し切る勝負根性と突き放すというほどではなくとも抜かせない程度に維持できる持続力があります。
武豊騎手が乗ると、その持ち味の使い方が絶妙かつ、最大限発揮できるので強いのだと思います。
◆2.トラッキングデータのスピードから考察
トラッキングデータ入りのジョッキーカメラが分かりやすいので見てみると、
・2023年有馬記念
残り約1200m地点のスピードが時速59.3km 13位
残り約750m地点のスピードが60.8km/h 11位
残り675m地点のスピードが62.0km/h 10位
残り639km地点のスピードが63.4km 9位
残り538m地点のスピードが64.2km 8位
残り230m地点のスピード65.0km/h 2位
残り約100m地点のスピード61.0km/h 2位
中山は直線が急坂ということもあってスピードが落ちていますが61kmで駆け上がっています。
残り56m地点のスピード59.8km/h 1位
残り0m地点ゴールのスピード59.2km/h 1着
推定上がり3Fは34.3秒、有馬記念としては早い上がり3Fです。
しかし最後は急坂があることもあって60kmを下回るスピードまで落ちています。
確かに2023年有馬記念のドウデュースは約675m地点くらいからスパートをし始めて、勝ち切っています。
「700m脚が保った」という感想も頷けます。
ただ、これも相対的な話であって、ドウデュース本来のスピードが700m保ったわけではなく、スピードははっきり落ちているものの、後続に追いつかれず、かつ先行勢を差し切る程度の持続力を見せたという形です。
中山は直線に急坂があって体力を消耗するので、急坂がなければ最後も60kmを下回ることはなかったと思いますが、単純なスピードで考えるとゴール前は道中の追走時よりも遅いスピードまで落ちているため、脚が700m保ったというのは相対的な話で絶対的な話ではないともいえる気がします。
ただ、一応この有馬記念では最後手前を変えずに走っていたので、実際見せた走り以上に余裕はあったかもしれません。
・2024年ジャパンカップ
残り1605m地点のスピード55.8km/h 14位
残り1378m地点のスピード60.3km/h 14位
残り約850m地点のスピード59.2km/h 12位
残り約650m地点のスピード60.7km/h 11位
残り617m地点のスピード62.1km 11位
残り565m地点のスピード64.3km/h 10位
残り528m地点のスピード66.1km/h 8位
残り474m地点のスピード68.1km/h 6位
残り424m地点のスピード69.0km/h 3位
残り395m地点のスピード69.1km/h 2位
残り389m地点のスピード69.0km/h 2位
残り336m地点のスピード68.0km/h 2位
残り287m地点のスピード67.2km/h 1位
残り222m地点のスピード67.0km/h 1位
残り218m地点のスピード66.8km/h 1位
残り153m地点のスピード66.0km/h 1位
残り93m地点のスピード65.0km/h 1位
残り0m地点のスピード62.6km/h ゴール1着
ドスローというのと中山競馬場と違って急坂がないこともあり、ゴール直前でも62km~63kmスピードが出ています。
最後まで2着同着のドゥレッツァ&シンエンペラーと僅差で争う展開だったこともあり、着差以上に余裕はあったが突き放せるほど余力もなく、出せるだけの末脚を出し切りながら粘りきったという形に思われます。
ドスローということを考えても時速62kmに到達したのが約620m地点なのでほぼ上がり3Fの競馬をやったという形だと思います。
武豊騎手の話だと残り700m~800mから動いて押し切ったみたいなイメージになりますが、まあ武豊騎手など超一流騎手独特の追わない追い方とか仕掛ける寸前の仕掛けというのもあるのでしょうが、ドウデュース自身がスパートを本格的にかけたのは残り約600~650mのあたりからだと思います。
上がり3Fがジャパンカップ史上最速の32秒7で、4F~5Fのロングスパートをやった上で上がり3Fも32秒台というのは化け物すぎますし、団子状態の中で化け物のようなスパートをやった割には2着との差が小さいですから、基本的には残り約3F地点からがドウデュースのスパートだったと思います。
今回のドウデュースは残り約620m地点から仕掛けて287m地点で先頭を捉えてそこから粘りきりましたが、ドウデュースはピッチが早くて瞬発力が異常に高いために約300mで先頭に届いてしまいました。
しかしそこからは相変わらずスピードを維持していながらも相対的には伸びずにドゥレッツァを離せませんでした。
そういう経緯だけを見たら、武豊騎手のコメントもあってドウデュースは早めに脚を使ってスパートしたという印象になりますが、実際はやっぱりドウデュースの本格的なスパートは残り3F前後から始まっていたと思います。
スローとはいえ上がり32秒台が出たのも上がり3Fの競馬をしたからこそだと思います。
この前残りスロー展開で上がり3Fの競馬で先頭に届くというのもドウデュースの凄さではあるのですが、逆に言えば良い脚を長く使うタイプの強い差し馬ならばもっと早めに仕掛けて行って4角でもっと先行勢を捉える位置に来て、持続力の差で最後捉え切るか突き放す戦法になると思います。
ドウデュースの場合は瞬発力が高すぎるので、先頭に並ぶのが速すぎました。ただその割には持続力が低いのか、前方で脚を溜めつつスパートした2着馬2頭とは僅差のままゴールまで叩き合いました。
このドウデュースの規格外の能力と、規格外ながらも効率的に使いづらい能力を見ると、上手く勝たせられたのは武豊騎手ならではという感じです。
とはいえ、2022年の日本ダービーでも思っていたより早めに先頭に立って乗っていた武豊騎手でも驚いたほどでしたが、イクイノックスの追撃をしのぎましたし、2023年の有馬記念では早めに脚を使ってコーナーを捲って脚を使いましたが、急坂の後も粘り切りタイトルホルダー、スターズオンアースらをかわし、ジャスティンパレスらの追撃も抑えました。
先頭に立つと少しふわふわするソラを使うところもあるものの、ダービーのように多少ソラを使ったとしても勝負根性を見せて粘れる持続力を持っていますし、持続力が無いとも言えないのですが、かといって2024年ジャパンカップのようにドゥレッツァやシンエンペラーを突き放して安全に勝つほどの持続力はないので、持続力が凄い馬と比べるとそれほど持続力はないと思いますから、2001年ジャパンカップでテイエムオペラオーを最後に差し切ったジャングルポケットや、1997年天皇賞春のサクラローレルを最後に差し切ったマヤノトップガンのような末脚を持つ馬の急襲があれば危うい所はあるかもしれません。
ドウデュースはジャパンカップでは残り617m地点で速度62kmに達し、ゴール時点でも62.6kmを維持していました。
これと比較したくなるのが東京競馬場芝2400mという同じ条件のレースで、同じくドスロー展開になった2024年日本ダービーです。
◆3.ジャスティンミラノの2024年日本ダービーのトラッキングデータ
残り934m地点のスピード62.0km 4位
残り785m地点のスピード64.2km 4位
残り506m地点のスピード67.6km 5位
残り472m地点のスピード68.7km 5位
残り387m地点のスピード66.0km 4位
残り169m地点のスピード62.7km 2位
ゴール地点のスピード59.3km 2着
2024年JCドウデュース以上に長く良い脚を使ったジャスティンミラノとダノンデサイル
まあ単純比較はできないのですが、同じドスロー展開でも、2024年ジャパンカップのドウデュースはレース後半に時速62.0kmを超えてから62.6kmまでスピードが落ちるまでの距離が617mでした。
2024年日本ダービーのジャスティンミラノはレース後半時速62.0kmを超えてから62.7kmまでスピードが落ちるまでの距離は934m-169mで765mありました。
まあドウデュースの最高速度が69.1km、ジャスティンミラノは最高速度68.7kmだったこと、ドスローとはいえドウデュースは追込、ジャスティンミラノは先行という差もあったり、春と秋の東京は少し芝の状態が違うなどもあり、単純比較するのは難しいところではあるのですが、ジャスティンミラノの方が脚を長く使えたという印象を持ってもおかしくはないと思います。
そして、大事なのはこのジャスティンミラノはその日本ダービーの勝ち馬ではないということです。
この2馬身前に、2024年有馬記念出走予定の日本ダービー馬ダノンデサイルがいました。
つまり、ダノンデサイルはこの2024年JCドウデュースよりも長く脚を使ったジャスティンミラノをも突き放して完封するほど圧倒的に長く良い脚を使ったということになります。
まあ最内で脚を溜めていたこともありますが、直線でジャスティンミラノを突き放し寄せ付けなかったダノンデサイルの末脚は凄まじく、同じ日本ダービーで3着に追い込んできたシンエンペラーが2024年ジャパンカップでドウデュースの僅差2着、それもあと50mあったら並べた、差せたかもとすら思える脚を最後見せたのを見ると、2024年の日本ダービーと2024年ジャパンカップの親和性はそれなりに近い可能性が示唆されます。
◆4.ダノンデサイルの可能性
ダービー好走馬が好走する2024年秋古馬王道G1
2024年天皇賞秋でも2022年ダービー馬ドウデュースの2着には2023年日本ダービー馬タスティエーラが入りました。
1馬身離された上にドウデュースの末脚の伸びは凄まじく着差以上の完敗でしたが、古馬G1で珍しく新旧日本ダービー馬による1・2決着でした。
2024年ジャパンカップでは2024年日本ダービー3着馬シンエンペラーが僅差の2着。それも天皇賞秋とは違い、ドウデュースを追い詰めての2着でした。
2024年有馬記念も日本ダービーの勝ち馬、好走馬が好走するとしたら、2024年日本ダービー馬ダノンデサイルが最有力です。
さらにダノンデサイルは前述のようにドウデュースを超えるほどのスピード、長く使える末脚を持つ可能性が示唆され、JCと同様のスローでダービー3着だったシンエンペラーがドウデュースと好勝負したことを考えると、ジャパンカップにダノンデサイルが万全で出走していたらドウデュースやシンエンペラー&ドゥレッツァの1、2馬身前にいた可能性があるかもと思います。
一方で次走、ドウデュースと最初で最後の対決となるのは天皇賞秋やジャパンカップとはコースや距離が異なる有馬記念ですから、単純にJCとダービーの内容を比較して強いからといって、ダノンデサイルが有馬でも強いレースができるかは分かりませんが、ドウデュースが強さを発揮するレースでも同じくらい好走できるくらいの絶対能力、ポテンシャルを感じさせる馬だと思います。