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ニコンの激安中古レンズを復活させる(その2)Ai AF Zoom Nikkor 35-70mm F2.8S

おつかれさまです.このシリーズ第2回目は,AF Nikkor世代の標準ズームレンズである.35-75mmの2倍ズームだが,全域でF2.8と明るいのが特徴だ.最近のスマホのカメラは高性能だが,F2.8の明るいレンズを利用したボケはだせないだろう.レンズを持った感じはずっしりと重くて,レンズが詰まっている感じがした.あとフォーカシングリングの動きがとってもスムースでリニアな感じ.オールドレンズのヌルヌル感がないのは残念だけど,これはこれで精密機械の高級感があってうれしい.マクロ機能も便利そうだ.

こちらにも登場する.

現状把握

「たぶん壊れてます」ということだったが,分解できれば修理可能だろうということでヤフオクで二千円足らずで落札した.実際にカメラに装着してみるとレンズを認識せず,マニュアルモードでしかシャッターが切れない.それと中玉レンズが酷く曇っていて,このままでは使いものにならないようだ.ネットオークションでも,曇ったレンズが多数出品されていて,安価で入手できるものの,厄介な持病を抱えたレンズのようだ.

レンズ

カメラがレンズを認識しないのは,レンズのマウント側にある接点に原因があった.このレンズには接点が5つあるのだが.よく見ると端の1つが陥没している.とにかくこの部分を分解してみなければわからないので,バラシにかかる.ところがこの接点のハウジングは,内側と外側が接着剤で固定されているらしく,なかなか剥がれない.最後は力任せになってしまい,フレキシブル基板を致命的ではないが傷めてしまった.

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左の接点パーツのピンが折れて破断している

開けてびっくり,接点パーツのピンが腐食して折れているではないか.だがこのパーツは,自分で作るわけにもいかないので,部品取り用のレンズを探さなくてはいけない.自分の知っている限り,近所のハードオフにもニコンのジャンクAFレンズはなかなかないし,どうしたものか.とにかくここは後回しにして,レンズの清浄にかかることにした.

レンズ側からのアプローチ

レンズの清浄にとりかかるのだが,とりあえず中玉の曇りがとれれば良いので,それに集中することにした.

こういう動画って本当にありがたい

上の動画を見ると,前玉は簡単に外れて,特殊な工具なしで中玉にアプローチできるようである.まずフォーカシングリングのラバーを外す.すると,白いテフロン樹脂とビスのセットが2か所見えてくるので,それらを外す.すると,前玉ユニットが外れる.今回は前玉ユニットには手を加えず.中玉ユニットにとりかかる.

今回はこれにたいへんお世話になりました.

中玉ユニットは,ゴムの治具で外すのだが,これがぐにゃぐにゃして力が入らない.私はホームセンターで内径32mm,外径40mmの塩ビパイプを買ってきて,写真のようにはめ込んで使った.かなり力がいるが,これで何とか中玉ユニットを回して取り出すことができた.

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次に中玉ユニットを分解していくのだが,ねじは接着剤のようなもので固められているので,綿棒にアセトンをしみこませて溶かしていく.あとは,先ほどのゴムを使って外していく.

曇っているのは,やはり最もマウント側のレンズの内側だった.レンズクリーナーを使ってシルボン紙でこすってもなかなか曇りがとれない.カビ取りハイターもダメである.仕方ないので,上の動画に登場するオキシドール(過酸化水素水)も試してみたが,当初よりはましになったが,ほかのレンズに比べると明らかに酷く曇っている.

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写真ではわからないが,右のレンズが曇っている

ネットを検索すると最終手段は,酸化セリウムが主成分の研磨剤を使って研磨するしかないようだ.しかし,これをやるとコーティングどころか,レンズそのものも研磨されてしまう.他にメラミンスポンジで磨くという方法があって,これだとレンズには影響が少ないようだ.早速ドラッグストアでこのスポンジを買って試してみたが,結果はちょっと微妙だった.90分くらい力を入れずに磨いたのだが,ちょっとはましになったという程度で,まだまだ満足できるほど曇りはとれなかった.

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メラミンスポンジで磨いたが根本的な解決にはならなかった

次の日,よく考えると曇りの原因はコーティングの劣化である.だとしたらどのみちこのコーティングは捨てるしかないわけなので,思い切って全面的に剥がすことにした.アセトンを使って綿棒でこすると,確かに透明度が上がった.しかしこれでも曇っているのがわかる.あとは研磨しかないのかなあと思いつつ,とりあえずここで諦めた.

やはり,曇ったレンズがあるのは納得できない.意を決してレンズを研磨することにした.酸化セリウムで磨くのだが,ネットで調べると「キイロビン」というカー用品として売られているガラスクリーナーが酸化セリウムが主成分で,レンズ磨きにも使われるらしい.

レンズを研磨することになるので,光学系に影響を与える可能性大です.あくまで自己責任で使ってください.

メラミンスポンジにつけて手で磨くのだが,しばらくは何も変化しない.結局60分くらい磨くのを毎日続けて,3日目くらいから曇りがとれ始めた.最終的には,曇りが完全に消えることはなかったが,当初よりは格段に曇りが少なくなったので,これで良しとしよう.

マウント側からのアプローチ

フレキシブル基板は宙ぶらりんになっているが,接点パーツを組み立てるには遊びが少なくて作業がしにくい.そこでマウントを一時的に外したいのだが,マウントを止めている3つのネジのうち2つが回らない.ドライバーを替えたり,アセトンをしみこませたり,はんだごてで熱を加えたりしたのだが回らなくて,ネジをなめてしまった.よく見ると,ネジが腐食して固着しているようだ.どうもこのレンズは保管がよくなかったらしい.回らないねじがあるとなんか頭の中がモヤモヤする.仕方ないので最終手段に出た.

なめたねじに新しく溝を掘って,インパクトドライバーで外す方法である.レンズをハンマーで叩くなんて,本当はやりたくないのだが,このレンズは鏡筒が金属製なので問題ないだろう.前玉ユニットを外し,中玉ユニットも外した状態で,説明書通り使うと2個のネジはあっさり回って外れた.マウントを歪めていないか心配だったが,問題ないようで安心した.

接点パーツの修理

結局,部品取りに使える安価なジャンクレンズは入手できなかったので,ヤフオクで別のレンズを落札した.Ai AF Zoom-Nikkor 35-70mm F3.3-4.5という,たまたま焦点距離が同じレンズである.このレンズから一時的に部品を取らせてもらおう.接点パーツをハウジングに挿入し,フレキシブル基板を挿入し,瞬間接着剤を使ってハウジングを閉じれば,この部分の修理は終了である.

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マウントを外すと,フレキシブル基板が露出して接点パーツの修理作業がしやすくなった.

マウントが外れたので,ついでにカビらしきものが見える後玉も清浄した.こちらは,レンズクリーナーとシルボン紙で簡単に取れた.満を持してカメラに装着してみると,当初レンズを認識しなくて焦ったが,表面が酸化した接点を軽くやすりで磨いてあげると,正常に認識して一安心である.

まとめ

今回は,いろいろ苦労させられた.中玉ユニットが外れなければ,曇りがとれないので,そこでおしまいだが,道具を工夫してなんとか外れて良かった.固着したマウント側のビスも,苦肉の策だがなんとか回って,頭の中がスッキリした.禁断のレンズ磨きもやらざるを得なかった.結果的には,曇りが完全に取れたわけではないので残念だが,ずいぶんと楽しませてもらった.

もちろんレンズ自体にお金をだせば,こんな苦労をしなくてもすぐに使える状態のものが入手できるが,それではただのレンズコレクターになってしまう.問題ありのレンズを安価で入手して復活させるのを楽しむというのが私の本意なのだ.

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レンズフードを装着すると,さらに存在感のあるレンズになる.カメラと同じくらい重たくて,持ち運びには苦労しそう.

ところで,このレンズの映りはというといまのところ微妙である.やはり白っぽい写真になってしまう.しかしレンズ自体の高級感は十分あり,所有して満足感のあるレンズである.

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ワイド端(35mm換算で52.5mm)で撮影 1/2000, F5 ISO200

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テレ端(35mm換算で112.5mm)で撮影.1/800, F7.1 ISO200

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