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堕ちていく


いたい、くるしい、つらい。

何かを感じる。

本能には従うべきだ。

俺は今日、落ちた。落とされた?わからない。

でも、いたくていたくて仕方がなかった。

咄嗟に押されたと感じた手を掴んだけれど、振り払われた。

落ちていく時も、感じた。

目。


過失で落ちた場合は、心配の眼差し、恐怖を帯びた目線を感じる。

……今日は、違った。

落ちる瞬間に俺が感じたのは、言葉にできないほど気持ちの悪い目線。

俺が落ちるのを楽しんで見ている。

奇異の目。


どうして避けられなかった?

どうして警戒心が緩んでいた?

どうして後ろを振り返らなかった?

そもそも俺は落とされたのか?

落ちたのか?

周りの人間を泣かせた。怖がらせた。謝らせた。

そうして欲しいわけじゃない。

ごめんなさい。

ごめんなさい。


押された、なんて家族に言えない。クラスメイトに言えない。教師に言えない。

泣くことすらもできない。

つらくない。

つらい…くない。

辛いなんて言っちゃダメだ。

でも、苦しい。

くるしい。


誰かを元気にしたい。

俺にも存在価値がある。

自分で努力して作り上げた存在意義を崩すわけにはいかない。

ましてや計算と積み上げによって生成された人間が大切にされたいと思うなんて。

なんと烏滸がましいことだろう。

なんておこがましい。

しんでしまえ。

おまえなんか。


殺したって殺したって、我慢したって、消化しきれないものがこの世にはあって。

それを消化しようとするほど溺れていく。

堕ちていく。

もしあなたがおちそうになったときは、おもいだしてほしいのです。

わすれていてもいいですが。

いいですが。



俺はしにたかったのか。

誰かに死んで欲しいと思われていたのか。

ただの過失だったのか。

俺しか知らない。




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