見出し画像

ニコンの激安中古レンズを復活させる(その4)NIKKOR-H Auto 2.8cm F3.5

おつかれさまです.今回は前回に続いて,ニッコールのオールドレンズである.焦点距離28mmの広角レンズだ.単焦点の広角レンズは,オークションでも人気で割高な傾向だが,フォーカシングリングが動かないジャンクを送料込み約2000円で入手できた.うまく復活できればラッキーである.

ニコンの千夜一夜にも登場します.

現状把握

実際に入手してみると,フォーカシングリングは確かにまったく動かず,使いものにならなかった.ヘリコイドグリスが劣化して固着しているのなら,硬くても少しは動くと思うのだが,そうでもないようだ.これは,分解してみないと原因がわからない.

光学系は,LEDライトを当てるとカビが見えるが,それほど酷くはないようなので.分解して清掃できれば問題なさそうだ.あとはAi改造だが,このレンズが特徴的なのは,マウント側の外径が小さいために,カニ爪さえ外せば,カメラの露出計連動レバーと干渉せずに装着できてしまう.ただし,絞り情報は伝達されないので,現状ではマニュアル露出でしか使えない.

フロント側からのアプローチ

このレンズの分解方法も,下記のサイトに詳しく載っている.

実際に分解を始めてみると,フォーカシングリングを外すところまでは順調だったのだが,その先のビスを外すところでつまづいた.なんとヘリコイドが動かないので,前玉を固定している3本のビスの1本にアクセスできないのだ.これでは先に進めないで,まずヘリコイド固着の問題を解決しなければならない.

ネットを検索してみると,ヘリコイドグリス固着の問題は,よくあるトラブルのようで,いろいろと情報が出てくる.結局解決法は,ヘリコイド全体を溶剤に漬けてグリスを流してしまう方法と,温めてグリスを柔らかくして回す方法の2つのようだ.前者はレンズと分離できていないので使えないので,後者を試してみる.ヘアドライヤーを使って鏡筒全体をほんのり温めると,びくともしなかったヘリコイドがあっさり回った.ちょっと拍子抜けした気分である.

こうなるとヘリコイドを分解して,徹底的に古いグリスを洗い流して,新しいグリスに入れ替えたいところだが,ヘリコイドを分解してしまうと組み立てのときに無限遠の調整が必要になるなど,たいへんなことになるようなので,ここはグッとこらえて分解はしなかった.黒くなった古いグリスをできるだけ拭き取って,隙間から新しいグリスを入れてヘリコイドを回してなじませる.カメラ用のグリスはお高くてまだ購入していないので,ホームセンターにあった安価なモリブデン入りグリスで代用した.

あとは,上記サイトにあるとおりにレンズまわりを分解して清掃すればよいのだが,ここで問題が起きた.フロントのレンズ枠を固定しているセットスクリューが抜けないのだ.ビスは回るのだが,ネジ山が潰れているらしく,抜けてこない.そのため前から2枚目の凹レンズにアクセスできなかった.一方,後玉の3枚のレンズについては,新たに購入したカニ目レンチを利用することで,後ろ側から分解して清掃することができた.

画像3

今回掃除できたのは,緑で示した部分

Ai改造

このレンズは,前述したとおりマウント側の外径が小さいので,所定の位置に突起を作れば,簡単にAi改造できる.最も簡単な方法は,カニ爪を外して,所定の位置に接着剤で固定する方法だが,せっかく精密な金属加工でできているオールドレンズに,接着剤は似合わない気がしてしまった.結局下記のサイトを参考にして,新たにL字型の金属部品を作り,元からあったカニ爪用のネジ穴を利用して取り付けることにした.ちょっと手間がかかるが,後から調整もできるのでこれが良いだろう.

材料は手元にあった2mm厚のアルミ板と,取り付け用のM1.4x3mmのネジ2個である.このネジは,近所のホームセンターで購入できた.まずアルミ板に取り付け穴を2か所作り,ヤスリで1.5mmの段差を作る.次にハンドニブラ(金ノコでもよい)で8x25mmに切り出す.さらにペンチを使ってハンドパワー(笑)で,レンズの外周に沿うようにアルミ板を曲げれば良い.あとは,実際にレンズをカメラに装着して形状を調整するだけである.

画像2

作業中の様子.使用した工具はほぼこれだけ
ホームセンターでは1袋約250円(税込み)でした.

まとめ

すべてのレンズを清掃できなかったのが残念だが,ヘリコイドグリスの固着は修理できたし,Ai改造もうまくいって満足である.

画像3

後付けしたパーツの存在感ありすぎ.もっと薄く小さく作れば良かった.

入手して分解・清掃した個体はケガキ線が残っていて,一度オーバーホールされているようだった.そのためか,ねじが固着している部分は一切なく,その点は楽だったのだが,一部ネジ山が潰れていたり,自分でも潰してしまった箇所があり,すっきりしないところもあった.この時代のレンズは金属筐体だが,柔らかいアルミニウム素材に小径の精密ねじが切ってあるので,締め付けの際にねじを垂直に当てて回さないと,どうしてもネジ山を傷めてしまうので注意が必要だ.

前回,今回と2つのオールドレンズを分解して,この時代のニッコールレンズの構造が理解できてきた.次のレンズが楽しみである.

画像4

焦点距離28mm(35mm換算42mm)でも,スカイツリーの上から下まで入りませんが,目で見た感じに近いです.[Nikon D300, F3.5, SS1/1600, ISO200]

画像5

残念ながらこのレンズではこれ以上寄れません.花を撮るには向いていないかも.[Nikon D300, F3.5, SS1/60, ISO200]

<追記>NIKKOR-H Auto 28mm F3.5の場合

実は後から,焦点距離の表示がミリメートルとなった後継のNIKKOR-H Auto 28mm F3.5も安価で入手した.こちらはコンディションがとても良く,そのまま使える状態だったので,早速こちらもAi改造することにした.ところがである,絞りリングの形状が異なり,先ほど作ったのと同じ形状の部品では取り付けができない.

画像8

少し修正しました

上の図にあるように,1.0mm厚のアルミ板を加工して作った.寸法はかなりシビアで,現物合わせでカメラの露出計連動レバーに引っかからなくなるまで削っていく.厚さが1.0mmなので,カニ爪の固定に使っていたビスがそのまま使える.この記事を見て同じものを作るのであれば,こちらをお勧めする.もちろん,カニ爪の代わりに取り付けているだけなので,またカニ爪に戻すこともできる.

画像7

かなり小さくできました.

画像8

北十間川から見たスカイツリー
[Nikon D300, F8, SS1/2000, ISO200]

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?