「先を見て、周りを見て、挑戦して」。CADのスペシャリストが語る組織を動かす上で大切にするスタンスとは
働く人にとって、日々扱う道具は「相棒」と言っても過言ではありません。
相棒とどのように出会い、どんな思い出を刻んできたのか。
長らく使ってきた道具に焦点を当てると、その人の個性やこだわりが滲み出てきます。
今回の「相棒」は、(株)アイム製作所の九十九友施さんが扱うCADに焦点を当てます。
日々当たり前のように扱い続けてきたシステムを通じ、九十九さんは組織において先々を見据えて取り組むことの難しさや大切さを痛感してきました。
手作業から置き変わり、当たり前のように使ってきた『相棒』
ー「相棒」と出会ったきっかけは。
九十九
「このCADシステム自体は入社した当時から社内に導入されていましたが、当時はグループで数台しか使えるパソコンが無かったため手書きでの製図がメインでした。入社から4~5年ほど経ち、社内で1人1台ずつパソコンが配備された頃から当たり前にCADを使うようになったと思います」
ーどんな時に相棒は活躍していますか?
九十九
「当社は港湾施設で使われるコンテナクレーンや下水処理施設などで使われる制御装置を手がけていますが、その設計をする際にこのCADを使っています。入社以来制御装置の構造設計を担当してきたため、製作品の図面や組立図面を作成する際にこのCADを使い続けてきました」
会社全体を巻き込むプロジェクトで学んだ組織との向き合い方
ーそんな相棒にはどんな「個性」がありますか?
九十九
「システム自体はアップデートを繰り返していますが、沢山のコマンドがある点が特徴的だと思います。サイズに関係なく尺度の調整や寸法の記載ができて流用性が高い点は、鉛筆と電卓を使って紙に記していた頃と段違いに変わりました。その上でCADで製図したものは、モノづくりをする現場の人たちへ向けた大切な伝達手段ですね」
ー印象に残っている思い出を教えてください。
九十九
「CADシステムを会社全体で運用するプロジェクトチームを立ち上げた時が最も大変でした。回路設計、構造設計、製造部門でバラバラだったデータの運用を連動させるための取り組みでしたが、従来のやり方を変えることに対する反発が大きく、目標設定を高く設けたこともあって最終的に2~3年を要して本当に苦労しました…」
ー会社全体を巻き込むとなると、相当な労力を要しますよね…
九十九
「『会社をよくしよう』と思いながらやっていましたが、取り組みを理解してもらうため繰り返し周囲に促していたので啓発活動のような状況でした。それだけに、最終的に軌道に乗った時は達成感がありましたね。現在も社内の各種データの『見える化』を推し進めていますが、未来を見据えて物事を進める大切さは当時の経験や考え方が生かされていると思います」
先々を見据えて物事に取り組む姿勢を次世代に
ーもし相棒が現れなかったら、どんな社会人生活になっていましたか?
九十九
「中学生の頃にイスを作る授業で図面を書いた時から、設計の仕事には漠然と興味を持っていました。長らくこの仕事を続けたことで、『形あるものを見る感性』みたいなものは身に付いたのかと思います。建物やモノを見た時にその構造を意識して見るセンスは、この仕事をしていなければ気づかないままだったかもしれません」
ーこれから相棒とどのように付き合っていきますか?
九十九
「CADの世界でもAIをはじめとした新しいテクノロジーが取り入れられつつありますが、時代のトレンドを追い求めながらブラッシュアップを進めたいと思っています。そのためにも『先を見て、周りを見て、挑戦して』といった考え方は大切ですし、できないと思い込まないような環境を作れるように周囲に働きかけていきたいです」