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街はゆっくり朽ちていく

断章(まとまりのない文章)


・おれは何者にもなりたくない。何者かにさせようとする事柄に抗っておれはおれのまま、何者にはならないのだ。

・明らかに青年期の終わりに向かって孤独になっている。友達が増えない、とかそういう話でなく、道の周りに人がいなくなっているのだ。

・この世界の外側には天国も地獄もない。おれたちは天使にも悪魔にもなれず、外側に出たとて何もない砂漠のただ中歩くほかないのである。だから、喉の渇きで死に絶えていくさなか、それでもわりあい楽に死んでいくための格率があれば…それがおそらくは人間性である。マシな人間として死んでいくための倫理である。

・ライブ前、特に緊張もなく期待もなく、ぼんやりと近くのカフェでアイスカフェオレを飲む。まるで美味しい灰皿のような味だと思った。冷たい灰皿の灰を溶かして氷につけたような味をしている。まるでおれが何者でもない気がしたし、これからおれは何者になるのだ、という気にもなる。今のライブではおれは何者になるしかない。それが良いか悪いかはまだ判別がつかない。

・この街は朽ちていっている。友達が通っていた空手道場の看板文字はすっかり色褪せてしまったし、開店当初は真新しく感じた赤い屋根の手芸屋も寂れてしまった。この街に新しいものも生まれているが、全体的にみればゆっくりと朽ちていってると思う。長い時間をかけてこの街は消滅するだろう。そんな廃墟化するこの街を懐かしく、居心地よく思うのだ。

・去年からおれはおれをずっとチューニングしている気がする。チューニングをせず音を外したまま生活するのは、悪魔的であり、しかし天使的だとも思う。なのでチューニングするという行為はかなり人間的な行いなのだ。自身をチューニングしている自覚のある人は、自身が人間的であるとも自覚した方が良い。悪魔的肯定と天使的快楽の狭間の媒介として。



・この世界と天国と地獄から逃げてここにいようぜ!ずっと!ずっと!

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