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7月/sand
一番最初に出したアルバム「青狗」を聴きながら思う。何故あのときあんなにゴルジェに傾倒していたのだろう。アルバムとしての聞き応えは抜群で、我ながら良いものを作ったと思う。同時にこれはもう作れないとも思う。あまりにダークというか、重心が低い、というか、ああいったものがその時は手癖で作れる音楽だったのだ。でも、いまは手癖でああはならない。Xamdでライブしながら、この音楽はずっと続けられない、と思った覚えがある。
あの時のゴルジェ精神というか、破壊して、美しいものを浮かび上がらせて、もう一度破壊して、を繰り返すことが最もおれの中で善いとされるもので、それを一つのアルバムとして体現しようとしていた。ずっと聴いていたChris ClarkとかAphex Twinの影響のような気もする。そういう破壊がずっと、音楽をやるからに一度はしたかった。そういう破壊のサイクルをアウトプットして、持ち帰ることなく2021年に置いてきてしまった。だから最近現場に戻って、ゴルジェが未だ溌剌とお客さんを沸かせているのをみると、もっとやるべきだったかな、と少し後悔に似た気持ちも芽生えるが、でもきっと無理してゴルジェをやることになって、アウトプットの豊かさもどんどんと萎んでいったと思う。あれはあの時に全力で吐き出したものだったからよかった。結果、再生こそ回ってないけれど、普遍的なアルバムになったと思う。金も精神も削れたけれど、良いことをした、と思う。もしゴルジェが好きな人がこの文章を読んでいたなら、是非ともおれの出したアルバム「青狗」を聴いてほしい。本当に素晴らしく美しいゴルジェのアルバムだ。
いつ戦争が起こるかわからなくて、世界が終わるかも分からない中、アルバムを作り始めている。まだ全体の20%ぐらいの進捗率だ。17℃とはまた違う色のアルバムになりそうな気がしている。というよりは、この前出した17℃はおれが17℃という言葉に対して2年前考えていた音で、いま作っているものはいま17℃だと思っている音だ。このアルバムを出せれば17℃のコンセプトは一応出し切れるはずだ。
去年の2倍のスピードで時間が進んでいるような気持ちになる。朝DAWを開いたり開かなかったりして、それから日中は事業所に行って勉強して、夕方にまたDAWを開いて、夜は配信を見ている。去年よりもずっと1日の密度の濃い時間を過ごしているはずなのに、時間の進みがとてつもなく速い。まだ6月が過ぎたばかりなのに、もう7月は終わろうとしている。加速する時間のなかで、この曲だけはアップロードさせてくれ、それまで何もかも終わらないでくれ、と祈り続けている。曲を出すたびに遺書を置いている気分だ。次の曲も出せますようにと祈る。誰に?