巨大な移動式クレーン車を操る醍醐味とは?この道40年のプロが語る「相棒」の存在
働く人にとって、日々扱う道具は「相棒」と言っても過言ではありません。
相棒とどのように出会い、どんな思い出を刻んできたのか。
長らく使ってきた道具に焦点を当てると、その人の個性やこだわりが滲み出てきます。
今回の「相棒」は、(株)宇佐美運輸機工の野中正一さんが扱う70t移動式クレーン車にフォーカスしました。
空に向かって高々と伸びるクレーンの姿は車両のカラーも相まって巨大なキリンのようにも映りますが、その特殊さゆえに野中さんにおいて今では切っても切り離せない存在となっています。
巨大な車両に秘められたコンパクトでスムーズな特性
ー「相棒」と出会ったきっかけは。
野中
「新しく日本に輸入が開始されると聞いたことがきっかけです。当時、社内には20tクラスのクレーン車しかなく、建屋内で作業できるものがありませんでした。1億円以上する高価な車両ですが、国内で同等のクラスのモノが無かったことから社内で検討を重ねて購入を決めました」
ーどんな時に相棒は活躍していますか?
野中
「工場などの建屋内で産業機械や重量物を据え付ける際に活躍しています。通常、クレーン車は屋外作業をメインに用いられますが、この車両は旋回やアウトリガによる固定などをコンパクトなスペースでこなせることから当社では屋内専用として使ってきました」
エース級で活躍する車両の魅力と作業で欠かせない安全意識
ーそんな相棒にはどんな「個性」がありますか?
野中
「2つのレバーで旋回や巻き上げなど全ての操作をこなせることですね。それまで使っていたクレーン車は各作業ごとにレバーやスイッチがあったので操作を覚えるまで感覚を掴むことが大変でしたが、慣れてしまった今ではむしろこちらの方が扱いやすいと感じています」
ー印象に残っている思い出を教えてください。
野中
「このクレーンの能力の高さに助けられています。70tクラスのこのクレーン車は国内でも10数台しかなく、西日本(大阪除く)では当社のみで、社内でもエース級に活躍してきました。屋内でクレーン車による作業が可能になったことで、油圧リフターを使って据付作業をするときよりも日数、工数が断然少なくなって今では欠かせない存在ですね」
ー産業機械や重量物の据付工事の際に意識していることはありますか?
野中
「とにかく全ての物事で『無事故』を基準に置いて考えています。1つの事故が生じると、信用を失うだけでなく人命にも関わることにもつながりかねません。社外の現場を訪れての作業となるので、常に周囲には第三者が居ることを意識しながらこれまで作業をしてきました。そうした環境でクタクタになりながらも皆でやり遂げた時にこの仕事での達成感を感じます」
仕事に対する強い自負を後進の育成につなげる
ーもし相棒が現れなかったら、どんな社会人生活になっていましたか?
野中
「なかなか想像するのが難しいですね… キツイ現場もありますが、何よりも達成感に勝るものはないですし、自分に向いている仕事だと思っています。他社では屋根を外したり、入口を取り外したりしないとできないと言われた難しい案件でも、当社は何度もこなしてきました。そうしたこれまでの実績が自負となって続けられたのだと思います」
ーこれから相棒とどのように付き合っていきますか?
野中
「クレーン車は新しい機種が次々出るので、それに合わせてレベルを高めることが大切だと思っています。クレーン車に限らず、社内で後継者を育てることも私の大切な使命です。操作自体は数か月で一通り覚えられますが、現場での経験値を重ねて1人前に育てるには4~5年かかります。今からでも遅いくらいですが、少しでも後進の育成につながる動きをしていきたいです」