バイデン政権の「反中政策」阻止で協力求める─米企業経営者らに中国外務省高官

 中国政府はバイデン政権の「反中政策」を阻止するため、米経済界に対する工作を強化している。外務省が開いたオンライン会合では、同省高官が公然と米企業経営者らに対し、対中制裁関税の撤廃などを求める中国の働き掛けに協力するよう要請。しかし、露骨な動きはかえって米側の警戒を強める可能性があり、どの程度の効果があるのか疑問だ。

■「関係悪化すれば、大もうけできない」

 中国外務省の発表によると、謝鋒外務次官は11月30日、米国の商工業界や州・市代表とのオンライン会合を開催した。中国で活動する米商業会議所、米中貿易全国委員会、米各州の在中国協会などの関係者が参加した。
 謝氏は会合で演説し、米中関係に良い影響を与える最近の重大事として、同8~11日の共産党第19期中央委員会第6回総会(6中総会)での歴史決議採択と16日の米中首脳オンライン会談を挙げ、中国市場のビジネスチャンスは今後も大きいとした上で、以下のように語った。
 一、中米経済・貿易協力は真空の中で発生しているわけでなく、必然的に中米関係の大環境の影響を受ける。大環境が良ければ、協力はスムーズに進むが、両国関係が悪化すれば、ビジネス界は「黙々と大もうけする」ことができなくなる。
 一、過去40年以上、皆さんは中国に関する報告で、中米経済・貿易協力は互恵とウィンウィンであるという真実の状況を伝えてきた。引き続き重要で独自の役割を果たし、声を上げ力を尽くして、正義のために正論を述べ、米政府が理性的かつ実務的な対中政策を行い、貿易戦争、産業戦争、科学技術戦争をやめ、価値観・イデオロギー・地政学的な対抗と衝突をやめるよう働き掛けてほしい。
 一、米国は現在、政治的な正しさが全てを圧倒しており、中国の文化大革命を思い出させる。中国に対するデカップリング(分断)・供給遮断などは市場の規律に反し、世界経済を二つの体系に分裂させるものだ。ビジネス界の友人たちが明確に経済・貿易問題の政治化や国家安全保障概念の乱用に反対し、バイデン政権が対中割り増し関税を取り消し、中国企業に対する圧力と制裁をやめ、イノベーション・競争法案などの可決を阻止するよう働き掛けてほしい。
 一、台湾、新疆、香港、チベット問題は中国の主権・安全・発展などの核心的利益に関わり、中国側に妥協の余地はないことを(米側参加者)各位はよく分かっていると思う。あなた方が影響力を発揮して、米政府が実際の行動で中米の三つの共同コミュニケを順守し、真の「一つの中国」政策をきちんと守って、絶対に歪曲(わいきょく)したり改ざんしたりせず、ましてや否定など許さないよう促してほしい。

■習主席の対米企業配慮アピール

 謝氏はこのように米企業にあれこれ注文をつける一方で、「今後15年、中国は毎年、約2兆5000億ドル(約280兆円)相当の商品・サービスを輸入する。航空業界は2040年までに約8700機の航空機需要がある」などと中国市場の魅力をアピールした。
 また、参加者に直接関係する問題として、新型コロナウイルス対策のための規制が続く中で訪中する米ビジネスマンができるだけ早く中国で活動できるようにする措置をさらに改善すると習近平国家主席が発表したことを紹介。「習主席が自ら関心を寄せ、自ら解決に動いた」と強調した。
 この措置については、秦剛駐米大使も12月2日にワシントンで開かれた米中貿易全国委の夕食会であいさつした際に触れ、習氏から指示があったことを明らかにした。夕食会にはキッシンジャー元国務長官、ロイ元駐中国大使、フェルナンデス国務次官(経済成長・エネルギー・環境担当)らが出席。秦大使は「中国は将来、世界最大の商品消費市場になる可能性がある」「経済・貿易協力は一貫して、中米関係の『安定装置』『推進装置』だ」とアピールした。
 これに対し、同席したフェルナンデス氏は、中国が「国家中心の経済モデル」を追求していると強く批判した。具体的にはインターネットサービスやメディア、映画などの市場の閉鎖性、国の企業に対する不公正な補助金、知的財産の強制移転を挙げ、香港・新疆問題にも言及した上で、中国モデルは「市場を基礎とするグローバルシステムと全く合わない」と断定した。
 米中交流団体の会合で高官がこれほど厳しい発言をすることからも、米政府の対中認識がいかに厳しいかが分かる。中国側は、経済的利益をちらつかせて外国に譲歩を迫る昔ながらの手法がまだ通用すると考えているようだが、米議会にも軟化の兆しはなく、上院は12月16日、人権侵害を理由に新疆ウイグル自治区からの輸入を禁止する法案(下院可決済み)を全会一致で可決。米政府も同日、新疆の人権問題に関連して、中国の42企業・団体を制裁対象に指定している。(2021年12月19日)

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