
2024年有馬記念の考察展望2 逆襲の秋
◆1.2024年秋G1は悲願成就、逆襲雪辱の多い秋

2024年秋はスプリンターズSのルガルの逆襲の初G1制覇&西村淳也騎手の初G1制覇に始まり、春は注目馬の1頭でありながら凡走続きだったアーバンシックが菊花賞でG1初制覇。
また、昨年は武豊騎手がレース当日に負傷し騎乗できなくなったこともあり、天皇賞秋・ジャパンカップともに凡走となったドウデュース、年末の有馬記念でタッグ復活後即優勝し、やはり武豊騎手とのコンビは無敵か、と思われたものの、2024年の春はドバイターフ5着、宝塚記念6着とともに1番人気を背負いながら期待を裏切る凡走。
凱旋門賞挑戦を撤回し年内引退が決まった中で正念場を迎え、武豊騎手とともに天皇賞秋を逆襲の末脚で制覇。同じく昨年武豊騎手が乗れなかったジャパンカップも昨年の鬱憤を晴らすように制覇。
マイルCSでは常にマイルG1戦線の主役の1頭でありながらもG1勝利できなかった6歳馬ソウルラッシュがついにG1初制覇。
エリザベス女王杯では2022年3歳時に秋華賞を制覇したものの、そこからG1好走はおろか重賞3着以内すらなかったスタニングローズが復活のG1制覇。
チャンピオンズカップでは絶対王者ではありましたがレモンポップ騎乗の坂井瑠星騎手は今年、フォーエバーヤング、シンエンペラーで日米ダービー3着、愛チャンピオンSやBCクラシックでも3着と世界の大レースで好走しつつも3着止まり、ジャパンカップでも2着同着とG1では有力馬に乗りつつも惜しいレースが続いていた中で、久々にG1勝利。
阪神JFでは若手トップジョッキーの1人でありながらG1制覇がなかった岩田望来騎手がG1初制覇。
朝日杯FSでは"アドマイヤ"の冠名で知られる故近藤利一氏から馬主名義と冠名を引き継いだ近藤旬子氏が引き継ぎ後初G1制覇。
悲願の初制覇であったり、久々の制覇、雪辱の制覇、逆襲の制覇が多い秋G1となっています。
◆2.逆襲ポイント不足?のドウデュース

有言実行で逆襲ポイントを使い、天皇賞秋、ジャパンカップを快勝で連勝してきたドウデュース。
絶好調なのはいいものの、逆襲のドウデュースということを考えると、逆襲ポイントはもう使い切ってしまった可能性があるかもしれません。
これで武豊騎手が1番人気馬に騎乗した前週の朝日杯FSでドウデュース以来の制覇をしてしまったら…と思ったもののそこでは、まあ不本意でしょうが武豊騎手騎乗のアルテヴェローチェは5着敗退。少し逆襲ポイントが溜まりました。
…と思ったら、ドウデュースと同じ友道康夫厩舎の管理馬アドマイヤズームが優勝。
2歳G1朝日杯は基本的に12月3週に開催。有馬記念は12月4週に開催ということで、その2レースを制覇すれば2週連続G1制覇となりますが、実はこれまで、朝日杯と有馬記念を同一年度に同じ厩舎の馬が勝ったことはありません。
まあ偶然とは思いますが、ドウデュースにとっては少し不穏なデータです。

◆3.逆襲ポイントが溜まっている有力馬
1.秋天以降の重賞&G1不調が続くC.ルメール騎手のアーバンシック

2024年もトップジョッキーだけあって抜群の馬質を誇るルメール騎手ですが、秋はいきなり秋華賞&菊花賞を連勝し、「やっぱり競馬はルメール」と印象付けましたが、その後は相変わらず上位人気馬に騎乗しながらも勝利はおろか3着以内からも遠ざかっており当然ながら全て人気より下の着順で、G1では不調が続いています。
しかし逆襲ポイントが大事な2024年G1と考えると逆襲ポイントが溜まってきてはいるので、アーバンシックとともに有馬記念を勝つ態勢は整ってきているのかもしれません。
記者会見でも久々に「勝つ自信があります!」が聞けましたから、期待です。
2.菊花賞不完全燃焼のダービー馬ダノンデサイル&オグリVSライアンの逆襲をかける横山典弘
凡走と逆襲の優勝を繰り返すダノンデサイル
ダノンデサイルは皐月賞除外から9番人気でダービーを制しました。
しかしその勝ち方があまりにも圧巻で、1番人気の無敗の皐月賞馬ジャスティンミラノを突き放した走りは高く評価され、菊花賞では1番人気に支持されました。
しかし、その菊花賞では内枠で包まれるなど不利を受け、勝負所で後手を踏まされての6着と凡走してしまいました。
その走りは賛否両論で、絶望的な展開から良い末脚を最後使って6着まで盛り返したことで高く評価する意見と、所詮は離された6着という評価でよくいるダービーだけで終わるG1馬になりそうというような評価に分かれています。
ここまで除外含めて、1着と4着以下を繰り返す戦績であり、その通りになれば今回は1着の順番がきています。

今回は再び逆襲のランでダービーで倒したジャスティンミラノと同じ友道康夫厩舎のドウデュースを倒せるか注目となります。
ラストランの武豊を3歳お手馬で倒したい横山典弘騎手
横山典弘騎手の有馬記念初騎乗は1990年でした。
オグリキャップ伝説のラストランの年で、横山典弘騎手のメジロライアンはクラシックの最有力馬の1頭でありながら未勝利に終わり、G1初制覇を目指して有馬記念に出走しましたがオグリキャップ武豊騎手の前に2着となっています。
今回も武豊騎手が騎乗するのは引退レースとなる5歳馬ドウデュースで、1990年のオグリキャップも5歳馬で引退レース。
横山典弘騎手が騎乗するのは3歳馬ダノンデサイルで、1990年のメジロライアンも3歳馬でした。
今度こそ当時のリベンジをかけるような気持ちでダノンデサイルを優勝に導く所を見てみたい気がします。
もちろん武豊騎手がラストランを飾ればそれは画になるでしょうけれど、それだけが競馬やドラマではないという所も見たい所です。
皐月賞も除外を選んでのダービー制覇、菊花賞も無理をさせない騎乗での凡走からの今回、有馬記念制覇となれば、横山典弘騎手の馬優先主義の哲学が具現化したような馬だと言えそうです。
3.G1で好走続きも勝利が遠いスターズオンアース
昨年の有馬記念では史上初めて8枠16番から2着に入ったスターズオンアース。
不利な枠に入ることも多かったものの常に3着以内に好走してきました。今年に入ってからは調子を崩したり、前走ジャパンカップで再び大外枠に入る不利もあり2戦続けて3着を外しています。
しかし、本来は不利な枠を覆しても好走できるほどの能力を持つ馬なのでここで逆襲のG1制覇を目指したいところでしょう。
4.悲願のG1初制覇を目指す愛されホース・ディープボンド
ディープボンドは天皇賞春で3年連続2着、4年連続3着以内、2021年は有馬記念2着とG1で何度も好走していますが、G1勝利がありません。
有馬記念は2着した経験がある舞台なので、チャンスはあります。
7歳馬ですが調教時計では自己ベストを記録したらしく、感動のG1初制覇の可能性も0ではないかもしれません。
5.人馬ともに悲願のG1初制覇がかかる三浦皇成騎乗プログノーシス
プログノーシスは香港最強馬ロマンチックウォリアーと常に接戦を演じたり、天皇賞秋でイクイノックスの3着、今年は豪州G1コックスプレートでも勝ち馬には離されたものの2着、G2金鯱賞では今年ジャパンカップ2着の菊花賞馬ドゥレッツァに5馬身差で勝つなど世界・現役上位の実力を見せているもののG1未勝利です。
基本的に2000m前後のレースにのみ出走し続けてきましたが6歳秋になりついに2500mの有馬記念に出走してきました。
今の所衰えは見せていませんが、そろそろ衰えが出てきても不思議ではない年齢で、ここで悲願のG1初制覇を目指したいところです。
そしてプログノーシスの手綱を取るのが通算1000勝騎手でありながらG1未勝利(中央G1)の三浦皇成騎手。
優勝すれば人馬ともに中央G1初制覇ということになります。今年は秋だけでなく春も騎手のG1初制覇が多い年でしたが、もし三浦皇成騎手が中央G1初制覇となれば、ドウデュース&武豊騎手の話題性をもある意味上回るかもしれません。
6.大阪杯僅差2着、BCターフ僅差2着のローシャムパーク、国内重賞未勝利マーカンド騎手
ローシャムパークは大阪杯はベラジオオペラの僅差2着、BCターフでは世界最強馬の1頭レベルスロマンスの僅差2着とG1級の実力を証明しながらG1未勝利です。
有馬記念は舞台も東京よりは合いそうで、G1初制覇の可能性は十分期待できそうに思われます。
また、ハービンジャー産駒といえばブラストワンピースが2018年有馬記念を勝っていますし血統的にも問題はなさそうです。
一方、今回騎乗するのは初コンビとなるT.マーカンド騎手。
欧州の名手ではありますが、日本国内の重賞は未勝利で、好走も少なく、近年よく来日してる割には重賞での存在感が薄い状況です。
個人的には、2022年ジャパンカップのデアリングタクト(4着)の騎乗で、進路を失ったことで勝てるレースを落とした印象も強いですが、ただ、本来の伸び脚が見られなかった故障後のデアリングタクトが初めていい脚を見せたレースだったと思っていて、マーカンド騎手のコンタクトの取り方や追い方がデアリングタクトと合ったからこそだと思っています。
デアリングタクトも欧州的な影響が強い血統のエピファネイア産駒で、ローシャムパークの父ハービンジャーも欧州血統ですから、相性がいいことを期待します。
そういえばルメール騎手も日本重賞初勝利があの2005年ハーツクライの有馬記念でした。つまり重賞初勝利がG1初勝利でしたから、短期免許外国人騎手にとって重賞未勝利や初重賞制覇がG1勝利になることは不思議ではな
いのでマーカンド騎手の逆襲にも期待したい所です。
7.3歳不振レガレイラ、逆襲の戸崎圭太騎手

レガレイラは昨年、牝馬でありながら牡馬混合2歳G1ホープフルSを制覇しました。2着は今年のジャパンカップでドウデュースを追い詰めて2着のシンエンペラーでした。
しかし、3歳になってからは皐月賞、日本ダービー、エリザベス女王杯と続けて上位人気に支持されながらも4着以下凡走。前哨戦G2ローズSですら展開が向かないとはいえ5着でした。
しかもトップジョッキー・ルメール騎手が騎乗しての結果ですから文句も言えません。
1998年グラスワンダーを少し思い出させる雰囲気の戦績
2歳王者、2歳中山G1制覇、3歳になってから不振の中で有馬記念出走…というと思い浮かぶのが1998年の有馬記念覇者グラスワンダーです。

グラスワンダーは朝日杯(当時中山開催)をレコードで制し無敗の2歳王者になりましたが故障。
3歳秋の復帰後はハイレベルメンバーだったスーパーG2毎日王冠はともかく、メンバーレベルが高くなかったアルゼンチン共和国杯でも4着以下でした。早熟説や距離限界説などをささやかれる中で、ジャパンカップを回避して臨んだのが有馬記念で、見事に復活勝利しました。
レガレイラも2歳時は牝馬でありながら牡馬を倒してG1制覇というウオッカやグランアレグリアですらできなかった偉業を成し遂げましたが、3歳では牡馬クラシックだけでなく牝馬限定重賞・G1でも展開の不利の影響も大きいとはいえ勝ち負けできず、不振が続いています。
有馬記念は勝ったホープフルSと同じ中山競馬場での開催で、外回り内回りの違いはありますが、2歳時を思い出したような快走を見たい所です。
友道康夫厩舎、ドウデュースに因縁のある戸崎圭太騎手
レガレイラに騎乗する戸崎圭太騎手は、今年友道康夫厩舎のジャスティンミラノに騎乗して皐月賞を制覇し、日本ダービー2着となっています。
また、昨年の秋古馬G1では武豊騎手がレース当日負傷による急遽乗り替わりで今年の最有力馬ドウデュースに代役騎乗しました。
しかし、残念ながらドウデュースに騎乗した時には結果を残せず、ドウデュースは武豊騎手に手が戻ったら即有馬記念を優勝、昨年戸崎騎手と出走して凡走した天皇賞秋、ジャパンカップも今年は武豊騎手とともに連勝と、相性の差を見せつけられる形になってしまっていますから、ドウデュースの引退レースとなる今回の有馬記念で逆襲の騎乗を見せてドウデュースを倒して、戸崎圭太ここにありをドウデュース&武豊騎手に見せつける所も見てみたいです。
戸崎騎手は2014年にジェンティルドンナで有馬記念を勝っており、そのときもジェンティルドンナは5歳となって衰えが見えてきており、そもそも適性も有馬記念には合わない馬だったと思われますが、2014年は中山競馬場の路盤改修元年の年で、主流血統が好走しやすくなった年でした。
さらに、スローペースとなったことで内枠から上手く先行したジェンティルドンナ&戸崎騎手には向いたことで復活&有終の美となるラストランが完成しました。
今年の有馬記念もスローペースが予想されており、また、今年の中山はクッション値がかなり高く硬い超高速馬場になりそうという状況です。
クッション値が高いと先行有利になりやすいので、基本的に追込のレガレイラにとっては難しい所ですが、戸崎騎手は追い切りでの騎乗で操縦性に好感触を持ったようで、もしかしたらレガレイラの成長と戸崎騎手との相性で上手く好位につけて快勝ということもあるかもしれません。
8.横山和生騎手の逆襲~タイトルホルダーのラストラン~
昨年ドウデュースが勝った有馬記念はタイトルホルダーの引退レースでもありました。
タイトルホルダーは果敢に逃げを打ち、1着ドウデュース、2着スターズオンアースと僅差の3着に好走しました。
見事な走りでしたが優勝で有終の美を飾ることはできませんでした。
そのタイトルホルダーの主戦として騎乗していたのが横山和生騎手でした。
今回はドウデュースが引退レースとなりますが、遠慮は要らないということは横山和生騎手も昨年身をもって分かっているはずで、このままいくとベラジオオペラが逃げる可能性が高いメンバー構成で、昨年のタイトルホルダーの分も背負って逆襲のランでドウデュースや同じく引退を予定するシャフリヤール、スタニングローズらに引導を渡す走りを見せてくれるかもしれません。
◆4.個人的に見たい逆襲
個人的には馬としてはディープボンド、ローシャムパークのG1初制覇を見たいです。
騎手としては横山典弘騎手の久々有馬記念制覇、戸崎圭太騎手の逆襲の有馬記念制覇、マーカンド騎手のG1初制覇が見たいです。