Ai Micro-Nikkor 55mm F2.8sを整備して,スナップ写真を撮ってみた
おつかれさまです.これまでニコンFマウントの標準焦点距離マイクロ(マクロ)レンズにこだわり,同じようなレンズを揃えて試しているのだが,最良のマイクロレンズはどれか?という疑問に答えるときが来たようである.ただし,あくまでもNikon ZfcとFTZを組み合わせて,マニュアルフォーカスで使う場合である.
候補にあがったのは、
a) Ai Micro-Nikkor 55mm F3.5
b) Ai Micro-Nikkor 55mm F2.8s
c) Ai AF Micro-Nikkor 55mm F2.8s
d) Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8s
の4本である.
どれも秀悦なレンズだが,c), d)はAFレンズということもあり,マニュアルフォーカスの操作性には疑問がある.特にc)はリング自体が狭くてラバーも貼ってないのでそもそも回しにくい.d)は,フォーカシングリングの回転ストロークが小さく,微妙なフォーカシングは難しい.一方でa)とb)は,金属製ヘリコイドのヌメっとした操作感が絶妙で,フォーカシングがやりやすい.しかし,Nikon ZfcとFTZの組み合わせでは,Exif に撮影時の絞り値が記録されないという問題がある.操作性を優先させるなら,a)かb)なのだが,やはり不満が残ってしまった.
しかーし,そうだタンポポチップがあったではないか!それなに?と言う方は,こちらの素晴らしい記事を参照してほしい.簡単に言うと,Ai-s Nikkorに装着して電子接点を取り付け,カメラ側からの絞り制御を可能にするパーツである.当然カメラはレンズの絞り値を認識しているので,Exif に撮影時の絞り値が記録されるようになる.a)のレンズはAi-sではないので装着しても正常に動作しないが,b)では正常動作するはずである.
というわけで,b)のAi Micro-Nikkor 55mm F2.8sにタンポポチップを装着してみることにした.タンポポチップはeBayから注文した.いま所有しているこのレンズは,かなり外装がくたびれているので,タンポポチップが届くまでの時間を利用して,程度の良いレンズを入手して整備しておこう.
タンポポチップの装着
待つこと2週間足らずで,意外と早くタンポポチップがロシアから我が家に届いた.Ai Micro-Nikkor 55mm F2.8sのほうは,幸いにも新品同様のものが,オークションでびっくりするほど安く入手できたので,分解・整備は必要ない.
タンポポチップの取り付けは,両面接着テープで固定することにした.この際注意しなければならないのは,厚さがだいたい0.5mm以下の,極薄のテープを使うことだ.タンポポチップの背面にテープを貼ると,テープの厚みの分だけ接点同士が接近するので,厚いテープを使うとレンズを装着した途端にタンポポチップを壊してしまう.(というか,私は壊してしまいました.)
タンポポチップの取り付けができたら,設定にとりかかる.ところがいざやろうとすると,ZfcにFTZを介してレンズを取り付けた場合,設定モードに入れなかった.どうも,Fマウント一眼レフのデジタルカメラが必要なようだ.ところが,Zfcを買うために一眼レフは売り払ったので,手元にはない.結局安くてCCDセンサの色味がおもしろそうな,Nikon D40を安価で購入した.設定の手順は以下のとおりである.英語のマニュアルはここにあるので,他の焦点距離の場合は参照されたい.
カメラ側の設定
カメラのフォーカスモードをマニュアルにする
カメラの撮影モードをマニュアル(M)モードにする
カメラの電源をOFFにし,レンズを取り付け,電源をONにする.
F2.8と表示されれば正常である
開放絞り値の設定
シャッタースピード1sec.でシャッターを切る.
シャッタースピード5sec.でシャッターを切る.
シャッタースピード1sec.でシャッターを切る.
→プログラムモードに入り,絞り値の表示が自動的に変わっていく.
F2.8のところでシャッターを切る.
→絞り値の表示が自動的に変わっていく.
装着したレンズの最大絞り値(F2.8)のところで,シャッターを切る.
→電源スイッチを切る.
焦点距離の設定
シャッタースピード1sec.でシャッターを切る.
シャッタースピード5sec.でシャッターを切る.
シャッタースピード1sec.でシャッターを切る.
→プログラムモードに入り,絞り値の表示が自動的に変わっていく.
F4.5のところでシャッターを切る.
絞り値の表示が1.0から90まで自動的に変わっていく.
5.0のところでシャッターを切る.(他の焦点距離についてはマニュアル参照)
→電源スイッチを切る.
最小絞り値の設定
シャッタースピード1sec.でシャッターを切る.
シャッタースピード5sec.でシャッターを切る.
シャッタースピード1sec.でシャッターを切る.
→プログラムモードに入り,絞り値の表示が自動的に変わっていく.
F40のところでシャッターを切る.
絞り値の表示が1.0から90まで自動的に変わっていく.
装着したレンズの最大絞り値(F32)のとこでシャッターを切る.
→電源スイッチを切る.
レンズ側AF/MF切り替えスイッチの設定
これは,レンズ側のAF/MFの切り替えスイッチを切り替える機能である.もちろん実際にはマニュアルフォーカス(MF)レンズにこの切り替えスイッチはないのだが,MFに切り替えておくと,カメラがAFモードでもレンズを装着すると,強制的にMFモードに切り替わってくれる.デフォルトはAFモードのようだ.
シャッタースピード1sec.でシャッターを切る.
シャッタースピード5sec.でシャッターを切る.
シャッタースピード1sec.でシャッターを切る.
→プログラムモードに入り,絞り値の表示が自動的に変わっていく.
F5.6のところでシャッターを切る.
→電源スイッチを切る.
これで設定は終了である.絞りリングを最小絞りの32にすると,カメラ側からレンズの絞りを制御できるようになる.Exifにも設定した絞り値が記録される.
まとめ
Exifにレンズ情報が記録されるようになって,鬼に金棒である.タンポポチップは両面テープで固定しているが,今のところ問題ない.しかし近い将来に,エポキシ系接着剤で固定しようと思う.まあこのレンズは,ずーっと自分が使い続けるつもりなので問題なしである.
ところでこのレンズは銘玉と呼ばれて,いまでも根強い人気のあるようだ.比較的コンパクトで軽く,目盛りがカラフルでかっこいい.開放F値が2.8 で,ちょっと暗いと思うかもしれないが,現代のカメラは高感度性能が優秀だし,絞り開放からシャープでボケも綺麗なので,問題ないと思う.
接写リングを使わないと等倍撮影はできないが,花撮影やテーブルフォトには十分な接写性能である.なんといっても,フォーカスを合わせる際の,手に吸い付くようなヌメっとした感触が楽しくてたまらない.
ちょっとだけ作例
やはり銘玉と呼ばれるだけあって,解像感のある写りは素晴らしい.特に,光源がたくさんある街中の夜間撮影に強いと思う.
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